ジョブ型人事指針読んでみた。
令和6年8月 28日 内閣官房 経済産業省 厚生労働省より公開された、ジョブ型人事指針が学びが多かったため備忘録としてまとめます。
このレポートは、国内の20社の企業の具体的なジョブ型人事制度への取り組みをまとめたものです。何より、具体的な事例が記載されているのが個人的にありがたかったです。是非皆様もご一読を!
ジョブ型人事の全体像とその背景
1. なぜジョブ型人事が必要なのか
ジョブ型人事とは、各職務(ジョブ)ごとに求められるスキルや職責を明確にし、それに基づいて採用、評価、昇進などを行う人事制度のことです。このシステムは、社員が自らのキャリアを主体的に考え、必要なスキルを身につけることを促進します。従来の年功序列型やメンバーシップ型の人事制度から脱却し、企業が求める具体的な職務に適した人材を採用・育成することで、企業の競争力を高めることが狙いです。
背景として、これまでの日本企業では、新卒一括採用や終身雇用、年功序列が主流で、社員は企業の指示に従って職務を全うするというスタイルが一般的でした。しかし、労働市場がグローバル化し、技術革新が進む現代において、このシステムは限界を迎えつつあります。特に、デジタル技術や専門知識が求められる職務では、従来の方式では人材確保が困難です。そのため、ジョブ型人事の導入が急務となっているのです。
2. ジョブ型人事のメリット
ジョブ型人事の導入にはいくつかのメリットがあります。
求める人材の明確化: ジョブ型人事では、各職務ごとの役割と求められるスキルが明確になります。これにより、採用活動の際に企業が何を求めているかを具体的に伝えられるため、応募者とのマッチング精度が高まります。
キャリアパスの透明性: 社員が自身のキャリアの進行状況や今後の成長の方向性を明確に理解できるため、モチベーションが高まり、主体的なスキルアップが期待できます。
社内外の人材流動性の向上: ジョブ型人事では、職務に基づく採用・評価が行われるため、社内外から多様な経験やスキルを持つ人材を採用しやすくなります。これにより、新たな視点や能力を組織に取り入れることが可能です。
3. 従来型との違い
従来の日本型人事制度では、社員は「企業の一員」として位置づけられ、企業における長期的なキャリアを前提にスキルアップや異動が行われてきました。しかし、これには以下のような問題点がありました:
キャリアの受動性: 企業が主導でキャリアを決定するため、社員が自分のキャリアパスに対して受け身になりがちで、自らのスキルや能力を伸ばす機会を逃すことが多かった。
専門性の欠如: 企業内での人材の配置や育成が職務ベースで行われないため、特定の専門性を持った人材の育成が難しかった。特に、グローバルな市場競争や技術革新のスピードが速い分野では、この点が企業の競争力に直接影響を与えていました。
新卒一括採用の限界: 毎年の一括採用であるため、企業が求めるタイミングで必要なスキルを持つ人材を確保することが難しく、採用計画が硬直的になりがちでした。
ジョブ型人事の具体的な取り組み事例
レポートでは20社がまとまっていますが、2社ほどピックアップです。
1. 富士通株式会社
導入背景
富士通では、2019年に「IT企業からDX企業への変革」を掲げ、ジョブ型人事の導入を決定しました。背景には、特に25~35歳の若手社員の外資系企業への転職が増加していたことがありました。この状況を打破するために、富士通はジョブ型人事を経営改革の一環として導入しました。
実施内容
富士通では、職務ごとに必要なスキルや責任を明確にし、それを基にした評価・報酬制度を構築しました。導入は段階的に行われ、まずは2020年に管理職約15,000人に対して導入され、その後、2022年には一般社員約45,000人にも展開されました。
成果
この取り組みにより、富士通では社員のエンゲージメントが向上し、自律的なキャリア形成が促進されました。また、外部からの経験者採用も増加し、企業全体の競争力が高まりました。特に、リスキリング(再教育)を促進するためのオンラインプログラム受講者が3倍に増加するなど、社員の成長意欲も大幅に向上しています。
2. 日立製作所
導入背景
日立製作所では、2009年の赤字を機に経営改革を進め、グローバルリーダーへの転換を目指しました。その一環として、ジョブ型人事を導入し、職務ごとに求められるスキルと報酬を明確にする制度を構築しました。
実施内容
日立製作所は、グローバルな人材マネジメント基盤を整備し、職務等級制度を導入しました。特に、社員のパフォーマンスと報酬を連動させる「ペイ・フォー・パフォーマンス」の考え方を採用し、成果に応じた報酬を支払う仕組みを整えました。
成果
ジョブ型人事の導入により、日立製作所では社員のキャリアパスの透明性が向上し、社員が自身の成長を実感しやすくなりました。また、評価制度の見直しにより、社員の目標達成意欲が高まり、組織全体の業績向上につながっています。
ジョブ型人事の実践ポイント
1. 明確な採用基準の設定
