31回:『死して屍、愛して骸』
『死して屍、愛して骸』
地べたにしゃがんで土いじり
尻を泥まみれにして黙り込む
いつまでも延々と 土を数えながら
過ぎた夜だけ歳を取り ようやっと何もないのに気付く
裸じゃ何もできん 何も守れんし祈れもせん
せいぜい穴を掘る そこに死体を埋めるだけ
それでも埋まりきらんから 適当に米粒を投げ入れる
それでは稲にはならんしな 溶けて酒にもなりやせん
なんで生死の見分けがつかんのか 埋まったやつに訊いてみれ
音がしたらそれが答え せんかったらそれが答え
まれに穴から餓鬼が生まれる 生まれた分だけ足していき
死んだ分だけ引いていく
縦に並べたその数と 横に並べたその数は
なんでかいつも一致せん
なんでかと穴に問うたとて 知ったことしか返ってこん
「無秩序」
そんなん気にするくらいなら 黙って土でもいじっとれ
くだらんことに付き合っとったら 嫌な雨が降りよる
余計ぬかるみ尻が沈む 穴の方へ引っ張られる
必死さなんてないもんで 底までだらだらしとるだけ
そこで死体と対面する 芽が生えかけた有機物
気まずく黙っておったなら 「子らは」と音が発せられる
耳にも泥が詰まってしまい その後は聞き取れなんだがな
全身に泥が詰まってしまい 今ではただの塊よ
そしたら上から別の死体が放り込まれ 米粒が撒かれる
「子は出るかそれとも出んか」 何やら底に訊ねよる
子など勝手に出ていくわ そして勝手に死によるわ
だから今ごろ数が合わん 生きてる間は数は合わん
死が数えられんとわかるには 死体の身分が要るらしい
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