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岡本舞子さん EP「愛って林檎ですか」が"昭和女性アイドル歌手の至高のデビューシングル"すぎる話
今回の記事は岡本舞子さんのデビューシングル「愛って林檎ですか」についての記事になります。
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岡本舞子さんは、1984年「見知らぬ国のトリッパー」で1度レコードデビューをされているのですが、翌年1985年発売のこの「愛って林檎ですか」の方が"正式なデビュー曲"として扱われています。
僕はこの表題曲とカップリング曲の「桜吹雪クライマックス」が収録された岡本さんのデビューアルバムの「ハートの扉」が凄い好きなので、そっちの記事も書きたいのですが、
取り敢えず"1回シングルについて書いてからアルバムについて書こう"と思い、今回はシングルについての記事となります。
このシングル自体が「表題曲とカップリング曲の絶妙なバランスのもとに成立している」ので、まずそれを解説したいんです!
また、表題曲・カップリング曲ともに、作詞が阿久悠さん、作編曲が山川恵津子さんという布陣で制作されています。
今回の記事では、
・「愛って林檎ですか」と「桜吹雪クライマックス」の楽曲解説
・このEPの制作背景についての考察
・表題曲とカップリング曲のバランスについて
を行って行きたいと思います!
・楽曲解説
①愛って林檎ですか
僕はこの曲を"至高の80年代アイドルデビュー曲"だと思います。
まず岡本さん自身がこの時点で14歳なのが信じられないですね…芸能活動経験がかなりあるとはいえ、"物凄い完成された歌声"で、とてもデビュー曲とは思えないです。
しかも阿久悠さんの歌詞が凄まじいです。
AメロBメロを「悲哀や切なさ」をテーマに作詞されていて、実は結構重い歌詞を歌っています。
アイドルのデビュー曲なのに「死にたい」というワードが出てきたり、文字だけで見るとなかなか文学的なのですが、そこを山川さんの不思議なサウンドで絶妙なバランスの楽曲にしています。
更に凄いのが「サビを一貫してリンゴ関連のワードで攻めている」んですね。
その上で「上手く"愛"に絡めてくる」のが本当に巨匠の技だと思います。
そして何と言っても「山川さんの作り上げるサウンド」が凄いです。
ストリングス、きらびやかなシンセ、クリーンのソロギター、コーラスを中心に組み上げた「可愛くも緩やかで不思議なサウンド」の曲に仕上がっています。
それでいて80年代特有のタイトなリズムが入ってくるので本当に刺さる曲です。
僕的には、間奏の優しいソロギターのフレーズが、重い歌詞を歌い終わった後の雰囲気をいい感じにまろやかにしていると思います。
結構歌メロ自体は大胆な感じです。それがデビュー曲としてのインパクトになりますね。
それでいてミディアムテンポのアイドル歌謡として完璧なバランスになっています。
②桜吹雪クライマックス
こんなにクセが強いファンク要素のある楽曲を、"デビュー曲のカップリングに持ってくる"という攻めの姿勢に感服します。。
歌詞は阿久悠さんの中にある「桜×14歳の少女」のイメージを具現化したような歌詞になっていますね。
一番凄いのが山川さんの「曲の雰囲気やサウンド作り」です。
まずギターとベースのリフが凄すぎますね。思いっ切りファンク系です。
ギターはイントロはオシャレなフレーズを弾き、Aメロ以降はカッティングを続けるという形です。全体的にカラッとした音色です。
ベースはAメロが一番顕著ですが、全体的に"メロディアスに唸るような、音程を上下する感じのファンク系のフレーズを弾き続ける"感じです。
しかも、ベースに関してはかなりフレットを上行ったり下行ったりしてるので、演奏の難易度が高すぎますね。一番この曲で演奏が難しいパートはダントツでベースです。
