自尊心を保てないときに|白瀬歯科医院〜悩める僕と大好きな歯医者さん〜|連載小説?
僕は勉強も運動も苦手だ。
取り立てて優れたところがない。
町の歯医者さん、白瀬先生は大人だ。
僕のような子供をどう思うのだろう。
僕は先生に聞いてみた。
先生は優しい笑顔をみせる。
「君がいるというだけで貴重なことだと思うよ。君は生きていることを誇ればいい」
自分の存在を肯定する。
それが自尊心を保つための一歩なのかもしれない。
「やっぱり先生はすごいよ。先生ならたくさん誇れるところがあるんだろうね」
先生は、いつものようにはははと笑う。
「先生の一番の自慢は何?」
先生はしばらく考え、待合室を見渡した。
「町のみんなの歯を守っていることだね」
待合室にはひとっこ一人いない。
「僕は予防を重要視しているんだ」
先生は嗚咽している。
自尊心を保つのはなかなかに難しいようだ。
〜自尊心を保つための建前は、自分をより苦しめる〜