『断言』のおそろしさ
0.はじめに(軽いまとめ)
この記事で伝えたい大まかな内容は以下の通り。
1.『断言』は『正確性』を欠く場合があり、ちょっとアブない。
2.『正確性』を追求すると、ちょっと面倒な感じになったりする。
3.状況に応じて『断言』に気を付けよう。
では、以下本文どうぞ。
1.『断言』は『正確性』を欠く場合があり、ちょっとアブない。
「AはBである。」のように、他の可能性を否定しつつきっぱりと言い切る事を『断言』という。
たしかに『断言』は、他の可能性を考えないことで、受け手にストレートに情報を伝えることができ、『わかりやすい』情報伝達ができる。また、まわりくどい表現よりもインパクトも強いだろう。
例えば、いじめなどを防止すべく呼びかけられている言葉に、こんなものがある。
『人を殴ったら暴行罪(刑法208条)になる。』
たしかに、通常望ましくないと考えられているであろう『人を殴る』という行為を禁止すべく、犯罪たる『暴行罪になる』ことをストレートに伝える文であり、わかりやすく、インパクトもあると思う。
しかし、このような『断言』は、他の可能性を考慮していない点において、受け手を変な方向へ誤解させたりするおそれがある。
すなわち『正確性』を欠く場合があり得る。
上に示した例だと、『人を殴っても暴行罪とはならないこともある。』という他の可能性への考慮が欠けている。
つまり『正確性』を欠いている。
(例えば、強盗に襲われた被害者が強盗犯人を殴った場合等では、正当防衛(刑法36条1項)が成立し、結果として暴行罪が成立しない事がありうる。詳しくは刑法を勉強してください(笑)。)
このように『断言』は、『正確性』を犠牲にする場合があり、少し危険だ。
2.『正確性』を追求すると、ちょっと面倒な感じになったりする。
ただ、『正確性』を追求すると、今度は『断言』のメリットである『わかりやすさ』や『強いインパクト』が得られなくなるおそれもある。
まわりくどい、面倒な文になりかねないのである。
例えば、上の例を『正確性』を重視して書き直してみよう。
すると、以下のようになるだろう。
『人を殴ると、原則として暴行罪となるが、正当防衛等が成立することで、結果として暴行罪が成立しない場合もある。』
これだと文が長い。
まわりくどい。
正直、面倒な印象である。
『わかりやすさ』や『強いインパクト』も弱くなってしまったように感じる。
このように、『正確性』を重視しすぎるのも、それはそれで問題があるだろう。
3.状況に応じて『断言』に気を付けよう。
ここまで書いてきたように、『断言』する事によって『正確性』を犠牲にするのも、『正確性』を犠牲にして『わかりやすさ』や『強いインパクト』等を犠牲にするのも、少々問題がある。
本当は双方のデメリットを排除した上で、メリットのみを享受するのがベストである。
しかしそれはとても難しいと思う。
なので結局は、相手の知識量や理解力、情報伝達の緊急性等その場の状況に応じて、どちらに重きを置くか考える必要があるという事になろう。
また、情報の受け手としては、『断言』を受けたときに、他の可能性を探るのも良いと思う。
自らの力で『正確性』を補うのだ。
※他の可能性の軽視について、以下の記事が関連しています。良ければ参照してください。
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