更にフレーズが複雑なのは弦楽器だけじゃなくて、キーボードとブラスもかなり複雑ですね。
複雑なブラスフレーズがずっと曲に絡んでくる感じが最高に80年代っぽいです。
何が一番凄いかって、
・ここまでリズムセクションがファンクなのに、歌謡曲系のシンセやストリングス、コーラスを多用することによって"アイドル歌謡"に仕上げている
・しかも、"桜吹雪"という曲のテーマに合わせて、和風な感じの音色を足してアレンジしている
の二点だと思います。
コーラスは歌が1フレーズ終わるごとに掛け合いのように入るのですが、全然歌を邪魔しておらず、サビの「♪散らせて〜」を4回繰り返してフェードアウトするのもコーラスありきの技ですね。
和風アレンジに関しては、サビにカラッとしたシンセを入れたり、曲のアウトロで三味線系のシンセ?か三味線っぽい音色にしたギターのフレーズを入れてるのが曲の雰囲気にかなり活きていますね。
もっと言うと「カラッとした音色でファンクなフレーズを演奏することで結構和風になる」というのがめちゃめちゃ編曲の勉強になります…。
歌メロも表題曲に続き、かなり大胆なのでファンクサウンドに負けていません。
・このシングルの制作背景を考察
①制作陣について
この曲が収録されたアルバム「ハートの扉」の演奏メンバーは、今剛さん(Gt)、高水健司さん(Ba)、山木秀夫(Dr)、コーラスが比山貴咏史さん、木戸やすひろさんです。
「キーボードの演奏者」がクレジットにないですが、恐らくキーボードの演奏は全曲の作編曲を担当された山川恵津子さんご本人が務められていると思われます。
※もしかしたら女性コーラスも山川さんかもしれません。
更にディレクターは初代カシオペアの小池秀彦さんなので、結構制作陣はAOR系のミュージシャンが多いですね。
②恐らくアルバム先行で楽曲制作を行っている
僕の予想ではあるのですが、"多分そう"だと思います。
理由としては、
(作詞家は曲によって違ったりするのですが)
「"ハートの扉"の作編曲家、ディレクター、参加ミュージシャンが全員同じメンバー」だからです。
そのため、
「アルバムを制作する中で出来た曲をシングルとして小出しにしてリリース」
しているのだと思います。
これは他の昭和女性アイドルだと、岩崎良美さんも同じ手法で楽曲制作をされていますね。
アルバム先行で制作することのメリットとしては、「アルバムで聴いたときに楽曲のコンセプトが一貫している」というのがあります。
ハートの扉は「優しく緩やかな音色を使用したコーラスワークが素晴らしいアイドル歌謡」という一貫したコンセプトのアルバムに仕上がっています。
③「桜吹雪クライマックス」がカップリング曲に選ばれた理由について考える
これも完全に僕の予想なのですが、
「アルバムを製作中に出来上がっていた曲の中から、一番完成度が高い楽曲をチョイスした」
のだと思います。
でなければ、あんなに"クセが強いファンクっぽい楽曲がデビュー曲のカップリングになる"ということは中々無いと思います。
「愛って林檎ですか」は"デビュー曲として作られた感"があるので、ホントにデビュー曲用に作ったと思いますが、
カップリングに関しては恐らく制作陣が
A「今出来てるアルバム曲の中からカップリング選ぶけど、何でいく?」
B「"桜吹雪クライマックス"が一番完成度高いからあれで行こう!」
と話して決まったと思われますね。
・表題曲とカップリング曲のバランスについて
まず、表題曲が「正統派アイドル歌謡」でカップリング曲が「ファンクアイドル歌謡」なのは、アルバム先行で作っていないと絶対に有り得ない組み合わせですね。
その都度その都度シングルで曲を制作していたら、恐らく表題曲は「愛って林檎ですか」で、カップリングは「ポップ系のゆったりしたバラード」とかになっていたと思います。
この"A面とB面の異例の組み合わせ"こそが至高のデビューシングルたる由縁なのだと思います。