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正欲。



あらすじ


タイトルである「正欲」とは何か。正しい欲。世間一般の正しいではなく、その人にとっての正しい欲。それがこのタイトルの意味なのであろう。

作中における寺井啓喜(稲垣吾郎が演じる役)はきっと社会を擬人化している。”当たり前””普通”それらを強要する姿が印象的に表現されている。
寺井の職業が検察であることが、”当たり前”に権力要素を絡め、
物語のシリアスさをより一層引き立てている要因であろう。


泰希(寺井の息子)、由美(寺井の嫁)、桐生夏月(新垣結衣)、佐々木佳道(磯村勇斗)、その他俳優陣は自分自身の欲を持っている。
水フェチ、児童愛者(ロリコン)、男性恐怖症。これらは世間一般において”異常”とされている。このような人々の心情が生々しく表現されている。加えて、性癖とは別の観点ではあるものの、普通から外れていることへの葛藤と希望に苛まれている泰希の様子も現代ならではで特徴的である。

感想①


上記の文章で”異常”という言葉を用いてしまった。異常があれば正常もある。このような二項対立構造を乗り越えるor社会から少しでもなくしていくことができるのであろうか。
現実、社会問題としてこれらの問題は噴出しており大きな問題となっていると言える。
ex)ウクライナ戦争、パレスチナ戦争etc,,,
※デューイが唱える二項対立の克服は今個人的に関心がある内容である。
一方でヘーゲルの唱えるように、二項対立の止揚もなくてはならない。

上記のような課題感が本編で表現されている。
世の中にありふれている”当たり前”。作中では「みんな明日を生きようとしている」と表現されていた。婚活のチラシ、年金のチラシ、保険のチラシ、全てが”当たり前”であり、その当たり前を得ることが”社会的に”生きるために必要な肩書きであることを上記のセリフで表現している。

感想②


つながり。異常とみなされてしまうもの同士のつながりも印象的である。世の中には様々な人がいる。寺井啓喜のような人が未だ大半であろう。
現在、ニジイロの方々が精力的に声帯・電池・体力を用いて運動を行っている。私の多様性に関する見解は、尊重ではなく理解である。
同じ人間であるのに、尊く重んじる必要はあるのだろうか。
今回の映画を見ていると寺井検察官は、尊重以前に理解をしていない。
無理解から対話は始まらない。対話があるからこそ対立を乗り越え、止揚することができる。
社会に対して、そんなようなことを伝えていた作品であると私は感じた。

余談


このような作品にもかかわらず、作中に「ダイバーシティイベント」が開催されていたのは皮肉の塊であろう。そのイベント企画の会議において、男性が拒否反応を起こしたのは後々の伏線であると言えるし、新垣結衣が冒頭水に溺れているシーンがまさか〇〇行為だということを誰がわかったであろうか。劇中の演劇シーンを鑑みると、星野源の心情が憚られる。ここであえて水を題材にしたのはなぜであろうか。爽やかさ、透き通る美しさを、世間で異常とみなされてしまう人たちにも投影したかったのであろうか。妄想は膨らむばかりである。鑑賞30分後の今、他人に見せることを微塵も考えず、頭に降り注ぐ言の葉をひたすらタイプしている。

ひとりごと。


私自身、普通がわからない。普通とは無縁であり、普通を辛いと思うことは多々ある。この社会に生きているものなら誰しもあるであろう。しかし、普通、当たり前をマイナス視してしまう風潮があるところ一歩俯瞰して考えてみたい。当たり前も長年の歴史、経験が積み上げられてできたものであり、それに妥当性があるがゆえに当たり前という概念ができ、今にまで続いているのではなかろうか。それを易々と改革してしまって良いのだろうか。これは最近読んだ本で述べられていた諏訪氏の言葉である。この言葉は非常に示唆に富んでおり、新たな視点がひらけた。左派の活動が目立ち、YouTube上ではリベラルな思想が人気を集める中、私は一歩俯瞰して物事を見たいと思った次第である。
改革の裏には妥当性、合理性がある。これは何事においてもそうだ。しかし、社会は妥当性、合理性のみで説明できるであろうか。答えは否である。データサイエンス、DX化が叫ばれる今の時代、何事も数値化・見える化する風潮がある。これは確かに間違いなく画期的で有能なものであるのは事実だ。しかし、私は数値では測れないものを今だからこそ大事にしたい。
この全ての可能性を秘めているのが子供だからこそ教育に興味があるのだなと再認識した今日。未だ答えを求めてしまう癖が抜けない大学一年生であるが、

「答え・正解を求めない営み=自分自身の正欲」

を求め続けたいものである。

そんな今の世界、日本、東京の中で私1人で悩みながら生きていくのは辛い。それゆえに「この世界で手を組みませんか。」
と声を大にして言いたいものである。仲間は何処へ。

ここまで長々とひとりごとを連ねましたとさ。


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