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昔は読書が恥ずかしいものだと思っていた

今は文章関連の仕事をしているのだけれど、小さい頃は読書が恥ずかしいものだと思っていた。周りの人はみんなはサッカーや野球などのスポーツをしていて、本を読んでいる人はいない。一人だけ教室の隅っこで本を読んでいた友人がいたのだけれど、「お前男のくせに本なんか読むなよ」と笑われていた姿を見て、周りに読書が好きだと言い出せなかった。

学生時代は小説が好きだった。乙一にハマり、伊坂幸太郎や山田悠介にのめり込んでいった。そして、太宰や芥川といった教科書に名が刻まれている人とたちの本を貪るように読んだ。本は自分の知らない世界に連れて行ってくれる。それを友人にも知って欲しかったのだけれど、読書=カッコ悪いという印象を持つ友人たちに読書の魅力を伝えるのはなんだか気が引けた。

小学3年生からサッカーを始めて、高校生になってプロになれないと絶望して辞めた。その間に出会った人の中には読書が好きな人はいなかった。本を読んでいる人と仲良くなりたかった。でも、共通の趣味を持つ人との出会いは、自分が何が好きかを伝える必要がある。

サッカーを辞めてからアルバイトをして、古本屋さんで本を購入していた。大学生になってからは吉本ばななや江國香織にハマった。アルバイトで仲良くなった友人に村上春樹を勧められたので、当時に実写化された「ノルウェイの森」を読んだのだけれど、あまりの性描写の多さにそれ以降読めなくなった。高校生に生々しい性描写はきつい。その後、村上春樹の作品が面白いと知ったのは20代後半だった。

その後にマクドナルドでマネージャーになったので、役にたつ知識を取り入れたいと自己啓発本にハマった。けれど、どの本を読んでも「最後は自分次第」という同じ文言で締められていたので、興醒めして読むのを辞めた。人生は自分次第である。そんな周知の事実と出会うまでにたくさんの時間を費やした。今になって本が好きなら好きだと言えば良かったと後悔している。そうすればきっと好きな本について語り合える友人ができたに違いない。

社会人になってから友人と居酒屋に行った。文章を書く仕事をすることになったと報告すると、お前ずっとサッカー少年やったやんけ。本を読んでるのなんか一回も見たことないわ」と言われた。やっぱりこいつには言わなくて良かったと思った。理解されないものが確かに存在する。でも、それが分かっただけでも御の字なのかもしれない。わかる人に伝わればそれでいいんだと思った。

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