アドラーフェストの発表から/共同体感覚の応用(アドラー心理学を応用したアセスメントとスーパービジョン②)
03月13日にオンラインで行われた第6回アドラーフェストについてnoteを書いています。私は一般発表で「アドラー心理学を応用したアセスメントとスーパービジョン」というタイトルで発表をさせていただきました。
昨日は、相談支援の過程にアドラー心理学の技法のひとつ、ライフスタイル診断を応用した事例を書きました。今日はその続きで、相談支援にアドラー心理学の思想「共同体感覚」を意識した手法を取り入れたことについて書きます。
なお、今までの流れは、よろしければ以下のnoteを参照してください。
共同体感覚
アドラー心理学の思想を「共同体感覚」といいます。私たちはどこかに所属しないと生きて行くことはできません。共同体感覚は、その所属先において、自分のことだけでなく所属する共同体全体が良くなるように行動しようという価値観です。また、アドラーは、共同体感覚は誰しもが持っているが、それを育てなければ育たないとも言います。
共同体感覚は、4つの感覚から構成されています。まずは、ありのままでいられるという「自己受容」です。自己受容が持てないと、その共同体の中で自分を偽りながら、生きて行かなければいけません。また自己受容をするためには、不完全である勇気も必要です。
次に「所属」です。ありのままの自分でいられる場所があるという安心感です。不完全である勇気を持ちつつ自分の強みを見つけることが必要です。
次が「信頼」です。自分が所属する場所には、信頼できる仲間がいるという感覚です。任せることができる仲間を作ることが大切です。
最後が「貢献」です。ありのままの自分でいられる場所があり、そこには信頼できる仲間がいる、そういう共同体では、人の役に立つことができるという感覚です。また最初の自己受容に戻ります。このサイクルが循環することで共同体感覚が向上し、幸福感も高まるという考え方です。
共同体感覚を育む支援
福祉(ふくし)とは、「ふつうのくらしをしあわせに」と言われます。共同体感覚を高めることで日常生活が幸せになるということです。私たち支援者の役割は、この共同体感覚が育むように支援していくことです。
そこで、相談支援の過程に、その利用者の共同体感覚が循環しているかどうか、そのための支援ができているかどうかを確認する作業を加えました。
下の図はある事例のアセスメントで使ったものです。利用者本人と面接をしたり活動中の様子を拝見したり、家族や支援者から聞き取った情報を、共同体感覚の要素を意識して分類しました。白い枠にはプラスのエピソードが分類されています。また灰色の枠にはマイナスのエピソードが分類されています。
この図を見ると、この利用者は、所属する場所があり、信頼できる仲間がいて、共同体において役に立とうとしていることがたくさんあります。それに対して、自己受容できることがら極端に少ないことがわかります。
この事例で、利用者は、支援者にほめられるとうれしいと言っていました。しかし、支援者はできてあたりまえのことをいつまでもほめていられないと言っていました。
アドラー心理学の応用を実践に使う
そこで、私たち相談支援を担当する者からは、ほめるだけでなく感謝の言葉を増やすことを提案しました。このように分類をして、図にすることで今の利用者の状況をつかむことができます。どこの要素が足りないかということがつかめます。直接支援を担当する支援者にもわかってもらいやすくなります。
ただ、アドラー心理学の良さを伝えるだけでなく、実際に使ってみてその有効性を感じてもらうことがだいじです。
なお、共同体感覚については、向後千春先生の著書、「幸せな劣等感」を参考にしています。
明日は、私の法人では、アルフレッド・アドラーがスーパーバイザーになっているということを書きます。