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キンプリから共同体感覚の育成を始める

相談担当の支援者が、あわてて帰って行きました。「帰って、音楽番組を見なくちゃ」と言っていました。ただし、だれかお気に入りのアーティストが出演するわけではありません。しかし、その支援者にはだいじな目的がありました。

相談事業は信頼関係から始まる

私は障がいのある人が利用する社会福祉法人を経営しています。法人の事業の一つに相談支援事業があります。そこでは、福祉サービスを利用する人たちの希望を聴き取り、サービス計画を立てます。

計画を立てるときは、まず利用者のことを詳しく知らなければいけません。また、その後も継続して利用者の生活に深く入り込んでいきます。利用者との信頼関係が必要です。

しかし、信頼関係は簡単に作れるものではありません。また、支援者が「あなたことを支援します。なんでも話してください。」と言っても利用者が話してくれるとはかぎりません。仕方がないから話しているのかもしれません。私が相談する立場だったら、ただ相談担当支援者だからというだけで本当のことは話しません。

「一曲目はキンプリだよ」「一曲目キンプリだったね」

私の法人の相談支援担当は、最初から深い話をしません。世間話を大切にします。今回は、ある利用者が音楽番組を楽しみにしていたこと、さらに「一曲目はキンプリだよ」と言っていたことから、その一曲目を見ようとしていました。

音楽番組があった翌日、支援者は、その利用者に会うと自分から「昨日、一曲目、キンプリだったね」と声をかけていました。この支援者の方から声をかけるというのがポイントです。

支援者からその話題を切り出すことで、利用者は、支援者がその話題により興味を持ってくれたのだと感じることができます。また、その方が会話が盛り上がります。利用者は、支援者の中に所属感を感じることができます。

キンプリから共同体感覚の育成を始める

私は、アドラー心理学が好きです。そのアドラー心理学には「共同体感覚」という思想があります。早稲田大学の向後千春先生は、共同体感覚について、「自分の利益のためだけに行動するのではなく、自分の行動がより大きな共同体のためにもなるように行動しようとする指向性」だと説明をしています。共同体の最小単位は、「目の前にいるあなた」です。支援者が、目の前にいる利用者のことを考えることで、利用者が自分自身の目標達成のために自分から動きだせるようにします。

アドラー心理学は実用的な心理学です

一緒にキンプリの話ができる、自分が好きなことに興味を示してくれた、信頼感はそんなところから始まっていきます。そうすると、少しづつ深いところを話してくれるようになります。支援者は「利用者は支援者になんでも話すのが当たり前だ」と思っていると信頼関係は作れません。利用者が支援者に話をしてくれるということは、支援者に貢献していることになります。

支援者が、自らの共同体感覚を高めることで、利用者も自身の共同体感覚を高めることができます。それが自分の望む生活への近道です。

ジャニーズの「King & Prince」の話がアドラー心理学にまでおよんでしまいました。アドラー心理学は、実用的な心理学です。

連続投稿1000日まで、あと72日。

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