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山川恵津子さんの著書「編曲の美学」 感想文
今回の記事は、山川恵津子さんの著書「編曲の美学」の読書感想文になります!
実は著者の山川恵津子さんとは、2年前くらいのケンカイヨシさん主催のクリエイター交流会でご紹介頂き、それ以降ご交流させて頂いてます。
※その際、僕の書いた岡本舞子さんの考察記事の答え合わせをして頂きました↓
それ以降、周りの60代以上のミュージシャンの方々に「この前、山川恵津子さんとお会いしました!」と言うと「昔は毎日スタジオで顔を合わせてたよ!」という方もしばしば。
本作「編曲の美学」は今年5月に発売開始されたのですが、その際に山川さんから僕にご連絡を頂いて、「本の感想書きます!」とお伝えしたのですが、
「これはしっかりブログで感想文を書かなければ!」
「投稿するなら、今の"書きたいことを書いて頭の中を全部出すシーズン"の締め括りの記事にしよう!」
と考えていたらいつの間にか年末になってしまいました。本当に申し訳ないです。。
それでは、一連の"書きたいことを書いて頭の中を全部出すシーズン"の締め括りの記事として、
21歳昭和邦楽研究家による「編曲の美学」の感想文を書いていこうと思います!
(ネタバレにならない程度に書きました。)
山川恵津子さん「編曲の美学」 感想
①当時のお話が色々載っている
本作「編曲の美学」は、80年代当時のレコーディング/音楽制作環境などの貴重なお話が沢山綴られていて、とても勉強になりました。
山川さんのアレンジャー/コーラス/キーボーディストとしての幅広いキャリアを存分に感じ取れる内容です。
80年代の
・DAWも無い
・打ち込みもそれほど無い
・今ほどコライト制作の手法も無い
・デモテープは今ほどしっかりした作りではない
という環境でのエピソードは、初めて知ることも非常に多かったです…。
"海外RECのエピソード"や"プロフェッショナルな同業者の方々"とのエピソードも楽しく拝読させていただきました!
本作で登場する機材も
・ミニモーグ
・ローズピアノ
・CP-70
など、"80年代の音楽雑誌でしか見ないような機材ばかり"で、「みんなこの機材を使われてたのか…」ということを考えたり。。
(それこそ僕の師匠は"シンセサイザーからアコピの音が出た時は革命だった"と仰っていました)
また、
「当時の音楽業界内でのヤマハの権威は凄まじかったんだろうな〜」
ということも思いました。
②山川さんサウンドの謎が解けた
僕の思う山川さんの作られるアイドルソングの特徴は、
・印象的で派手なイントロから始まり、その以後イントロのフレーズは以後の曲中では使わない
・浮遊感のあるコード展開
だと考えていたのですが、本作では山川さんのアレンジテクニックが余すことなく綴られており、上記2点の謎も解けて「それが理由だったんですか!」と声に出そうになりました笑。
アレンジテクニック以外にも山川さんが考える
「アイドルソングにはこの要素が必要!」
という要素が沢山綴られていて、
アイドルソングのトラックは本当に"華やかな武装"であることを思い知らされました…。
③東北新幹線についてのお話
山川さんと鳴海寛さんのユニット「東北新幹線」についても、レコーディング時のエピソードからユニット名の由来まで沢山のことが綴られていました。
中には、丸々"東北新幹線のアルバムのライナーノーツのようなセクション"もあり、本当に「これはそういうことだったのか!」と感じることばかりでした。
また、最近僕はCINDYさんの楽曲内の鳴海さんサウンドを研究しているのですが、本作では山川さんが分析された鳴海さんサウンドについても綴られていて非常に勉強になりました。
(やっぱりメロウな楽曲での鳴海さんのガットギターは最高だと思います!)
④山川さんのお考えや思い
本作の中では、山川さんのお考えや思いについて綴られている場面も多く、
・編曲へのこだわりや思い
・アレンジャーとして大切なこと
・昭和邦楽における洋楽オマージュ
・90年代の音楽について
・トラック先行の音楽制作
・サブスクサービス
などについてのお考えは、「山川さんはこういう風に考えられているのか」と思いながら読み進めました。
⑤筒美京平さんのお話
本作を拝読して初めて知ったことの中で一番衝撃的だったことは、
"一般的にアレンジャーさんとディレクターさんのアレンジの打ち合わせに作曲家さんが来ることは無いが、筒美京平さんだけは唯一アレンジの打ち合わせに来る作曲家さんである"
ということです。
京平さんがその際にどういう指示を行うかなどはネタバレになるので、ぜひ本をお手に取って読んでいただきたいのですが、大谷和夫さんの研究をライフワークとしている僕としては、
「だから大谷さんが京平さんの作品をアレンジされる時は、あんなに攻めたアレンジが多いのか!!」
と物凄く納得がいきました。。
もし、
"自分の好きなアレンジャーさんが、京平さんの作品をアレンジされる時だけ凄い攻めたアレンジをされるのはなぜだろう"
と思われている方は、絶対に「編曲の美学」を読んでください!!!
私の好きな山川作品
感想文の最後に本作の最後に収録されている「私の好きな山川作品」を僕もやらせていただこうと思います。
◯コーラス編 : 河合奈保子さん 「帰れない」
ボサノバ調の楽曲なのですが、間奏の山川さんのコーラスが、一気に曲の雰囲気を色付けていくようで圧倒的です。
この独特の儚い雰囲気は山川さんの歌声にしか出せないと思います…。
◯アレンジ編 : 岡本舞子さん 「エデンの園」
フレーズやサウンドはファンク調ですが、美しいストリングスやコーラスが流れるように入ってくることで、華やかなアイドルソングに仕上がっているところが最高です!
曲の中での音の止め方も本当にカッコイイです。
まとめ
・昭和邦楽/昭和アイドルソング好きの方は、ぜひ「編曲の美学」をお手に取ってみてください!!