見出し画像

前置胎盤で緊急帝王切開した話①

その日は突然やってきた。
「これ以上妊娠を継続するのは難しいです。今日をお誕生日にさせてください」
主治医の言葉を合図に、慌ただしく帝王切開の準備が始まった。

私は、前置胎盤のため妊娠30週ごろから管理入院している、現在32週の妊婦。予定では2ヶ月ほど入院し、40週ごろに帝王切開の予定だったが、入院からわずか2週間ほどで、子宮内部から出血し、緊急帝王切開することとなった。

前置胎盤とは、本来子宮の上部に付いているはずの胎盤が、子宮の入り口を塞いでいる、または子宮の入り口にかかっている状態のことをいい、私の場合は後者だった。いずれにせよ、下からの出産は大量出血をともなうため、帝王切開での出産を余儀なくされる。

2ヶ月の入院と聞かされていた私は、(いやいや、全然心の準備ができてないんですけど!)とプチパニック。
ちなみに私は、初産の優等生妊婦なので、入院前にドラマ「コウノドリ」のシーズン1と2を履修済みである。「コウノドリ」とは、鈴ノ木ユウ先生の同名漫画が原作で、綾野剛や松岡茉優ら実力派俳優陣によりドラマ化された、涙あり、笑いありのヒューマン医療ドラマである。しかし、思い出すのは胎盤早期剥離!羊水塞栓症!など、妊婦が死にかけるシリアスなシーンばかり。恐怖で涙が止まらない。これから出産を迎える妊婦さんで、不安になりやすい体質だという方は、出産を終えてから観ることを強くおすすめする。

さて話は戻るが、泣いていても帝王切開の予定は覆らないわけで、先生や助産師さんは、泣いている私をなだめつつ、手術室の確保や、ルートの確保、心電図やレントゲンなど、実に手際よく準備を進めていく。その間私は、ベッドに横になっているだけで何もしていない。されるがままだ。なにしろ、心電図やレントゲンが向こうからやって来てくれるのだから、(へー、レントゲンって持ち運べるのもあるんだ)と、妙に感心したのを覚えている。

あれよあれよという間に手術台に乗せられた私は、さながらまな板の鯉である。もう逃げられない。腹を括るしかないのだ。そう思うと、不思議と涙も引っ込んだ。帝王切開は、基本的に胸から下しか麻酔をかけないので、意識がある状態で行われる。お腹を切られる大手術なのに、それを一部始終見届けられるなんて貴重な機会、人生でそう何回も経験できるものではない。まるでドラマみたいではないか!先生方の一挙手一投足を見逃すまいと、鼻息荒く手術に臨んだが、「眼鏡外しますね~」
そう、私は近眼だったのだ。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集