日本保守党は参政党の二の舞となるか?
参政党と日本保守党への熱狂
大阪市内、梅田で街頭演説をやろうとしたところ、警察から集まった人たちの安全確保が難しいということで、街頭演説中止を言われた日本保守党。
当時の映像を見れば、確かに数多くの人が集まっていて、その数は3,000とも5,000とも10,000とも言われている。
あの映像は、橋下徹氏が代表を務めていた頃の大阪維新の勢いのようなものを感じるし、一時の参政党チックな雰囲気も感じられる。
ただ、そこに参集した人たちの多くは、予想通りというか、高齢者が多いように感じた。結局、革新に対抗した保守勢力と言っても、中高年に偏っていると感じるのは私だけではないだろうと思う。
これは何を意味しているのだろう?
この記事を書いた選挙プランナーの大濱崎氏の見解では、選挙戦略にはロジスティックが大事だと、具体的な戦略面について触れていて、ロジスティックとはつまり、集票の際、どれだけの人を動員できるのか?と言った問題だろう。
現在、5万人以上の党員を誇る日本保守党は、その意味で言えば、各地のボランティア体制を構築する下地は整えられていると見ている。小選挙区制と比例代表制を併用している日本の選挙制度において重要になるのは、如何に支持者の底辺を広げるか?にかかっているのは、論を俟たない。当然、話題性も需要になってくる。
かつてNHK党が旋風を巻き起こしたのも、NHK党の比較的強い支持者を柱に、YouTube等を活用して話題性を振り撒き、立党の精神であるNHKから国民を守るというワンイシューで選挙に臨んだ結果、参議院で2議席を獲得している。
これと同様、新しい政党は資金力と集票力が重要になってくるので、立党後、最低でも2.5億円の資金を集めた日本保守党は、あとは党是の確立と地方の立候補者の確保、そして来る衆院選、参院選での票数の獲得が当面の目標となるだろう。
日本の公職選挙法では、獲得した議席数と票数に応じて一定の条件を満たせば国政政党として政党交付金を受け取ることができる。1票に対して250円獲得することが可能となるため、要は集票力が大きな要素となるのだ。
これを逆手にとって資金集めを行ってきたのが、NHK党でありれいわ新選組で、少数政党とは言え国政政党として政党交付金(税金)を受け取ることが可能になっている。
如何に尤もらしいことを主張しても、選挙には莫大な資金を必要としているのだから、当然、投じるお金と当選者が出て以後の資金調達、そしてそのお金の活用のあり方が重要であって、それらの算盤が弾けなければ実は政党運営は行えないということになる。
日本保守党は、現在の自民党は従来の保守政党の冠を捨て、リベラルな左派政党に近いものに変容したと主張している。それが反移民、反LGBT法、消費税引き下げの主張となるのだが、大濱崎氏が指摘するようにそれらの主張は参政党と重なる部分が多い。
2022年の参院選で旋風を巻き起こした参政党は、保守政党の姿勢を堅持して、候補者も数多く保守的なスタンスの人を擁立し、結果、1名の議席を獲得した。その後、党内での意見対立を経て、現在は支持率の低下と立党時の主要メンバーが相次いで離脱する事態になっており、結果、従来事務局長であった神谷宗幣氏は、中心メンバーの離脱を経て代表に就任している。参政党は元々、神谷氏の主張に賛同したメンバーが立党に参加したものであり、言い換えるなら参政党は神谷氏の政党なのだ。立党時から一貫して神谷氏の主張を党是として、各地で賛同者の呼びかけを行ってきた。
その意味で、参政党のスタンスが変容してきたとは言い難く、現在も地方で行われている神谷氏の主張を聞けば、立党時からブレているという印象は無い。ただ、党運営において意見対立が見られたことが、現在の分裂騒ぎの発端になっているようだ。また、新型コロナのワクチン問題、農薬問題等、一般には受け入れ難い主張も、支持者が減少している要因になっているだろう。
参政党は、神谷氏の人間性に動かされている部分が多く、ご本人は参政党のうねりが拡大することが狙いであり、自分が権力を握ることなど考えていないと言い続けているが、結果的に神谷氏が代表に就かなければならない状況に追い込まれているということは、これまでの戦略に一定の過不足があった為だと分析できるだろう。
本稿のテーマとした参政党と日本保守党の比較において、今の日本保守党に対する有権者の期待感が落胆に変わるという、参政党が辿った道を日本保守党も辿る可能性が高いと考えているのは私だけだろうか?
