赤い珈琲と消去と耽溺
快晴の土曜日。
清々しくて良い感じだけど正直すごく眠い。一日を通して眠い。今日の日記は早めに寝るために早めの時間に書いています。
最寄りのスーパーが朝7時から開くので、起きて身支度をしてお散歩がてら食材を買いに出かけました。いつも夜の時間帯に行くので知らなかったんですが、開店直後だと地場野菜コーナーにピカピカのお野菜が山積みになっている壮観な光景を眺められるみたいです。あまりにも美味しそうだったのでほうれん草とにんじんをそこから買ってしまった。今日の晩ごはんに使うのだ。
開店直後のガラガラのスーパーで快適な買い物が出来た事で気分が良くなっていたのか、帰りにふと気が向いてミスドに寄ってポンデリングをふたつ買いました。キャラメル的なやつとザクザクしたクランチのやつ。買って帰った結果本日の朝ごはんとしておいしくいただきましたよ。たまに無性に食べたくなるポンデリング。ミスドへの憧憬は地元に住んでいた頃に一番身近なカフェスペースだった事が影響してます。記憶が改竄されている気がしなくもないけど、あのお店いつ行ってもガラガラだったんですよ。ふらっと行って本読んだり資格の勉強したりといったひとり時間を快適に過ごさせていただいた思い出しかないし、今でもミスドでホットコーヒー注文した時に出てくる赤いマグカップも特別な存在(外側が赤・内側が白・そこに注がれる黒いブラックコーヒー、という配色すばらしいぞ)。地元を出てチェーン店のカフェの選択肢がいっきに増えた事やスタバ大好き人間と化した事もあって最近はあまり行かないけど、今朝のような「ふと気が向いて」が表出すると、昔の思い出が自分の内側の普段意識しないところにしっかり根を張ってるのかなと思っちゃいますね。今の自分は間違いなくあの頃と地続きなのだ。
昨日に続いて新しいiPhoneの設定を行いました。
ウェブサイトのパスワード設定が引き継がれていないので、とりあえず日頃からよく見るサイトを開き、前の機種の設定画面からIDとパスワードを確認して、新しい機種で入力して記憶させる……という作業をちまちまと。3年前の機種変更の時がどんなだったか全然覚えてないんですけどこんなにいろいろ手間かかってたっけ? 煩わしいことが増えるのはよろしくない。よろしくないぞ。次に機種変更するのがいつのことになるのかわからんけども、必要なものごとを絞るようにしたいです。未来の自分に楽をさせたい。
ところでLINEの引継ぎがうまくいかなくて、最終的にトーク履歴が全部消えました。さっきバックアップとったじゃん!? って脱力したほんとに。恋人からいろんなタイミングでもらったメッセージも全部消えてしまった事にすさまじく落ち込んだけど、向こう(の端末)が覚えてくれているから大丈夫だと思うことにします。でないとつらい。
そんな感じでいろいろ格闘して、残りは仕事で使うアプリ2種がきちんと動作するかを明後日の月曜日に確認するだけです。機種変更って喜怒哀楽ぜんぶ駆使する作業なんだね。いや怒と哀は完全に自分のせいなんだけど。
今日読んだ本その一。
『かか』宇佐見りん(河出書房新社)
全部で115ページなので短編の部類に入るんでしょう。でも文章から立ち上がる世界が濃くて、狭くて濃くて。おかげでひとつの世界にどっぷり浸った後特有の眩暈を伴う読後感でした。最後の一文、こんな濃い物語がこの一文で終わるって…。
わたしは普段は女性作家の小説をあまり読みません(こないだ趣味の棚卸しの記事を書いた時、好きな作家を思いつくままに挙げてみたら全員男性でした)。なので今は女性作家の小説を読もうキャンペーン実施中なんですが、この、女であるがゆえに情景も心情もありありと想像できてしまう光景を前にするという読書体験の生々しさは、自分と同じ性を持つ作家が書いた文章ならではのものなんでしょうか。それとも宇佐見りんさんの持ち味なのか。まだ二作しか読んでないから判断できずにいる。とりあえず『推し、燃ゆ』は本作以上に世間一般へと歩み寄ってくれていた作品だったのかも。デビュー作がこれってほんとにとんでもない才能が輩出されたのかも。
今日読んだ本その二。
『一文物語集』飯田茂実(e本の本)
演出家・ダンサーとして世界的に活躍している著者が25歳の時に書いた前代未聞の小説、とのこと。知ったきっかけは現在再読中でもある二階堂奥歯さんの日記です。二階堂さんが「超短編」と称していた通り、すべての物語が一文で構成されていて、その一文の物語が全部で333編収録されています。
バリー・ユアグローが大好物な掌編小説大好き人間には最高に刺さりまくる一冊でした。素晴らしかった! 長編小説の始まりめいた余韻を含む一文、星新一のショートショート世界を凝縮したような一文、とっても映像的で鮮やかな一文、率直に言ってホラーな一文、今で言う「意味が分かると怖い話」的な一文などなど……。次から次へと目眩く心地に浸れる一文の世界。
すべての一文にタイトルは無く数字がつけられているだけなのですが、例えば18番目の一文はこんなふう。
18
彼に会いに行くためには、彼から預かっている愛玩動物たちを砂漠へ置き去りにしなければならない。
この動けない絶望感。
ちょっとサキっぽいブラックユーモアも含みつつ、言葉を徹底的に削ぎ落としたからこそ成立する瞬間描写力にうっとりします。
ページをパラっとめくって目にとまった一文を読むだけでも楽しいし、読んだ人とどの一文が響いたかを語り合うのも面白そう。ただ絶版の上に価格が高騰しているので、図書館などでないと手に取りにくい一冊です(わたしはどうしても手許に置きたかったので古書を買いました)。河出書房新社あたりが文庫化してくれないかな。