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おもちゃの指輪

ため息で包まれた夜。君がいない事実に少し慣れ、君がいない部屋にも少し慣れた。未練のやめ方を知りたかった。垂れ流した思いを全部なかったことにしたかった。忘れようとすればするほど、思い出は離れなくて。忘れたと思う頃にまた思い出が蘇る。君との思い出は全部が幻で、傷口に破片が突き刺さったまま月日が過ぎていくことを知った。

どうしようもない夜に、どうしようもなくなった2人。恋をはじめたのは2人で、終わらせたのは君の勝手で。ドラマは最終回を待たずして、突然の打ち切りを迎えたのが運命。再生される思い出は美化され、写真に写る君はどんどん美しくなっていく。

無邪気に交わした君との口づけ。君の甘い罠に騙されていたかった。私の赤い線の思惑は君に届かず、絡まった糸は完全に解けるのが運命。他人になった君を、かつては2人と呼ばれていた君を嫌いにはなれなかった。ねえ、もう1度名前を呼んでよって、もうそばにいない君には届かないのがオチ。

好きになるよりも嫌いになる方が難しいだなんて知りたくなかった。大切な人の大切さを失ってから気づくなんてただのバカだよね、ほんと。季節と同じように2人の物語のページをめくっていたかった。永遠の愛を誓ったあの頃の2人にもう戻れないなんて知りたくなかった。

薬指にはめた指輪はガラクタになり、価値のかけらすらない。夢の中で君に溺れ、現実の2人の関係を知って、我に返るの繰り返し。2人で誓った永遠の愛。あの頃の2人はもういない。ため息が幸せを逃がすとよく言うけれど、その程度の幸せはいらないのよ、ごめんね。

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