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自由律俳句 #173

【雲の穴に光が集まっている】


見上げた雲に穴が空いていた。
穴はヘンテコな形をしていたけど、
午後の光が集まって、
明るく輝いている。

まるでワープゾーンみたいだ。

高く飛べてあそこを通り抜けられたら、
違う場所に着くかもしれない。

一体、どんな場所だろう。

知らない場所だったから怖いから、
行きたくないと思った。

でも、すぐにこの場所に戻って来れる手段があるなら、
ちょっとだけ行ってみたいとも思った。

想像しながら、穴あき雲の方に歩く。

私にはたった今、翼が生えた。
嬉しくなって、駆け足になる。
足の裏に伝わる地面の感触が、どんどん軽くなって、
このままスピードを上げれば、きっと飛べるだろう。
足の動きを速くして、最後に地面を蹴り上げると、
ふわっと浮いて、空にいる。
そのまま、穴あき雲を目指して飛んだ。
光が集まっているあの場所に行きたい。
翼があるから、高さは怖くなかった。
あっという間に雲のそばまで来て、
振り返っても、飛び始めたあの場所はわからない。
明るい光の中を少しだけ見つめて、
息を止めながら、
光の集まりをくぐった。

そこには…

なんて想像しながら、
私は地面を少しだけ強く蹴って歩いた。


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小島涼太郎
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