自由なようで不自由な生き方~映画『仁義なき戦い』~
映画にハマったのがまだ数年前なので、いわゆる「名作」と呼ばれるタイトルをほとんど観た経験がありません。
そんなわけで、リバイバル上映とか4Kリマスター上映とか、過去の作品を見られる機会にはできるだけ足を運ぶようにしています。
そんな感じで『仁義なき戦い』を観てきました。
当時はシリーズ化するほどの大人気、影響を受けた若者も多いと聞きますが……正直、現代の人間から見たら、影響を受ける、憧れるような世界にはとても見えない、というのが実感です。
戦後という自由のない時代に、自由になるために極道になる道を選んだ若者たち。
しかし結局「極道の世界」という枠のなかで、全員が身動きが取れなくなり、自由になるどころかそれまで友人であった者たち同士が殺しあうような状況になってしまう物語ですよね。
この世界に憧れる、という感情が、イマイチ私にはわからないのが正直なところでした。
まあ、憧れる人の気持ちもわからなくはありません。
現在の極道は暴力団、反社会的勢力として世間から爪弾きにされる存在ですが、この映画が封切られた当時の極道は、怖いけれども筋を通す生き方をする、憧れの存在という一面もあったわけですから。
少なくとも、単なる犯罪者集団として見られている、現在の「半グレ」とは違うもの(実態は別にして)、と考えなければならないのです。
そのあたりはもう「世代や社会情勢による認識の違い」として受け入れるしかないでしょう。
と、思うところはありますが、純粋にエンターテインメント映画として考えると、かなり面白かったのは事実です。
とくに中盤から後半にかけての、まさに「血で血を洗う」という表現がピッタリの激しい抗争の展開。
殺し合いをエンターテインメントとして楽しむのはいかがなものか、という意見もあるでしょうが、見ていて「次は誰が殺られてしまうんだろう」と、観ている人間をドキドキさせるのに十分な迫力がありました。
拳銃で撃つシーンも、一発で決める、なんてスマートさはなく、何発も何発も撃ち込み、そのたびに撃たれて痙攣し、のたうつ被害者の姿は、見ていて苦しくなるほどの迫力を感じましたね。
泥臭いと言うか、殺し合いとはこういう恐ろしいものだ、という事実を突きつけられた気がします。
私はこの映画を観て、極道の世界に憧れることはなかった、とは先にも書きました。
ただ「現在の自分はこんな世界にいない、平凡な人間で良かった」と思わせてもらえた、それには感謝したいと思います。