男飯について〜season.4似非松茸ごはん〜
僕は料理が好きである。しかし、一切手の込んだ料理は作らない。簡単かつ美味い。カロリーや見た目なんか気にしないで、ただただ美味いと思えるものを作る。
世に言う男飯というヤツである。これまで試行錯誤、偶然の奇跡、あらゆることを乗り越えて生み出した至高の一皿の数々を定期的に紹介していきたい。
season4「似非松茸ごはん」
最近のおうち時間のお供。それは、ソロキャンプ飯動画である。空前のキャンプブームが到来し、「キャンプ飯」とYouTubeで検索すれば、センスが良くめちゃくちゃ美味しそうな料理動画がわんさか出るようになった。
会社の先輩方と、落ち着いたらコテージを借りてみんなで渓流釣りとBBQをやろうという話をしてから、僕の中のキャンプ欲に火がついた。とは言っても、何のスキルもないし、今キャンプ場に行っても逆に密な感じになりそうなので、プロの動画を見ながら、日々溜飲を下げている。
また、動画だけでは飽き足らず、登山メシがふんだんに登場する漫画をAmazonで大人買いした。その漫画の中である調理器具が登場していた。
その調理器具とは「メスティン」である。メスティンとは、スウェーデン発祥のアルミでできた長方形の小型鍋的なものである。これ1つで炊飯から焼き料理、煮込みまでなんでもできてしまう。
雰囲気料理研究家の僕は、これさえあれば家でそれっぽいキャンプ飯が作れるぞと確信し、近所の雑貨屋で即購入した。
僕が購入したのは、メスティンラージというもので、お米でいくと3合炊けるサイズ感である。今後BBQ計画が実現した際にも使えるようにラージサイズをチョイスした。
購入後、ウキウキで即開封した。買ったら最初にご飯を炊くと決めていた。いわゆる飯盒炊爨というヤツである。
元来、ウチの両親がキャンプ好きだったので、 小さい頃には休みがあるとしょっちゅうキャンプに連れ出されていた。その時に飯盒で炊いたご飯を食べていたのだが、まぁこれがとにかく美味い。どんな店でどんなおかずと共に食べたご飯よりも、キャンプ場で飯盒で炊いた白飯が1番美味い。
そんな原体験があるので、あの頃の感動を再現すべく、マイクッカーメスティンちゃんのデビュー戦は、ご飯を炊くというシンプルな調理にすることにした。
ただ、これまでのキャンプ体験は全て食べる専門だったので、炊き方の加減がよく分からない。我が家にはバーミキュラのライスポットがあるので、普段の炊飯もボタン一つで完了する。昔、母親が「飯盒は火加減とタイミングが難しい」と言っていたことを思い出し、例によってサイト巡回予習を始めた。
あらゆるサイトの情報を統合し、イメージトレーニングを積んだ。そんな最中、とあるサイトで「松茸の味お吸い物炊き込みご飯」を見つけてしまった。
想像しただけで美味そうな響きに魅了され、急遽スーパーへ向かう。松茸の味お吸い物とエリンギを購入し「似非松茸ごはん」を作ることに決めた。時は6月。初夏に秋の味覚の王様を召喚してやろうじゃないかと息巻いて調理をスタートした。
とりあえずエリンギを松茸っぽいサイズに刻む。余っていた小松菜も切ってぶち込む。味付けは松茸の味お吸い物と醤油と酒。実にシンプルなラインナップである。
米を2合セットし、ほぼ同量の水と食材と調味料を入れて火にかける。火加減とタイミングは予習内容に忠実に。すると間もなく、部屋中に松茸の匂いが充満した。その匂いを嗅ぎ、食欲は最高潮になる。逸る気持ちを抑えながら、とにかく待った。
そして全工程が終了。いよいよご対面というタイミングで事件が起こる。
困ったことに蓋が開かない…。(溜まった涙の水圧だ。ウンとかスンとか言ってくれ。どうした、おいまさか。マイクッカー冗談じゃない!今更俺1人置いて…。)というラフメイカー的な駆け引きを続け、なんとかアツアツの蓋を引き剥がした。
開いた瞬間に立ち登る松茸臭の蒸気。早速茶碗によそい実食する。少し水気が多かったが、しっかり松茸風の味がするし、エリンギによる食感の再現も為されていた。
こうして僕は季節を早送りし、自宅で秋の味にたどり着いたのである。
様々な苦労を経て、たどり着いたレシピを以下に公開する。
材料:米 2合、水 適量、松茸の味お吸い物の素 2袋、エリンギ 好きな量、小松菜 好きな量、醤油 適量、だしの素 少し、酒 適量
米はといだ後、事前に30分ほど水に浸しておく。浸している間にエリンギと小松菜を切っておく。30分経ったら、メスティンに全ての材料をぶち込み、蓋をして強火にかける。吹きこぼれてきたら、火を弱火にして、そこから更に10分程度火にかける。10分経ったら、火を止めてメスティンの周りに手拭いを巻いて15分ほど蒸らす。15分経ったら、アツアツの蓋を引き剥がし、茶碗に盛って完成。
飯盒炊爨は、火加減や水の量を調整することで、オンリーワンのご飯が出来上がる。いつかどこかで披露できる日を待ちつつ、今後も定期的に探求していきたい。
ぜひお試しあれ。(season5へ続く)