1回観たらしばらくは観なくて良いかな……~映画『MIND GAME マインド・ゲーム』~
アニメ業界を知る人間なら、湯浅政明監督のことを知らない人はいないでしょう。
そんな湯浅監督の初長編アニメ映画作品が、この『MIND GAME マインド・ゲーム』です。
はっきり言って、観る人を選びます。
楽しめる人は楽しめるでしょうが、楽しめない人は楽しめないでしょう。
もちろん、どの作品でもそれはあるのですが、この作品はあまりにもアクが強すぎるためです。
もともと湯浅監督の作画自体、アクが強いのですが、この作品は演出もまさにやりたい放題。
登場人物の顔が突然声優を務めている芸人さんの顔になったり、意味がよくわからないダンスシーンがあったり。
エログロとまでは言えませんが、なんとも感想に困ってしまいます。
これらの演出が面白ければ「面白い!」と言えるのですが……。
いや、映像表現としての面白さはあるんですよ。
しかしそれが「映画としての面白さ」につながっているか、と言われると、ちょっと首を傾げてしまう感じでして。
実写ではとてもできない映像を観せてくれる、という意味では、アニメ映画としての存在意義は非常に高く評価できるのですが。
こうやって映像表現の部分にばかり、つい注目してしまいがちですが、ストーリーやテーマは実は非常にわかりやすいんですよね。
死人が生き返ったり、巨大クジラのお腹の中に閉じ込められたり、ストーリーはぶっ飛んではいますが、複雑に入り組んでいるわけではありません。
演出によって、入り組んでいるように見えている、というのはあるかもしれませんが。
またテーマは「人生は自分の選択次第で如何様にも変わる」「何事も強い意志(マインド)を持って、全力で取り組め」的な感じでしょうか。
こう書いてみると、それほど珍しいテーマを扱っているわけでもないのがわかるでしょう。
この映画は、ともかく「湯浅政明」という監督の演出センスでここまで知られている、と言っても過言ではないのではないでしょうか。
やたらと高く評価する人もいますが、正直に言うと「そこまで高評価か?」と思ってしまう部分はありますね。
ほかの特徴と言えば、吉本興業の芸人さんが多数声優を担当している、て部分ですかね。
20年前の作品ですので、若い頃の今田耕司さんや山口智充さんの顔が大画面で見られます。
私にとっては、芸人さんでなく本職の声優さんでも良かったと思いますが……この世界観には、ちょっと微妙に聞こえる芸人さんたちの演技が合っている、と言えなくもないでしょう。
……しかし当時、芸人さん目当てでこの映画を観に来た人たちは、鑑賞後に何を思ったのでしょうか。
そのあたり、ちょっと気になるところです。
私は2024年に鑑賞したため「まあ、湯浅作品だしな」ですべて納得はできましたが……。
数年後、何かの拍子で思い出して「もう一回観てみようかな」と思いそうです。
とりあえず、しばらくは観なくても大丈夫かと思いますが。