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虹の彼方に 第7話 和解

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 ふたりの表情が一瞬のうちに険しくなる。
 得能くんは視線を落とし、ワタルさんの目つきは鋭くなった。

 そうさせたのはあたしだ。
 最低だ。そんなこと思っていないのに……。
 心が自己嫌悪で一杯になる。

「確かにそのとおりだな。昨日のことは西田さんが怒って当然だ。それは謝るよ。でもそれはおれひとりのことで、ワタルたちとは関係ない。おれの態度だけで、仲間のことまで判断するのはやめてくれないか」
 得能くんの声は必死で感情を抑えている。でも握りしめた拳がわずかに震えている。

 ワタルさんたちが得能くんに無理矢理バンド活動をさせているんじゃない。
 得能くんの考えとやり方で参加し、仲間は受け入れ、見守っているだけだ。
 それはさっきのワタルさんとのやりとりで、十分わかっている。見知らぬ人物なのに尊敬し始めたのは、そういう事実を聞いたからなのに。

 ――あれはなんでも言いすぎだ。

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4,125字
全部で10話ほどですが、1話は短めです。原稿用紙100枚を目処に書いた中編小説を改稿したものです。文字数換算すると、3万字強になります。

メンバーシップ特典マガジンと同じ内容ですが、会員以外の方に単独で販売するように設定しようとしたところ、うまくいかなかったので、改めて単独の…

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