アドラーフェストの発表から/アドラー心理学を応用したアセスメントとスーパービジョン①
03月13日にオンラインで行われた第6回アドラーフェストについてnoteを書いています。アドラーフェストはアドラー心理学を研究、実践する仲間が集まるお祭りです。私は一般発表で「アドラー心理学を応用したアセスメントとスーパービジョン」というタイトルで発表をさせていただきました。
これまでのnoteのおさらいです
私は、障がいのある人利用する社会福祉法人を経営しています。自分の法人の事業所だけでなく、他の機関や事業所との連携することがたくさんあります。その中で、アドラー心理学を基本とする支援について話をすると、冷ややかな反応や、拒否をされることがありました。しかし、事業所を使う利用者の反応は良く、利用者に変化が見られました。ここまでがおさらいです。
相談支援事業でアドラー心理学の技法を標準に
アドラー心理学を意識して支援をしていると、利用者がいろいろな話をしてくれるようになりました。最初は無駄話です。それが真剣な話や相談になったことから、新しく相談支援事業所を立ち上げました。そのとき、相談支援の過程にアドラー心理学の技法や思想を取り入れ、それを事業所の標準にしてしまいました。以下が、一般的な相談支援の過程です。
相談支援の過程においては、インテークとアセスメントが要と言われています。そこにアドラー心理学の技法と思想を組み込みました。
一般的な、インテークやアセスメントで使われる情報収集シートは膨大な情報量を必要とします。そこで行う情報収集は利用者を知るうえで大切な過程です。しかし、情報量が多すぎて文脈がつかみづらいという欠点があります。相談支援では、文脈がだいじです。
エンゲストロームの文化・歴史的活動理論の応用
そこで私は、エンゲストロームの文化・歴史的活動理論を応用し、それを意識した情報収集をおこないます。このことについては、以前のnoteに書きました。よろしければ参照ください。
ライフスタイル診断を応用したアセスメント
次に収集した情報を、アドラー心理学の技法のひとつライフスタイル診断を応用して分類をします。
私は、ライフスタイル診断を早稲田大学エクステンションセンター中野校のアドラー心理学講座で学びました。上の左の図は、そこでまんだことの応用です。
利用者本人の面接や活動中の様子を拝見します。また家族や支援者から聞き取りをします。必要なときは、学校時代の先生にも会いに行きます。そこで聞き取った情報をライフスタイル診断を想像しながら分類します。
分類するときは、特にご本人が楽しいそうにしている場面や辛そうにしている場面に注目をします。上の左の図で、白い枠には楽しそうなエピソードが分類されています。また灰色の枠には辛そうにしているエピソードが分類されています。
楽しいこと、辛いことに注目する理由は、自分の思いを言葉で伝えきれない利用者が多いため感情に注目をします。楽しそうにしているということは、今のままを継続したいと予測します。辛そうにしているということは、今の状態を改善して欲しいと思っていると予測します。そうすることで楽しい場面を継続し、辛そう場面を取り除くような支援計画を立てられます。
ライフスタイルに基づいた支援の提案
上の左の図は、ある事業所の支援者から「支援者との約束が守れない利用者のへのかかわりかたについて」という相談を受けたときの事例です。ライフスタイルを想像して分類していくと、この利用者は対人関係優先型で、支援者から作業能力の向上を求められるより、友達と楽しく活動をすることに重点をおいていると予測ができました。そこで、約束をするときは、支援者とするのではなく友達同士で行うことを提案しました。
ライフスタイルを知ることで、利用者の最優先目的を予測することができます。通常のライフスタイル診断は、質問シートを使って行います。しかし、障がいのある利用者への支援では、質問シートによる診断ができないことがあります。そこで、利用者の行動や何気ない言動を集めてその情報を分類することでライフスタイルを予測しました。
なお、ライフスタイル診断については、向後千春先生の著書でご確認ください。
明日は、アドラー心理学の思想、共同体感覚を意識したアセスメントについてです。