支援をあきらめない(我が家でスーパービジョン⑤)
大学生の長女と高校生の次女が、家の近所にある高齢者デイサービスでアルバイトをしています。二人とも仕事に慣れた半面、いろいろな疑問や失敗もあり、その思いを私にぶつけてくれます。
私は、障がいのある人が利用する事業所を経営しています。利用者の対象は、子どもたちのアルバイト先と異なります。しかし、対人援助職であることにはかわりありません。我が家では、対人援助におけるスーパービジョンが始まります。対人援助職におけるスーパービジョンとはスキル向上を目的とした教育システムをいいます。
コーヒーに砂糖とミルク…
子どもたちがアルバイトをするデイサービスのおやつ時間のことです。正社員から、コーヒーを提供するように言われたとのことです。そのとき、ある支援者は、利用者一人ひとりに砂糖やミルクの量、好みを聞いて作っています。ある支援者は、ほどほどの甘さのミルクコーヒーを作って出しています。娘は、「自分には、まだ一人ひとりの好みを聞いて作るほどの余裕はない、どうしたらいいだろうか」と言います。
利用者の好みを尊重することはだいじです。また、利用者によっては糖分制限のある人がいます。その点でも個別対応が求められます。しかし、無理をすると事故やトラブルにつながります。
おやつ時間のトラブル
おやつの時間は、トラブルの起きやすい時間帯です。準備をしている内に、他の人のお菓子を食べたり、飲物を飲んでしまうことがあります。また、利用者が気を利かして、飲物を移動させようとしてこぼしてしまうこともあります。
他の人の物を盗ってしまうと、利用者同士で「あの人は人の物を盗るから気をつけて」という話が始まります。一度、こういう話が始まるとなかなか終息しません。また、飲物をこぼすと、着替えの支援が必要になることがあります。おやつの時間は日課中より神経を使う時間帯です。だから、無理をしてはいけません。ただし、原則は、個別支援です。
集団生活と個別支援のはざまで…
私たち対人援助という仕事は、常に、集団生活と個別支援のあいだで悩みます。個別支援をするためには、大勢の支援者が必要です。報酬単価が高ければ、支援者を大勢雇用することができます。また、現状は、求人をかけても応募者がありません。社会には、仕事がなくて困っている人がいます。私たちは、働いてくれる人がいなくて困っています。
集団生活と個別支援の調和をとるためには、利用者の健康を第一に考えると共に、事業所としての目的や役割も考えます。デイサービスとして提供する飲物はなにか、個人の嗜好が分かれる物をどこまでサービスとして提供するかということです。事業所として、豊富なメニューの飲物を提供することにポイントをおくのであれば、支援体制の工夫が必要になります。
どこの事業所でも、利用者それぞれの嗜好に合わせた飲物が提供できれば最高です。しかし、難しければ、万人が好むような飲物にすることや、一目でわかるような写真等を使って、提供できるものを限定することも仕方ないときがあります。
支援をあきらめない、いいわけしない
しかし、これが入居系(グループホーム等)になると話は違います。入居系の事業所は、家に変わる場所です。自分の家でくつろぐための支援が必要です。
無理をしてはいけません。ただし、支援をあきらめてはいけません。「無理だから」とか「こんなもんでいいんじゃない」と、思ってしまうといつまでたっても良い支援者にはなれません。支援者の数が増えて、環境が整っても個別支援はできません。
「いいわけしない!」、そんなことを思い出せてくれる投げかけでした。