相手の言葉の裏にある背景を想像することが、本当のやさしさなんだと思う

いつだって、人間は何かを抱えている。不安のない人間なんて、どこにもいない。「不安がない」と嘆いている人間だって、不安がないその事実に不安を抱えている。もしくは人には言えない不安を抱え、一人で戦っているのかもしれない。またいま朗らかに笑っている人にも、辛かった過去があるかもしれないし、泣いて疲れている人にも、楽しくて笑いが絶えなかった過去があるかもしれない。

大切なのは相手の背景を想像すること。相手が発した言葉には、すべて意味がある。だからこそ言葉の裏に隠された本音を見つけられる人間でありたい。

嫌味を放った場合は、そこにコンプレックスを抱えているのかもしれない。厳しい言葉を放った場合は、それを自分に言い聞かせてきたのかもしれない。楽しいとたくさん連呼する場合は、楽しさがいつかなくなると覚悟しているのかもしれない。いつだって「Why」と考える姿勢を持てる人。そして、伝えなくてはならない言葉と伝えなくていい言葉をうまく選別できる人が本当にやさしい人なんだと思う。

次に相手を受け入れる姿勢を見せること。なんだって話せる存在。人は安心を欲しがり、なんでも気兼ねなく話せる存在をいつでも欲している。自分を受け入れてくれなさそうな人に、人は安心感を見出せない。むしろ壁を作って、そこには目に見えない透明な壁ができてしまう。だからこそ、相手の話をきちんと聞いて、適切な言葉選びで、相手の存在を尊重することが大切なのだ。

相手の本音を引き出したいのであれば、それ相応の努力が必要だ。相手の本音は簡単に引き出せない。自分がまず本音を打ち明けなければ、相手も本音を打ち明けないものだ。相手の本音をなかなか見ることができないと嘆く人は、まず自分が本音を打ち明けているかどうかを確認してほしい。本音と言ってもすべてを打ち明ける必要はなくて、そこには線引きがあってもいいとは思う。ただ相手の本音を引き出したいと思ったときは、その分の本音を相手に見せるってことだけは頭に入れておいてほしい。

また恋人関係になって、相手の隠れていた本音が見えたと言って、お別れをするパターンが多いのは、お付き合いをする男女の中に気遣いが発生しているためだ。これは好かれたい。嫌われたくないといった気持ちが含まれている。ところがお付き合いをした途端に、安心したのか、本音を出してくるのだ。ここを見極めるにはかなりの観察力が必要となる。

友達に見せる顔と恋人に見せる顔は絶対にちがう。恋人には自分の弱い部分も見せられる。友達にも弱い部分を見せられるかもしれないけれど、恋人の方が深い部分まで見せられる人の方が大半だろう。それはこの人なら受け入れてくれるかもと、期待を抱いてしまうためだ。そこに乖離性が生まれた途端に、破局の道を辿る羽目になり、その壁を乗り越えた途端に強固な絆が生まれる。

ただお付き合いをする前に本音を見せるなんて、基本的には難しい話だ。さて、ここ1つ考えてみてほしい。あなたには深い部分の本音を見せられる人が一体何人いるだろうか。きっとそんなに多くはいないはずだ。誰にでも見せることができない本音。だからこそ、本音を見せられる人と出会った場合は、大切にするべきだし、それが異性であれば、距離感を間違えないよう適切な距離で接するべきだ。

また男女の友達関係の場合は、本音で話せると思っている人も中にはいるけれど、そこにも目には見えない思いやりという遠慮が発生しているのだ。人間には相手に見せたくない部分があって、親しさの深さによって見せるかどうかを判断している。男女間の本当の意味での本音は、お付き合いをしてから見せる人が大半だ。お付き合いをする前としてからの態度が変わってしまうのも無理はない。相手が本音を見せてくれない事実を、相手のせいにするってんならもう少し自分を振り返って反省した方がいいと思う。

相手の背景を想像すること。相手が嫌味を言ってきた場合は、つい感情的になる場合もある。それは人間には言われたくない言葉があるためだ。核心を突かれた言葉には思わず動揺してしまうし、怒りが芽生えてしまうのも無理はない。だから、相手の嫌な言葉によって、自分に蓋をする必要はないと思う。その一方で、相手と今後もお付き合いを続ける意志があるのであれば、一歩立ち止まって、相手の言葉の裏にある背景を想像してみてほしい。

相手の言葉の裏には、話を聞いてもらいたいって気持ちもあって、そんなときはこちらが大人になって、相手の話を聞いてみる。相手の不器用な部分を愛せるようになれば、相手との距離がぐっと縮まるチャンスにだってなるのだ。

自分にとって居心地のいい関係性を作ること。それは自分に蓋をするのではなく、いいことも悪いことも話せる関係性を作ることである。ときには我慢も必要だけれど、我慢しすぎる必要はない。この塩梅がとても難しいし、僕自身もなんども失敗しているから、今後も勉強あるのみだなぁって思う。でも、どんなときも相手の言葉の裏にある背景を想像する努力だけはやめないでいたい。