早期回想で自己覚知
私とアドラー心理学の出会い
私は、障がいのある人が利用する社会福祉法人を経営しています。この仕事を始めて35年が過ぎました。ただし、そのほとんどを勢いと経験だけで押し通してきました。そんな私にそれではダメだ、と気づかさせてくれたのがアドラーであり向後先生です。今回のワークショップは、自分の原点回帰のような時間になりました。
今回、学習をした「早期回想」とは、その人が思い出せるもっとも最初の記憶です。アドラー派のカウンセリングでは、早期回想をもちいてその人のライフスタイルを明らかにし、その人が自分らしく生きる道を手伝います。そこで今回のワークショップでは、自分の早期回想をもちいてグループワークを行いました。
早期回想で自己覚知
社会福祉法人における私の主たる業務は理事長業務です。しかし、相談業務等で利用者の皆さんの支援も行います。その支援を行ううえでだいじなことは、自己覚知(self-awareness)です。たとえば、この自己覚知については、援助職の基本を記したバイスティックの7原則(ケースワークの原則 援助関係を形成する技法,誠信書房,F.P.バイステック)において、他者理解は自己理解によって高まると書かれています。支援は、相手の立場でおこなわれなければいけません。しかし、気づくと支援者の立場で支援を進めていることがあります。これはまちがったかかわりです。
支援には、支援者の癖が出ます。人の話を聴くときのくせ、人の話のどこにひっかかるか、どこに感情が働くか、そこを知っておくことが必要です。そうしないと、対象者を知らず知らずの内に支援者の理想に近づけようとしてしまいます。それを防ぐためには、まず自分の癖を知ることです。しかし、自分を客観的に見るのは難しい作業です。見ようとすればするほどそこにバイアスがかかります。そこで早期回想です。
早期回想をもちいる
早期回想で思い出すことは、事実でなくてもいい、正確でなくてもいいとのことです。今、それを思い出すことに意味があり、今の自分を投影しているということです。また、できるだけネガティブな感情を伴うエピソードがいいといいます。ネガティブな感情が発動しているということは自己理想がくつがえされたときだからです。支援をしていると、それは間違っていると強く思ってしまうことがあります。それが強くなると人権侵害や虐待につながります。早期回想をすることで、支援者が自分のマイナス感情の源に気づき、強引なかかわりを抑制できるのではないでしょうか。
私が経営する社会福祉法人を利用する人たちは知的な障がいのある人たちです。会話によるコミュニケーションが難しい人がほとんです。その分、支援者が利用者の考えや気持ちを推測することがあります。そのため支援者は、自己覚知をして自分の癖や私的感覚を知らなければいけません。
これから、支援者同士、ゲーム感覚で早期回想をおこない、楽しみながら自己覚知をしようと思います。