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生成AIから行動AIへ。AIエージェントがもたらす人事機能へのインパクト
1. 行動AI(AIエージェント)に注目が集まる背景
2025年、本年は「AIエージェント元年」と言われます。
AIエージェントとは、「自らアクションするAI」と表現できます。2024年が生成AIの年だったとすると、2025年はこの「行動するAI」が台頭するだろう、と言われているわけです。
2024年9月にラスベガスで開催されたHR Technology Conference LasVegasでは、生成AIがさらに進化し、従来の「チャットボット」や「テキスト生成AI」を超えて、業務の支援を包括的に行う「AIエージェント」が多数取り上げられました。
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https://www.hrtechnologyconference.com/show-news/2024-hr-tech-conference-reaffirms-position-premier-global-event-hr-innovation
こうしたAIエージェントは、単に文章を生成してアイデアを提案するだけではなく、組織内での意思決定プロセスや業務フロー、さまざまなシステムへのアクションを自動化するものとして期待されています。
この記事では、この行動AIがもたらす人事・組織へのインパクトを考察します。
この記事を開いていただき、ありがとうございます。グローネクサス代表の小出です。元デロイトで14年、最終的にはディレクターで多くの大手企業を支援していました。
現在ではグローネクサス代表として、主に大手企業における人材戦略・人材マネジメント策定やワークスタイル変革、リスキリングのお手伝いしています。
2. 生成AIと行動AI(AIエージェント)の違い
行動AIへの移行が注目される理由の一つは、「生成AI」との機能的な差にあります。どちらもAIを活用していますが、目的や得意分野が異なります。
2.1 生成AIとは
「生成AI」とは、大規模言語モデル(LLM)や画像生成モデルなど、主にテキストや画像などのコンテンツを“生成”することに特化したAI技術のことです。
ChatGPTのように、与えられた指示(プロンプト)を基にまったく新しい文章や画像を作り出す能力を持ちます。
コンテンツ生成に強い
求められたテーマに沿って、文章や画像などを0から作成できます。自然言語処理が得意
対話形式でのやり取りがスムーズなので、企画書や報告書、レポートのたたき台づくりなどに使いやすいです。学習データへの依存
大量の学習データに基づいて学習しているため、元のデータやパラメータ設定によっては不正確な回答を生成することもあります。
人事・組織領域での活用例
採用ページや求人票の下書き
研修コンテンツのアイデア出し
評価・フィードバックの文面生成
2.2 行動AI(AIエージェント)とは
生成AIのコンテンツ生成能力を一部に含みつつ、システム連携や業務フローの自動化などを通じて“自ら行動を起こす”機能を持つAIが、いわゆる「行動AI(AIエージェント)」です。
単なるテキスト生成ではなく、組織内のシステムを横断し、タスクを実行し、関係者に自動で通知を出すなど、プロセス全体を動かす役割を担います。
タスク実行・プロセス管理
社内システムとのAPI連携によって、書類作成から承認フロー、問い合わせ対応まで一貫して自動化できます。対話と意思決定の補助
ユーザー(マネージャーや従業員)とのやり取りを通じて、スキルデータや外部市場の動向を分析し、最適な提案を行います。提案だけでなく、実行まで行うのがポイントです。複数AIやデータの統合
生成AIや分析AIなど、さまざまなAI技術を自動で呼び出し、結果を組み合わせて行動します。いわばAIを統括する“司令塔”的な存在です。
人事・組織領域での活用例
採用フロー全体の自動化:日程調整・書類送付・合否連絡などをすべてエージェントが実施
ラーニング&キャリア開発:スキル状況を把握し、個別の研修提案やプロジェクト配属を自動でおすすめ
評価・報酬管理ワークフロー:評価入力のリマインドや給与テーブルの更新、承認プロセスを一元管理
3. 行動AI(AIエージェント)がもたらす人事機能の高度化・効率化
こうした行動AIの台頭によって、人事業務は大幅な効率化と高度化が見込まれています。
カンファレンスでの事例や専門家の見解を踏まえると、以下の3つのポイントが特に注目されています。
タレント・インテリジェンスの深まり
