虹の彼方に 第2話 小さな嫉妬心
そのときあたしは、得能くんのノートをめくりながらいろいろなことを考えていた。
水野先生からのミッションはクリアできなかったけど、どうでもいい。あれは学級委員じゃなくて教師の仕事だもの。
それよりも気になったのは、得能くんが帰った理由だ。
学校の授業より、もっと大切なことってなんだろう。先週も先々週もサボったのは、それが原因?
何が得能くんをそこまで駆り立てるのかな。
考えを巡らせているうちに、あたしは得能くんの大切な用が気になってきた。
ふと窓の外を見ると、野球部の姿が目に入った。
地区予選優勝を目標に一生懸命練習している。もちろん遊びたいときだってあるだろう。暑い最中の練習なんて、だれだって嫌だ。それでも練習に打ち込むのは、甲子園に行きたいからだ。
結局みんな同じだ。目標があるなら、ほかのものを我慢するのが当たり前。やりたいことすべてができるわけじゃない。
あたしだっていろんなことを犠牲にしている。それなのに得能くんは、特進コースに在籍していることも忘れて、好きなことを優先させている。
この時期に、大学に合格するよりも大切な何かを持っているってことなの?
うらやましいな。
ふと、そんな感情がわいてくる。
うらやましい? 遊んでいても成績がいいことが? 受験の時期でも打ち込めるものを持っているってことが?
あたしの中で小さな嫉妬心が芽生える。
サボっていても成績がいい得能くん。生まれつき頭の出来がちがうんだ。いくらがんばってもあと少し目標に届かないあたしとちがい、ちょっと勉強するだけで抜群の成績を取っている。
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