福岡市美術館(文化の日) #前半
続いて福岡市美術館の「コレクション展 近現代美術」について紹介しようと思う。
前回の記事はこちらから ↓
福岡市美術館は大濠公園と隣接しており公園の中を通って美術館に行く経路になっている。前回の記事同様カバー写真は大濠公園で撮った写真を使用した。行きは昼間でランニングをしている人をよく見かけた。夕方になると日差しがとても強く、犬の散歩をしている人が多かった。
台風が直撃して結局行けずじまいだったが、1日目の金曜日に行く予定だった。今回はゼミの皆で11月2日~11月4日に福岡に行く日程だった。スケジュール作成に私も関わっていて、唯一全員で行く美術館をここにした。選んだ理由としては有名なアーティストの作品を多く所有していて、展示を回るだけで知ってる名前を見つけられるからそれほど美術に強く関心がない人でも楽しめるだろうと考えてのことだった。
また、個人的に企画展「あらがう」のポスターのビジュアルが良いなと感じたことと、塩田千春の作品が気になっていたため、今回行くことを楽しみにしていた。
コレクション展の作品は一部を除いて撮影禁止だったため、文字のみで印象に残った作品を紹介していく。
東郷青児《木立》1961
こちらはかなり大きな作品(サイズ151.5×333.5 cm)で“東郷美人”を余すところなく描かれていた。東郷青児の作品は以前セキ美術館などで拝見したことがあるが、大きな作品はみたことがなかったので迫力があった。
サルバドール・ダリ《ポルト・リガトの聖母》1950
こちらも大きな作品で、中央に聖母マリア像と子のイエスが描かれている宗教画である。しかし説明文を読むと聖母マリアはダリの妻であると書かれていて、シュルレアリスムの代表画家のダリらしいと感じた。画面にはシュルレアリスムらしいモチーフも見られ、中央の人物が宙に浮いているような構図だった。
ルチオ・フォンタナ《空間概念 期待》1962
かの有名なフォンタナの《空間概念》シリーズである。キャンバスを切り裂いた3つの曲線がシンプルな造形を作り出している。パソコン上で目にしたことはあったが実際にみると感動した。
マーク・ロスコ《無題》1961
私は抽象絵画について研究しているので抽象画家をよく知っているのだが、ロスコは特に好きな画家である。どっしりとした大きなキャンバスに輪郭のぼやけた優しい線と二色の柔らかい色味が鑑賞者の心に沁み込む。以前DIC川村記念美術館でロスコの絵を拝見したが、この作品もとてもよくてやはり好きな作風だと感じた。
ロバート・ラウシェンバーグ《ブースター》1967
中央にはレントゲン写真が連なって立ち姿の人物が見え、右上には青い椅子が置かれている。いろいろ重ねられているにも関わらずどこか模型や解剖図のような正確さが見え、粗雑さや煩雑さを感じさせない理知的な作品だった。
ジャン=ミシェル・バスキア《無題》1984
ラウシェンバーグの作品とは対照的にストリートアートの気配が色濃く感じられる。現在はアパレルとコラボした衣服を見かけるほど大衆化しているが、作者はいったい何を考えて描いたのだろうと思う。
アンディ・ウォーホル《エルヴィス》1963
シルクスクリーンインクなどを用いて大衆の象徴であるような俳優を複数画面に映すというとてもウォーホルらしい作品。
宇佐美 圭司《ゴースト・プラン No.3》1971
明瞭な色彩と幾何学的な模様の組み合わせというイメージがあった宇佐美の作品だが、今回初めて実際に拝見した。今回みた作品は以前廃棄の事件があった東大中央食堂の《きずな》という作品に系統が似ていると感じた。宇佐美は別の色彩の絵画も描いているため、そちらの系統もみてみたいと思った。
草間彌生《無限の網 A.H.T1960》1979
草間彌生のネット・ペインティングの作品である。無数にうごめく皮膚のような赤い画面は見る者に強烈なインパクトを残す。最近草間彌生について文献を読んでいるため、解像度が上がった。
やなぎ みわ《アクアジェンヌ・イン・パラダイス Ⅱ》1995
作家名も作品もはじめて知ったのだが、三面に描かれた増幅するエレベーターガールというのが、バブル期の日本の雰囲気を残していてとても印象深かった。
吉原治良《白い円》1970
具体美術協会の長、吉原治良の《円》シリーズである。この作品はその中でも代表的な作品で、中央の円の中を塗りつぶすことで二重の線のずれが生じている。文献などで何回もみた作品だが、実際にみるとよく塗りつぶされていて境目が分からないようになっていたり大きなサイズで存在感があったりと詳しく分かってよかった。
アニッシュ・カプーア《虚ろなる母》1989-90
人工的につくられた空洞である。ブラックホールのように飲み込まれそうな印象を受ける。
ナム=ジュン・パイク《冥王星人》1993
まさかここでナム=ジュン・パイクの作品をみれると思わず驚いた。”ヴィデオ・アートの父”として知られる彼の作品は以前映像の講義か何かで知っていたため、実際にみてとても興味深かった。
塩田千春《記憶をたどる船》2023 ※撮影可
塩田の作品を一言で表すと“赤い糸の紡ぐ世界”である。今回拝見して実際に手作業で糸を編みながら作品をつくっているのだということが分かり、またそのインパクトに圧倒された。最近は美術館で個展を開催しているのを見掛けるのでぜひ行ってみたいと思った。
インカ・ショニバレCBE《桜を放つ女性》2019 ※撮影可
この作品は何かの教科書に載っていたと記憶している。それほど社会に問題提起したインパクトのある作品だった。個人的にアフリカ人と思われる黒人女性が熱心に衣服のプリントや桜の造形などを近くで観察しているのが印象的だった。
少し長くなってしまったので企画展は後半で記述しようと思う。
福岡市美術館は非常に著名なアーティストの作品を所蔵しており見応えがあった。個人的な要望としてはせっかくたくさんの有名な作品を所有しているのだから、もう少しグッズの幅があると良いなと思った。
大濠公園も素敵な場所だったので、散歩がてらぜひ多くの方に来館してほしい。
2024.22.09
S.Hanatsuki