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【しくじり企業】米グルーポン:おせちだけじゃない、そもそも無理ゲーだった
概要
2011年日本お正月はグルーポンのスカスカおせち問題でにぎわっていた。グルーポンはいわゆる共同購入クーポンサイトを運営。共同購入クーポンとは50%超等の大型割引クーポンを販売し、主に中小店が安価に新規顧客を獲得するもの。グルーポンは2008年の創業から3年後にナスダック上場。日本でも2010年頃グルーポンを始めとする共同クーポンサイトが乱立し、この中の誰かが生き残って市場を占有と思われたが、2021年現在話題にもならなくなった。本国アメリカでも状況は同じで、グルーポンは共同購入サイト事業より撤退、メイン事業をマッサージやダンス等体験型ビジネスに切り替えるも、相変わらず苦戦を強いられている。
こちらは2010年ワールドビジネスサテライト。グルーポンが新たなビジネスとして取り上げられていが今や見る影もない。
1. グルーポンの歴史
2008年11月アンドリュー・メイソンはシカゴでグルーポンを創業。グルーポンはいわゆる共同購入クーポンサイトを運営。共同購入クーポンとは50%超等の大型割引クーポンを販売し、主に中小店が安価に一見客を獲得するもの。グルーポンはクーポン発行に伴う手数料を取り、win-winになるわけである。グルーポンが既存のクーポンと異なるのは「購入数は一定量に達して発行される」ことで、発行者(主に中小事業者)としては一見客の興味を引き付けられることを確認しつつ、低リスクでの広告が可能。
共同購入クーポンは過去にない新たなビジネスモデルとして注目を浴び創業早々の2009年に売上14億円、さらに翌年2010年には売上300憶円を達成。この年googleからも目を付けられ、アンドリュー・メイソンは5500憶円での買収を打診を受けた(同氏はこれを拒否、後から考えればこれを受諾していれば、今頃どんな人生だったろうか)。
2011年10月にはナスダック上場し、全盛期には時価総額1.3兆円に達する。しかしその後慢性的な赤字から脱却できず、ついには2013年アンドリュー・メイソンはCEOの座から更迭。
現在まで破産は免れているが赤字から脱却できず、2010年頃のブームは完全に過ぎ去った感である。
*念のため、ベンチャーにとっては赤字自体は特に問題ではない。問題は、いずれ市場を独占した時にしっかりと収益を稼げるか、である。詳細はしくじり企業Ofoご参照のこと
2. グルーポンの財務状況
以下はグルーポンの2011年以降のPL(売上・営業利益・税後利益)。
ご覧の通り、
売上 :2015年をピークに右肩下がり
営業利益・税後利益:慢性的に赤字が続く
と上場から10年近く経つものの、健全経営とは程遠い。
3. そもそも収益性のあるビジネスモデルではなかった(ただの無理ゲー)
グルーポンは中小店への売り文句として、以下3点を押していた。
① リピート率は90%
② リスクなく新規顧客開拓が可能
③ 若い女性がfacebookやtwiiterで拡散するので、広告効果が高い
全く新しいビジネスモデルとしてもてはやされた共同購入クーポンであるが、グルーポン含めて業界自体が沈静化しており、そもそも無理ゲーであったと認識されている。
もし町のステーキ屋が集客目的で100ドルのステーキをグルーポンで出品すると以下の通り粗利はマイナス。
定価 :100ドル
割引 :▲50ドル
手数料:▲30ドル
材料費:▲30ドル
⇒粗利▲10ドル
グルーポン活用の目的は新規顧客開拓であり、広告費と見なせば赤字となることは問題ない。しかし問題は、グルーポンがいわゆるバーゲンハンターの狩場になったことである。
筆者個人の話であるが、学生だった2011年はグルーポンで安くレストランを予約し、たびたび彼女と食事していた。しかし、二度とその店に行くことはなかった。そう、はっきり言って「安いから行った」だけである。
今にしてみれば上記①は楽観的過ぎる見方となり、グルーポン含めた共同購入クーポンサイトは衰退したのだった。
4. まとめ:ビジネスはまず常識で考えろ
私がグルーポンを使っていた学生時代、「グルーポンで使った店をリピートする人なんているのかな?俺はしないけど」と考えていた。食事を安くすませたいならファストフードでいいし、高級レストランはグルーポンを使わなくとも十分集客可能である。「クーポンで安いだけで行く」という至極当たり前の感覚であるが、ブームというのは恐ろしく、そんな普通の感覚すら曇らせてしまう。
ビジネスをするときは「一般常識で考えてどうなのか」ということをよくよく考えてほしい。常識とは先人達がトライ&エラーを繰り返しながら徐々に社会に蓄積されたノウハウであり、馬鹿にしてはいけない。
余談だが、最近youtubeを見ていると
・これからは常識に捕らわれない生き方をしよう(だから大企業に行くな)
・これからは常識に捕らわれない生き方をしよう(だから学校に行くな)
・これからは常識に捕らわれない生き方をしよう(だからプログラミングで副業しろ)
と無責任な放言がやたらと目につく。
しかし自分の状況に不満があるからと言って、人生一発逆転を狙って無意味な逆張りをしないでほしい。常識外れとはだたの逃げの言葉ではないのである。