平山さんは微笑む/「PERFECT DAYS」をもう一回観た
平山さんのようにすごしてみようと思いました。先々週、映画の「PERFECT DAYS」を観てそう思いました。でも難しい。いつも平山さんのように微笑むことはできませんでした。そこで平山さんの微笑みを見に、もう一度、映画を観に行って来ました。
もう一回観る
映画「PERFECT DAYS」では、役所広司さんが東京渋谷区の公衆トイレの清掃員を演じています。映画はその清掃員、平山さんの日々を追った映画です。毎日、毎日を誠実に生きる平山さんの仕事は天命のように感じます。
また、平山さんの毎日を多彩な顔触れが彩ります。素敵だったのはBARのママを演ずる石川さゆりさんが唄う「朝日のあたる家(訳詞:浅川マキ)」です。客の一人を演じるあがた森魚さんのギターで唄います。また、パンフレットを見ると研ナオコさんも出演しています。最初に観たときはわかりませんでした。2回目は、研ナオコさんを探すのも目的に一つでした。さらに、もう一つ観ておきたい場面がありました。『PERFECT DAYS』の好きな場面を一つ書きます。
ちょっとした違いを楽しむ
(若干のネタバレを含みます)
平山さんがいつものようにトイレの掃除をしているとき、トイレの洗面台の隅に挟んである紙きれを見つけます。その紙切れはノートの一頁を破って二つ折りにされていました。それを開くと、井桁(いげた)の真ん中に「○」が一つ書いてありました。昔によく遊んだ「○✕ゲーム」です。平山さんは、最初は無視します。しかし、あとから思い直してその紙を開き井桁に「✕」を書き込み元の場所に挟みます。
翌日、そのトイレの掃除に行くと同じ場所に同じ紙が挟んでありました。それを開くと「○」が一つ増えていました。平山さんは今度はためらいなく「✕」を書き込み元の場所に戻しました。
平山さんの毎日は一見、単調です。しかし昨日とは違うことが必ずあります。平山さんは同じ毎日を完璧にこなし、ちょっとした違いに微笑みます。それは誰の暮らしでも同じです。とびきりの喜びは滅多にあるものではありません。日々のちょっとした微笑みに気づけるかどうかでその一日の面白みが変わります。
今日の微笑み
私は、障がいのある人が利用する社会福祉法人を経営しています。以前は直接支援を行う支援者でした。そのころ新しい事業所を一つ増やしました。そのときのことです。その事業所の業務日報の最後に「今日の微笑み」という欄を作りました。その日のできごとで利用者との会話で笑ってしまったことや利用者のそぶりでおかしかったことなどを打合せで共有し書き込んでいました。
しかし、やがて私が現場を離れ、支援者も変わると「今日の微笑み」という欄はなくなりました。「効率」が求められるようになり、打合せは速やかに終わらせる、そんな流れになりました。
また、微笑みの内容も今の時代では「人権が…」と注意されてしまうことがあるでしょう。それでもあの頃は、その楽しさを支援者も利用者も一緒に共有していました。また、当時から一緒に働く支援者とは、そのころのできごとが良い思い出となり今の原動力になっています。
微笑む
どんな仕事も見かたによっては単調です。その単調の中にちょっとした違いを見つけ、それを笑えるかどうかがだいじです。そんな微笑みがあるかどうかでその仕事を続けられるかどうかが決まるような気がします。
明日は、平山さんのように微笑もう。
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