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500系のぞみ復活!500系新幹線が本気を出して、新大阪ー博多間を2時間33分で爆走!

クラブツーリズム鉄道部が主催するツアーに参加した。
500系新幹線の団体臨時列車はほぼ毎年開催されている。
今回は往年の爆走ぶりを体験するツアーとなった。

新大阪駅20番線。今回乗車するのは団体681号である。

500系新幹線の概要と歴史

ここで500系新幹線を振り返っておこう。
※ 鉄道ダイヤ情報No.464 特集:西日本の新幹線から一部を引用し作成

国鉄の分割民営化によってJR西日本の路線となった山陽新幹線は、東海道新幹線と同様、飛行機との熾烈なシェア争いを繰り広げていた。新大阪ー東京間の当時の所要時間は3時間を切り互角に渡り合っていたのに対して、新大阪ー博多間は距離にして553.6㎞であり、福岡空港が非常に便利な位置にあったため、山陽新幹線の当時の最高時速230㎞/hでは太刀打ちできない状況にあった。
1987年4月のJR西日本への分割民営後、最高時速300㎞/h超での営業運転を目指した車両の開発が進められる。その試験車両として500系900番台(通称:WIN350)が登場する。1992年のことである。この車両を通して高速運転に向けた様々な実験が試みられた。その一つが高出力・軽量化であり、全車両にモーターを搭載したものの、アルミハニカム呼ばれる技術を採用することで、「のぞみ」として使用されて間もない300系車両と同等にまで抑えることができた。
一方で、高速運転に際して避けられないのが「トンネルドン」と呼ばれるトンネル微気圧対策であり、この課題を解決すべく先頭車両を長さ15メートルのロングノーズ(先端を尖らせる)とした。「イケメン」新幹線車両がここに誕生するのである。
さらに、カラーリングにも一工夫がなされている。それまでの新幹線といえば、「白と青」がセオリーであったが、それを覆す濃淡グレーとあの配色は車体形状と相まって新幹線の新時代を強烈に印象付けることに成功した。
1996年1月に量産先行車が完成し、1年にわたる走行試験の末、翌1997年3月のダイヤ改正でまずは山陽新幹線のみを走る「のぞみ」としてデビューする。時速300キロで走る陸上交通は当時としては未知の領域であった。1日1往復でスタートし、増備車両の登場とともに運転本数を増やしていく。同年11月には東海道新幹線への乗り入れを果たす。ロングノーズの車両は多くの人々の注目を集めることとなった。
しかしながら、最高速度を追求するあまり弱点も多く、座席定員数が同時期にデビューした700系などと異なり、代替車両となる場合には不都合も称したとされている。現在、東海道新幹線では全車両がN700系で統一されているが、2007年以降、500系は活躍の場を徐々に減らしていくこととなり、2010年に「のぞみ」号としての運用を終えることとなった。登場からわずか13年の活躍であった。
500系は2008年以降、山陽新幹線で第二の人生をスタートさせる。N700系の登場により、同系は山陽新幹線でも500系とおなじ時速300キロ運転が可能となったため、高速運転に支障とされた0系や100系を置き換えることとなった。これら置き換え車両として500系に白羽の矢が立ったのである。
編成を16両から8両に短縮し、座席のリニューアル、機器の更新などが実施された。なお、最高速度は285キロに改造されている。
「のぞみ」としての役割は短命であったが、山陽新幹線の「こだま」号として今も毎日走り続けて早15年が経過しようとしている。外観は今も変わることなく、500系を見かければ、老若男女問わず、写真に収める光景は変わっていない。近年はTVアニメやキャラクターとのコラボも実現しており、さながら観光新幹線の一面を有している。
8両編成6本がにまで数を減らしてしまったが、もうしばらくは活躍を続けるものと思われる。

(1)概要

当日は臨時のさくら号のダイヤを基本に運行された。
使用されるのはもちろん500系であるが、この日はV9編成が充当された。
列車は11:42に20番線に入線した。筆者は3号車に乗り込む。
新大阪駅を11:47の定刻に発車した。
停車駅は新神戸、岡山、広島、小倉、博多、博多南と停車駅も極力、のぞみ号に近い形がとられた。現在の500系ではありえない運行スタイルである。
各駅ではいわゆる運転停車と呼ばれ、列車は停車するものの、ドアは開かないものであった。何はともあれ、のぞみ号である。通常の団体臨時列車であれば、停車時間を長く取るのが常道であるが、今回は最速で移動することが目的なのである。