ジョブ型人事では、各職務ごとに必要なスキルセットや役割が明確になるため、採用活動において具体的な基準を設けることができます。これにより、採用の際に「何を求めているか」「どのようなスキルが必要か」を応募者に対して明確に伝えることができ、採用のミスマッチを防ぐことができます。
2. 柔軟な採用アプローチ
ジョブ型人事を導入することで、企業は新卒だけでなく、経験者や中途採用にも門戸を広げることが容易になります。特に専門性が高い職務や即戦力が求められる職務では、こうした柔軟な採用アプローチが有効です。採用担当者としても、幅広いバックグラウンドを持つ候補者にアプローチしやすくなり、より多様な人材を確保することが可能です。
3. キャリアの見える化と社員エンゲージメント
ジョブ型人事では、社員が自分のキャリアパスを見通せるようになります。これにより、採用後の社員のモチベーションを維持し、長期的な成長をサポートする環境を提供することができます。特に、若手社員にとっては、将来の成長やキャリアアップの道筋が見えることが大きな魅力となります。
4. データに基づく人材戦略
ジョブ型人事では、職務ごとのデータが蓄積されるため、これを活用したデータドリブンな人材戦略が可能になります。例えば、過去の採用データや評価結果を分析することで、どのようなスキルセットを持つ社員が高いパフォーマンスを発揮しているのかが見えてきます。これにより、次の採用活動において、より的確なターゲティングが可能となり、優秀な人材の確保につながります。
採用戦略への応用
ジョブ型人事の考え方は、採用戦略にも大きな影響を与えそうです。
1. 職務ごとの採用プロセスの設計
ジョブ型人事を採用戦略に取り入れる際には、職務ごとに異なる採用プロセスを設計することが重要です。例えば、エンジニア職では技術スキルのテストを重視し、営業職ではコミュニケーション能力や交渉力を重視するなど、職務の特性に応じた選考基準を設けます。これにより、職務に最も適した人材を効率的に見つけ出すことができます。
2. 社員の声を採用活動に活用
現場の社員が実際にどのようなスキルや経験を活かしているのかを採用プロセスに反映させることで、リアルな職務像を候補者に伝えることができます。社員のインタビューや職務紹介の動画を採用サイトに掲載するなど、現場の声を積極的に活用することで、求職者にとっての魅力を高めることができます。
3. リスキリングの機会を強調
ジョブ型人事の魅力の一つは、社員が自らのキャリアに応じてリスキリング(再教育)できる点です。採用活動においても、この点を強調することで、成長意欲の高い求職者を引き付けることができます。特に、ジョブ型人事を導入している企業は、学びの機会やキャリアアップの道筋がはっきりしているため、こうした取り組みをアピールポイントとして打ち出すと効果的です。
4. 多様な応募チャネルの活用
ジョブ型人事を推進する企業では、採用チャネルも多様化しています。新卒採用に加えて、インターンシップ、経験者採用、オンラインプラットフォームでのスカウティングなど、多様なチャネルを活用して幅広い層からの応募を促進します。特にデジタルネイティブな若手層にアプローチするためには、SNSや動画プラットフォームを活用した情報発信も有効です。
ジョブ型人事の未来
1. グローバルな視点でのジョブ型人事
グローバル企業においては、ジョブ型人事は国際競争力を高める手段として不可欠です。国ごとに異なる雇用慣行や文化を統一された基準で管理することにより、グローバルな人材プールから最適な人材を配置することが可能となります。また、国際的なキャリアパスを提示することで、社員のモチベーションやエンゲージメントを向上させる効果も期待できます。
2. 社会全体への影響
ジョブ型人事の普及は社会全体の働き方にも大きな影響を与えつつあります。職務に基づく働き方が一般化することで、個人が持つスキルの市場価値がより重視されるようになり、働き方の多様性が進むと考えられます。企業側では求人票、求職者においては職務経歴書など、見える形で変化していきそうです。
3. テクノロジーとの連携
AIやデータ分析ツールの進化により、ジョブ型人事はさらに精緻化されるでしょう。AIを活用して社員のスキルやパフォーマンスをリアルタイムで評価し、適切なフィードバックを行うことで、社員の成長をサポートするシステムが構築される可能性があります。ジョブの見える化に合わせて、生産性の見える化も進んでいきそうです。
まとめ
ジョブ型人事は、これからの企業経営において非常に重要な要素です。現に先んじて具体的な取り組みを行っている企業も多く、今回は事例ベースでのレポートとなっています。まだまだ取り組み半ばなのかなと思いますし、「ジョブ型」のワードが先行しすぎていてマジックワード化している感もありますが、何より具体事例が勉強になるそんなレポートでしたー!
では!
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