亜麻色の髪の乙女(La Fille aux Cheveux de Lin) 楽曲分析
今回はドビュッシー(1862~1918)の代表作『亜麻色の髪の乙女(La Fille aux Cheveux de Lin)』の楽曲分析を行います。ドビュッシーのピアノ曲の中でも『月の光(Clair de Lune)』や『2つのアラベスク(Deux Arabesques)』などと並び彼の代表作といえる作品です。いったいどのような構造をしているのか、さっそく見ていきましょう。
1 拍子、調、構造
3/4拍子、調は変ト長調
AーBーAの3部形式で構成されています。
元々は前奏曲集第1巻の8曲目として収録されていた曲で、彼の前奏曲全体でも高い知名度を持つ曲です。他の前奏曲と違って明確な調性、非常に簡潔な構成により難曲が多いドビュッシーの作品の中でも、技術面においては簡単な部類に入ります。
2 解説
① A 0:00~
"Très calme et doucement expressif"の指示があります。これは「とても落ち着いて、かつ優しく表情豊かに」という意味です。テンポも♩=66の指定があります。また”sans rigueur(厳格さを無くして)”との指示もあります。
まず1小節目からこの曲の主題となるメロディが現れます。主題はIの和音(G♭)とVIの和音(E♭m)を分散和音(アルペジオ)で奏でる非常にシンプルなものです。6小節目の3拍目で一旦変ホ長調で終止すると、再び主要主題(8小節目から)が現れますが、和声には変化が付けられていて単調さを避けています。11小節目で"cédez---Mouvt"という指示がありますが、これは「テンポを落として」という意味でしょう。
ちなみに"mouvt"とはフランス語の"mouvement"の略です。
Aの14小節目は再現されたAでも現れます。15小節目では”très peu(ごくわずかに)”クレッシェンドしながら、16小節目からはAの3小節目の動機を用いてAの部分を締めくくります。
② B 1:03~
Bの部分は"Un peu animé(少し活気を持って)"の指示のもと、変ホ長調で開始します。Bの1小節目のフレーズをオクターヴ上げて2回繰り返し、3小節目の3拍目で突如変ト長調のIVの和音(C♭)が現れ、原調にもどる準備をします。5小節目ではBの4小節目のフレーズをオクターヴ下にして奏でられ再び"cédez---Mouvt"の指示のもと6小節目からはAの1小節目の動機を発展させたフレーズが現れます。ここでは”sans lourdeur(重々しくならずに)”の指示があります。音が低いのでこの部分を奏でる際は意識していないと重く聞こえがちです。注意して弾くべきでしょう。
Bの9小節目では再び"cédez"の指示がありますが、今回は"au mouvt"の指示があります。これは「だんだん遅くして、元のテンポへ」という意味でしょう。
③ A 1:35~
2回目のAはIVの和音(C♭)が鳴らされ主要主題が再び現れます。ここでは"très doux(とても柔らかく)"の指示のもと曲は進みます。ここでも和声は変えられていますね。Aの6小節目から最初のAの14小節目のフレーズが再び現れます。ここでは”Murmuré et en retenant peu à peu”の指示があり、これは「囁くように、そして少しずつ遅くしていって」という意味で徐々にテンポを落として、8小節目からは"perdendo(だんだんゆっくり、きえるように)"の指示のもと極限まで音量を落として、pp(ピアニシッモ。かなり弱く)で変ト長調の主和音を鳴らして曲を締めくくります。
3 総括
以上となります。いかがでしたか?
以前ラヴェルの『亡き王女のためのパヴァーヌ』を楽曲分析した時も思いましたが、ドビュッシーも楽譜にかなり細かい指示を残しているなと改めて感じました。これらを解読するのにも時間がかかりますし、またその解釈によって演奏がガラリと変わってしまうものだと思います。
では、ご覧いただきありがとうございました。
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