多様性ってむずかしい ー映画『こちらあみ子』をみる
映画『こちらあみ子』をみる。
☆☆☆★★一回みて満足です
ネタバレ注意
あみ子というちょっと変わった女の子のはなし。
主人公の女の子が奈良美智さんの作品の女の子みたい。
説明はこんな感じ。
わりとしんどい話です。
あみ子は悪気はないんだけど、いわゆる空気がよめない。
お父さんと、義理の母親と、お兄ちゃんと。
周囲の人たちが次第に疲弊していく。
個性個性ってよくいうけれど
たしかにあみ子ちゃんの言動はディスプレイ越しでもみていて疲れます。
のんちゃん主演の『さかなのこ』を思い出しました。
さかなクンの半生が元の作品ですよね。
さかなクンの場合は、ちいさい頃から魚好きというふうに
変わっているけどとても分かりやすい特徴があって
家庭が変化しても母親がいつも側にいて良き理解者でいてくれる。
学生時代も周囲から煙たがれながらも、地元ヤンキー含め
好きな魚をとおして仲良くなっていく。
実際はもっと大変だったんだろうけど
『さかなのこ』はハッピーエンドな形でとても映画っぽい。
一方で、『こちらあみ子』は現実的。
あみ子ちゃんは変わっているけど作品のなかでこれが得意!ってものもない。
どんどんどんどん周りが疲弊していって、孤立していって、
ラストまで報われることがない。
あみ子ちゃんを支えているのは想像上の友だちと
まわりの自然だけ。
『フォレスト・ガンプ』もちょっと変わった男の子が
時代の流れに乗ってどんどん大活躍していく話だったけど
『あみ子』はその正反対。
だけど、報われない、救いもない感じがわりとフツーのリアル感があって
モヤッとするけど「そういうこともあるよね」とも思える。
いま『残酷すぎる成功法則』を読んでいて
幸福とは何か?というテーマのなかで
フランクル著『夜と霧』が例に挙げられている。
ユダヤ人精神分析学者のナチス強制収容所体験の話なんだけど
そのなかで、離れ離れになった妻のことを四六時中著者は案じている。
周りは希望を失い自ら命を絶つ者もいるなかで
著者はなにがあっても妻を支えなければならないと必死に生きる選択をとり続ける。
このエピソードを通して『残酷すぎる成功法則』の著者は
幸福とは客観的に測るものではない。
あくまで個人的なものであり、個人が自分の理想のストーリーに即している限り幸福は感じられる。
そんなことを書いている。
わりとこの箇所が好き。
あくまで幸福とは主観的なものなのだ。
『あみ子』の話に戻って、ラストに客観的には辛い状況にながらも
あみ子ちゃんは最後に元気な声で返事をしていた。
彼女がとくに落ち込むこともなくカラッとしている様子で、みていてなんだかホッとした。
多様性って難しいですね。
1時間40分の映画なんだけど
大きな展開がなく淡々とストーリーが進んでいって
まるで3時間の作品をみている感じでしたよ。
優しくて頼りげないお父さん役の井浦新氏。
めちゃくちゃ格好いいのにこの映画ではハンサムオーラを封印して役柄に照っしてらっしゃる。
井浦氏というと映画『ピンポン』での内向的な青年役そしてドラマ『リッチマン、プアウーマン』での超絶ハンサム役の印象がつよい。
ARATAから井浦新に改名したきっかけが三島由紀夫を演じることになって、ってエピソードもかっこいい。
めちゃくちゃいい役者さんだなあと感動しました。
僕が超超超絶大好きな『南極料理人』と『キツツキと雨』の、沖田修一監督の作品。『さかなのこ』自体はとにかくのんさんの魅力が全開で表現されていたなって印象が濃い。一時期のんさんはメディアにあまり出なかったけど、その間が本当にもったいない。
もう大好きな大好きすぎる作品。南極という非現実空間でひたすらのほほんとした生活が描かれてます。極限の寒さのなかの日常がじんわりあたたかい。
こちらも最高に好き。役所広司さんって国宝級の役者さんだなって思いました。地方の職人さんの頑なさとひょうきんさ、ときどきホロっとする純粋さにグッとくる。
ボリュームすごくて面白い。もう1週間以上ちびちび読んで楽しんでます。海賊は公平な組織だった。ワルなやつほど出世する。などなど常識を覆すファクトがおもしろい。
収容所での過酷な労働のなかでみた夕焼けのうつくしさ。生きているかさえわからない家族と想像のなかで話し続けることによって気づいたこと。20年前によんで上の二点を今でも覚えてます。また読みかえしたい。
神ドラマっていわれてますね。出演陣が豪華。元ネタがスティーブ・ジョブス増し増し。アップル最高!iPhone最高!の時代が懐かしい。この作品の井浦新さん、いちいちハンサムすぎてかなりインパクトでした。
井浦さんが内向的でナイーブな役柄でした。当時ノリにノっていた窪塚洋介氏の存在感すごくてハジけてましたね。