定刻11:42分に入線
今回は3号車に乗車
車内。登場時とほぼ変わらない。

(2)新大阪11:47→新神戸11:59

次の新神戸までは大阪・神戸の都市部や郊外住宅地を走行するため、定期列車と同様に速度を落としての運転となるが、山陽新幹線最初のトンネル「六甲トンネル」に入ると、一気にスピードが上昇する。それでもこの区間では275km/hが上限となる。六甲トンネルを約7分ほど走行して新神戸駅に到着する。
新神戸に到着したもののドアは開かない。すぐに発車する。同駅周辺は六甲山系を貫くように走っており、新神戸駅はトンネルに挟まれた特殊な構造である。発車してすぐ「神戸トンネル」に入る。

武庫川を渡る。
新神戸駅停車中。ホームがカーブしているため、このように写真に収めると斜めになってしまう。
新神戸駅を発車。

(3)通過運転の始まり 新神戸12:00→岡山12:32

500系新幹線にとっては久々の通過運転が始まる。次の停車駅は岡山。
西明石12:07、姫路12:14、相生12:18の3駅を通過することになる。
神戸トンネルに続き、須磨トンネルを過ぎると神戸市西区から明石市へと進み、西明石駅を通過する。275km/h運転が続き、明石市から加古川市の臨海部を走行する。
姫路貨物駅が見えてみたところでスピードが上がりはじめ、いよいよここからが本領発揮となる。285km/h近傍まで上がると、速度を維持したまま姫路駅を通過。最高時速は285km/hに抑えられたものの、往年の300km/h運転を彷彿とさせる走りである。姫路で先に新大阪駅を発車したこだま849号(ハローキティ新幹線)を追い越した。https://twitter.com/ct_tetsudou/status/1703250284687020100?t=D9VY6YLHVMWMR-mhqYfKsw&s=19

https://www.instagram.com/p/CxRzAwivmsR/?igshid=MzRlODBiNWFlZA

相生駅をも高速で通過し、次の岡山までの区間で最高時速285km/hで走行した。また、運転手さんから最高時速で走行している旨の放送が行われた。通常の運行ではあり得ない特別なものとなった。

参加者に配布された記念乗車証
本日の昼食1
ハローキティ新幹線が描かれた可愛らしいお弁当

(4)500系新幹線は西へ 岡山12:33→広島13:11

列車はのぞみ号である。新倉敷から東広島までの5駅を通過する。
山陽新幹線は1972年に新大阪ー岡山間、75年に岡山ー博多間が開業しているが、岡山から西は直線で建設されているためトンネルの数が異常に多い路線である。岡山から博多にかけて210のトンネルが存在し、次の新倉敷駅まで25kmのうち、約10kmがトンネル区間である。新倉敷駅を通過し、次の福山までも半分がトンネル区間に当たる。12:41
福山城が右手に見えてきたところで広島県最初の駅・福山12:48を通過し、新尾道12:52、三原12:55と順調に通過する。並行する在来線・山陽本線は山間部を縫うように走っていることとは対照的である。新尾道と東広島駅13:03は在来線との接続がない新幹線単独駅である。
安芸トンネル、府中トンネルを抜けると広島の街並みが見えてきた。広島貨物ターナミナル、マツダスタジアムを仰ぎ見て広島駅に到着した。岡山駅からわずか38分である。速い!

福山駅を順調に通過
広島駅が近づいてきた

(5)最高速度で広大な山口県を超え北九州へ 広島13:12→小倉14:01

広島駅を出発し、太田川を越えた辺りから速度を上げ、己斐トンネルへと入る。一瞬だけ宮島が見えたかと思うと大小のトンネルを超え山口県に入っていることに気づき、新岩国を通過する。
新岩国は岩国市の中心から離れた山間に位置しており、直線区間でもあるため285km/hで通過する。新岩国ではこだま847号を追い越した。こちらは通常の500系新幹線であった。

