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久保君の本の感想

久保君が本を出した。


広告に偽りのない本である。科学エッセイらしく一般相対性理論やフィボナッチ数列の美しさについて語りながら、「危険オブジョイトイ」みたいなギャグを挟み、過去の彼の記憶の扉が開いていく幾分軽やかな前半。まさにワンルームレベルの日常と宇宙レベルの壮大な科学を行き来している。心温まる斬新なエッセイ。福岡伸一さんの帯の通りの内容だった。

恋愛絡みのエピソードで、「適当な相槌を打っていた」久保君があまりに目に浮かびすぎて面白い。それか多分ビー玉みたいな目を動かさずにフリーズしていたんだと思う。久保君が書く文章や研究のキャッチーなイメージに対し、普段の久保君はそんな感じで、今思考止まりましたよね、とかもうここまで酔ったら何も覚えてないでしょう、みたいな瞬間がある(そのことも自覚しているようなエピソードも出てくる)。彼のエッセイは回想を発端にすることが多いのも、そんな感じで、ぐるぐると色々考えてなんか意外と言葉が出てない普段の久保君の思考を、家に帰って原稿の締め切り前に解きほぐしているのだろう。僕はよく「何考えてるかわからない」と言われる人だけど、久保君の「わかりそうでわからない」感じがよく、わかる本になっていると思う(僕の場合は大体本当に何も考えてないというか、正直言って感情がわかない場面であることが多い)。

後半はさまざまな社会情勢や「ある思考を持つ人々」に対しての「思い」が中心になり、シリアスになってくる。ここには久保君のクソ真面目な部分が出ていて、何かを茶化して気持ちを落ち着けることもせず、安易に答えを出して反論することをせず、「考えたけどわからなかった」というスタンスを受け入れる強さが見える。

コロナ禍でコミュニケーションが限られた若者の生活が、思考というファクターでものすごく充実してるように見えてくるのも、面白かったです。まだまだ書くぞという意欲が見えるのでこれからも楽しみです。「ワンルームから宇宙をのぞく」の感想でした。

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