戦場のヒーローでありながら、反戦思想の反映でもある~映画『ランボー/怒りの脱出』~
『ランボ―』の続編、前作は街中で大暴れしたランボーが、因縁の地であるベトナムへ。
米国人捕虜を救出するために、大暴れします。
戦場で大暴れするランボー、この姿こそ、「ランボー」と聞いてイメージする姿ですよね。
ただ基本的には、敵から発見されないようにする隠密行動的な作戦のため、序盤から中盤くらいまではけっこう地味な感じ。
それはそれで、音が出ないように投げナイフや弓矢を活用した戦いを見せてくれて、見どころではありますが。
むしろ隠密行動のわりに、完全に「見つかったら殺せばいい」と考えていそうなランボーの戦闘マシーンっぷりに感心しました。
しかしランボー、やっぱり「戦場のヒーロー」ですよね。
強いし、基本的にはどんなときも冷静だし、耐えるときはとことん耐えるし。
とくに今作は、ベトナム戦争で捕らえられた米国人捕虜を救出する、という内容なわけですから、ヒーロー視されて当然です。
日本で言えば「北朝鮮に単独で乗り込んで、拉致被害者を救出してくる」みたいな話ですよね。
とは言え、単なるヒーローもので終わらないのが、『ランボー』の奥深いところで。
政治的、国際的な観点から、米国人捕虜が救出されるのを望まない作戦トップの存在、完全に悪役ではあるんですが、ちょっと「まあ、事情はわからないでもないな……」と思ってしまう点もあります。
こうやって「ベトナム戦争」という負の遺産を、正面からしっかりと取り入れて作られているのが、『ランボー』が人気となった理由なのでしょう。
そしてあれほど戦場でイキイキとしていたランボー、そんな彼がラストで見せる「もう二度とベトナム戦争のような悲劇は繰り返されてはならない」と考えているであろう姿が、多くのアメリカ人から受け入れられたのではないでしょうか。
耐えて耐えて大爆発してスッキリさせて、そして最後にはアメリカ国民の意思を代弁してくれる、ランボーはそんなヒーローであるわけですね。
そんなわけで、考えさせられる点もあり、派手なアクションや爆発もあり、と満足度の高い映画でした。
ただし気になった点がありまして……ヒロインの扱いです。
ランボーとのキスシーンがあったときには「ああ、この子死にそう」と思いました。
たしかにそう思ったんですが……。
まさか次の瞬間に撃たれて死ぬとは、さすがに思いませんでしたよ。
「はい、キス終わったね、じゃあ出番終わり!」みたいなバッサリっぷり。
たしかにあの子を連れながら戦うのは、完全にランボーにとって足手まといなんで、展開的には仕方ないのかもしれませんが……。
ちょっと思いきりが良すぎないか?と、笑ってしまいましたよ。