お茶、はじめよ。#2 お尻をみせないでね


2度目のお稽古にむけて、どんなところから始めればいいのやら、どぎまぎしながら平日を過ごしていた。

はじめはとりあえず見学の気持ちでよかったけれど、いざ2回目でいきなりあのお点前の一連の動作をみなさんの前で披露するのかな?ととにかかう不安だらけだ。

そうだ、Youtubeがあるじゃん。動画で気になることが見られる時代に生まれてよかった。「表千家 お茶 やり方」と調べて、出てきた主観での解説映像などを何度も再生してみる。

うーん、なるほど、わからん。

おそるおそる茶道教室の先輩に聞いてみると、どうやら最初はお茶を点てずに、お客さん役に徹するらしい。

焦らず、安心してくださいねと言われた。たしかにそうだよね。肩の力が抜けると同時にちょっと残念な気持ちになった。はやく覚えてして点てる側にまわりたいなあ。

そうして迎えた2回目は雲ひとつない、よく晴れた日だった。お客さん役の方の動画を何度も見たからきっと大丈夫だ。

カラカラカラと引き戸を開けて靴を脱いで揃える。

茶室に先週はなかった日光がはいってきている。くもりのときのすこし暗い茶室はお茶に向き合っている感じがしたけど、日光がはいってくると外と繋がっている感じがするなあ。

うん、うまくやろうやろうっていう気持ちは置いておいて、ここで何を感じて帰れるのかに集中すればいいんじゃないかな。先生の茶室は落ち着いていて、そんな気持ちにさせてくれた。

あ、今日の花入れは宙にういている。名前を聞いてみると椿らしい。僕の知っている椿よりも色がさっぱりしていて、年季の入った木製の花入れとのコントラストがよかった。おじいちゃんと孫が散歩しているときの微笑ましさに似ている。

目を掛け軸にやる。今回は絵も何もない。知らない名前と文字がいくつか書いてあった。先生に聞いてみるとチャカブキを京都でした際の結果だそうだ。俺は全部当てたんだよ、とすこしうれしそうだった。

茶かぶきは利き酒と同じで、茶の特質を当てるゲーム(遊び)です茶歌舞伎や茶香服とも書きますが、闘茶とも言います。
和束町HPより

どうやらお茶だけでなくお香も同じように遊ぶ風習があるらしい。お茶を当て合いするなんて、平安貴族しかしてないんだと思った。しかしお茶の先生ってちゃんとあてるからすごいよね。なんだこの掛け軸、先生の自慢じゃないかと思ったけど、お茶に詳しい先生に習えてるんだなあとすこし安心する。

よく考えたらお茶碗や帛紗なども、どんなものを持っているのかの見せ合いみたいなところあるし、そういうもんなのかなあ。

この日は教室の先輩に横についてもらい、かたっぱしからお茶の楽しみ方を教えてもらった。茶道のマンツーマン指導である。茶かぶきのお話も横からスッと教えてくださるのでなんとも心強い。

ただお稽古をこなすだけではなく、ほんとうはお茶の製造元をはじめとして、お茶の名前、お菓子の製造元(〇〇製)、お菓子の名前とかなんでも聞いていいんだって。だから掛け軸、茶花、茶道具、羽の鳥名、帛紗、なんでも話題にしてもいいんだよとおそわった。

そうなのか!と正直に影響を受けるタイプのわたしは、質問した結果、すでに書いた掛け軸や茶花のことを知っちゃったのだけど。

*今日の初めて知ったこと
・道具にも格があって、格が高いものは右手で送ること。
・御三家ならぬ、御三器があること。(茶入れ・ 茶杓 ちゃしゃく ・茶入れ袋(仕服))
 ※だから茶入れは格式が高いから右手、茶灼や茶入れは左手だそう。
・畳のへりを踏んじゃいけない理由は昔家紋が入っていたから。家紋踏んだらめちゃくちゃ怒られそうだもんな。
・とにかくお尻を見せない美意識をもつこと。(お尻はみせてはよくないものらしい)
・そのお尻よりも格が低いのが「建水」
 お点前中にお湯や水を捨てるための器なんだけど、あれはもうお尻より見せちゃいけないものらしい。
・遠くのものは5時、近くのものは3時、左手は9時に添える。
・道具は自分と畳のヘリの真ん中に置く。
出典:茶道教室の先輩

型だけ教わるよりも、格のお話だったり歴史を踏まえておぼえると全然間違わなくなる。とにかくみなさんにお尻を見せないように歩くので精一杯なのだけど。

まだお点前デビューは遠く、みなさんのお点前の客人としての振る舞いを必死におぼえるばかり。いつからお点前のお稽古がはじまることやら。

先生「最初は細かいことはいいんだって思ってるんだよ。はじめたばっかりだからさ。最初から細かいことばかりだといやになっちゃうでしょ。」
と帰り際に言ってくれた。

他の人には厳しくいうけれど、まだやさしい理由がわかった。この言葉、大事にしておきたいな。

帰り道には自由が丘の住宅街に一本の桜がひっそりと咲いていたのが目についた。日本橋を散歩していると、都会の真ん中だけどおちついた桜はいるし、花壇には色とりどりのチューリップやパンジーが咲いていた。おざなりにしていた感覚がすこし戻ってきている気がする。

お花に気を配れるようになるのって嬉しいなあ。

毎週花入れに入っているお花が違って、生徒さんはそれを楽しみにしているという事実があるだけでなんだか通えそうな気がしています。

では、また来週。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?