AIエージェント同士が相互に通信し、企業内外のデータ(候補者の経歴情報、社内スキルデータ、市場トレンドなど)をまとめて解析します。
採用段階では、職務経験や学歴にとどまらず、多様な要素から求職者や社内人材のスキルを推定し、最適配置や育成を提案できるようになります。
従業員体験(EX)の個別化
従来のLMS(Learning Management System)ではコンテンツを配信するだけでしたが、行動AIの登場により、学習プラン作成、受講手続き、スキルデータとの連動、学習状況を踏まえた業務アサインなど、一連の流れを対話的にサポートできるようになります。
従業員一人ひとりに合わせて「これを学んでみませんか?」「このプロジェクトに挑戦してみますか?」と提案し、必要な手続きまで実行してくれます。
複雑なタスクのシームレス自動化
行動AIは人事管理システムや給与システムなどと連携し、評価・報酬管理といった煩雑な手続きを自動化します。
たとえば、コンプライアンス関連の書類を下書き→マネージャー承認→従業員への連絡→完了報告、という一連のプロセスをエージェントが自動で“動かす”ため、担当者は内容確認と最終承認に専念できるようになります。
4. 具体的なソリューションの例
HRテクノロジーカンファレンスでは、以下のような行動AIを取り入れたサービスが数多く紹介されていました。
採用・人材獲得(Talent Acquisition)
Paradoxなどが提供する「Conversational Recruiting」は、候補者とのチャットを通じて面接日程の調整から合否連絡まで自動化しています。
また、EightfoldやBeameryなどのプラットフォームでは、個人のスキルデータをAIが解析し、的確な人材マッチングや育成プランの提案を行っています。
タレント・マーケットプレイス
社内外問わず、スキル単位で人材をプロジェクトへマッチングするマーケットプレイス型ソリューション(Gloat、Fuel50など)が行動AI機能を強化し、プロジェクトアサインに必要な承認依頼や連絡業務を自動で進めるようになっています。
ラーニング&キャリア開発
Docebo、Sana、Aristなどの新興LMSはもちろん、WorkdayやCornerstoneなど大手ベンダーでも、学習コンテンツの自動生成だけでなく、受講後のスキル更新や関連プロジェクトへの参加をエージェントがまとめてサポートする機能が追加されています。
ピープルアナリティクス & 要員計画
VisierやLightcastなどの解析ツールに行動AIが実装され、レポートを自動で作成するだけでなく、潜在リスクやギャップを発見すると「このチームへの増員を検討しましょうか?」と提案し、上長に通知するなど、アクションにまでつなげられます。
5. 行動AI導入で注意すべきポイント
行動AIの導入メリットは大きい一方で、以下の点には注意が必要です。
データ品質と透明性
行動AIは社内外の多くのデータを活用するため、スキル定義やジョブ情報、従業員情報が正確に整理されていないと、誤った提案や自動化が裏目に出る可能性があります。
また、導入時には「どのようにAIが判断しているか」を透明性高く説明できる体制も重要です。
セキュリティとプライバシーの確保
人事系システムは個人情報を扱うため、クラウドベースの行動AIを利用する際のデータ連携やアクセス権限管理に注意が必要です。
特にAPI連携で大量のデータをやり取りするケースでは、セキュリティリスクを十分評価しておきましょう。
最終責任は人間が負う
行動AIは意思決定のサポートや実務の自動化まで行いますが、最終的な承認や責任は人間が持つべきです。
法的リスクがある手続きや評価などでは、必ず担当者がチェックし、問題がないかを確認するルールづくりを怠らないようにしましょう。
段階的な導入と運用テスト
すべての人事業務を一度に自動化しようとすると、現場に混乱が生じるケースが多いです。
まずは特定の部門やプロセスから行動AIを試験導入し、データ整備やセキュリティ対策の精度を高めながら適用範囲を拡張していく方法が望ましいといえます。
6. 行動AIが人事を変える
「生成AIから行動AIへ」という流れは、人事部門の効率化や高度化を更に進めます。
書類やコンテンツを“作る”だけではなく、エージェントが実際に組織の中で“動き”、業務フローを管理し、ステークホルダーを巻き込んでくれる行動AIは、まさにやり手の人事企画担当者といえます。
さて、仕事がどんどんなくなる人事部門、皆さまは今後どのような役割を担いますか?
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
自社で、人事機能改革や生成AI導入の検討にお悩みの方は、お気軽にお問合せくださいませ。