新岩国駅を通過。新大阪駅を10:37に発車したこだま847号を追い越す。

新欽明路トンネルを抜けると周南市へと進む。下松の工場群が見えると列車は徐々にスピードを落とし始める。次の徳山駅は線路が大きくカーブしており、通過する新幹線でも185km/h前後に減速する。カーブする徳山駅を通過する際には瀬戸内海を見ることができた。

徳山駅を減速しながら通過した。

三箇所のトンネルを超えると、一瞬、街が開け防府市内を走行する。佐波川を渡り、山陽自動車道を跨くと、第1、第2赤岸トンネルを出たところで新山口駅を通過する。直線区間が続き速度を落とすことなく走り続ける。

新山口駅の転車台
新山口駅を通過

新山口を通過した直後に新大阪行きのこだまとすれ違ったが、何と500系新幹線であった。難読駅の一つ厚狭(あさ)を通過し、山口県最後の駅・新下関を通過するとそのまま新関門トンネルに入る。

厚狭駅を通過

新関門トンネルはおよそ18kmあり、このトンネルで関門海峡を越え福岡県に上陸する。このトンネル内で東京から1,000キロの地点を通過する。トンネル内には1000キロポストがあるとの放送があった。トンネルを出ると北九州の工場群が見え小倉に到着する。

(6)ラストスパート 小倉14:02→博多14:20

小倉を出発して右手には北九州工業地帯が見え、その後左へ緩やかにカーブした後、北九州トンネルに入る。

小倉駅を出発して北九州都市高速と並走する

トンネルを出た先に、北九州都市高速道路をまたぎ、九州自動車道の八幡インターチェンジ付近を並走、そのまま遠賀川を越え、九州自動車道の直方パーキングエリアが見えた。14:09頃に山陽新幹線唯一の信号場である鞍手信号場を通過、九州自動車道とお別れし、田園地帯を駆け抜ける。

遠賀川を渡る。
鞍手信号場

福岡トンネル、久山トンネルを超えると、福岡の街並みが見え始める。左にカーブし、吉塚駅を過ぎ福岡都市高速の高架をくぐると、定刻の14:20博多に到着した。

吉塚駅
福北ゆたか線と並走

(7)博多南線 博多14:42→博多南15:06、博多南15:14→博多15:14

博多駅で22分停車した後、14:42に博多南へ向けて出発した。

8号車に設置されている体験スペース。いつでも誰でも体験できる。

高速運転を終えた列車はこれまでの走りを癒すかのようにゆっくりとした速度で博多南線を走行する。那珂川市へと入り、九州新幹線と別れ博多総合車両基地に隣接する博多南駅へおよそ25分で到着した。8分停車した後、再び、博多南線を走行し博多駅に到着した。

九州新幹線と分かれる
博多総合車両所に留置している新幹線たち。

(8)500系新幹線が本気を出した1日

ここで当日の時刻表を再現してみた。新神戸から岡山間は32分、岡山から広島間は38分、広島から小倉間は49分であった。現在の最速列車のぞみ64号と比較しても3分から4分の差である。N700系列は最高速度300km/hであり、500系新幹線とは25km/hの差があるが、285キロで走り続ければ数分の差に縮めることができる。500系新幹線の持つパワーを改めて思い知ることとなった。
500系新幹線は短編成化にあたり、乗り心地の改善を行っている。
高速域に達してもかつての激しい揺れはあまり感じられなかった。

のぞみ681号
新大阪 11:42入 11:47発(20)
新神戸 11:59着 12:00発
西明石 通過  12:07
姫路  通過  12:14 ハローキティ新幹線を追い抜く
相生  通過  12:18
岡山  12:32着 12:33発(22)
新倉敷 通過  12:41
福山  通過  12:48
新尾道 通過  12:52
三原  通過  12:55
東広島 通過  13:03
広島  13:11着 13:12発(11)
新岩国 通過  13:25 500系新幹線を追い抜く
徳山  通過  13:34
新山口 通過 13:44
厚狭  通過  13:49
新下関 通過  13:55
小倉  14:01着 14:02発(13)
博多  14:20着 14:42発(15)
博多南 14:52着 15:06発
博多  15:14着 15:28回送(16)

団体客を下ろし、博多総合車両所へ回送された
発車を待つ回送列車


九州新幹線からやってきた、さくら号とこれから向かうさくら号



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