有権者の多くが参政党や日本保守党に熱狂する理由は、非常に簡単で、現在世界を揺るがしている環境問題、BLM問題、LGBT問題、移民問題は日本も同じで、特に移民問題と環境問題で大きな変遷をしてきたヨーロッパ諸国は、ロシアのウクライナ侵攻、イスラエルのガザ地区侵攻を経て、エネルギー問題と人種問題、宗教問題を複雑に絡めながら、移民政策を問い直される事態に発展している。私はかねてからSNS上で何度も何度も触れているように、ヨーロッパ諸国は移民政策の見直しの時期に入っていると考えている。
欧州と日本が抱える問題
アフリカや中東からの移民であるムスリムは、人種偏見、LGBT等マイノリティを巻き込みながら、移民した先の国でデモをやりムスリムで連帯しているかのような印象を見せながら、自分たちの権利主張を繰り返しているのだ。中には各国の歴史的遺産やキリスト教の関連施設に対して蛮行を繰り返しながら、道を塞いで1日5回の礼拝をやり、自分たちの存在感を示そうとしている。欧州は昨今のリベラルな言説やそれらを支持する政治家の影響で、特にドイツのメルケル首相のごときは移民に寛容で環境問題に前向きなドイツを作り上げることに執心した結果、原発を廃絶し、移民を積極的に受け入れているが、その結果、電力が不足し、電気代は高騰し、ドイツの各地で移民が暴動を繰り返し、ドイツ警察は法令により人種差別的な行動を起こせないため、その皺寄せはドイツ国民自身に向かっている。
欧州各国では、それら人権問題や環境問題を重要視した政策を進めた政治家のお陰で、従来の移民に加え地中海沿岸、東大西洋沿岸から入国した中東や北アフリカからの不法移民が加わり、半ば無法地帯化した国が激増している。
これが、今の欧州の現実だ。
日本人は元来、リベラル志向の部分と保守的な思想の両方を併せ持っている特異な人種と言うべきで、そうでなければ明治維新以後の発展は無かったと言っていい。新しいもの、外から来るものを受け入れるが、日本人としての伝統文化も同時に大切にする国民性は、他国ではちょっと見受けられない。また、他国と陸続きでないにも関わらず、また決して広大な国土を有していないにも関わらず、西洋文化、西洋文明に対して寛容であり、実に上手にそれらを取り込んできた。
しかし、これだけ欧米諸国が移民受け入れの失政を見せられた今、日本が移民に寛容なままでいられるとは到底思えないし、事実、国内で少なくない人々が移民への警戒感が生まれてきているのも事実であって、それが、参政党や日本保守党支持者が生まれている背景だろう。
翻って見るに、国家の歴史の転換点は経済による影響が極めて大きい。
これまでの日本は、日本流とも言える経済発展を遂げてきた背景にある、他文化への寛容さと、他民族への寛容さがあるのは間違いが無い。ところが、西暦2000年頃を境に日本人は経済の低迷に国民自身も、日本という国に自信を失ってきた。
だから、日本人の素性を見つめ直し、日本人の本来あるべき姿とは何か?を語りかける参政党や日本保守党のような、保守的な政党に回帰しているのだ。
そして、もう一つ重要な背景が、日本に真のリベラル政党が生まれていないという点がある。
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