オリジナル曲|虚ろな人

あの娘は脚がないから
綺麗な景色を知らない
だから伝えようとした
草原の夜明けを

桃色と紺が滲んで
風が抜けるのを映す
そいつを柵にもたれて
一人眺めてたのさと

あの娘はそれが嘘だと
知りながらキラキラと笑って
だけど本当はあまり
僕に興味はない

あの娘は耳がないから
愛の言葉を知らない
だからあの娘を抱きしめて
好きだよってつぶやく
この胸の震えが少しでも
あの娘に伝わればと
あの娘は僕の鼓動を
こめかみで感じようとする

あの娘は少し歯に噛んで
照れながら涙を流して
だけど本当は他の
誰でもいいと思ってる

あの娘の悲しみに
僕は触れられない
あの娘の痛みには
僕は触れられない

あの娘は、この世界に
絶望して生きてる
無くした夢の数だけ
腕の傷が増えてく
残る傷跡の上
新しい傷が刻まれる
僕は希望を胸に
傷跡を指で撫でる

あの娘は虚ろに笑って
人形みたいに抜け殻で
絶望から抜けたいけど
僕に力はない

あの娘の悲しみに
僕は触れられない
あの娘の痛みには
僕は触れられない


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