声のかけ方、タイミングに気をつける
障がいのある人の支援にかかわる仕事に就いて、30年以上が経ちます。長く続けている分、いろいろな経験を積み、多くのことに慣れました。そのかわりに、この世界でしか通用しないような常識をたくさん持っています。その常識を見直していかなければいけないと思っています。
私たちの仕事のひとつに、トイレの支援があります。とくに外活動の前にはトイレに行ってもらうような声かけをします。しかし、その支援方法は、客観的に見ると「ん?」と思うような声かけがあります。
トイレ誘導
これから買物に行く、もしくは利用者が帰る、その間際に、支援者が利用者に声をかけます。
「■■さん、トイレ行った?」
「▲▲さん、トイレ行ってくださーい」
昔は、こんな感じでした。
「■■さん、トイレ行きなさい」
「▲▲さん、オシッコ、オシッコは?」
最近は、ご本人の主体性を大切にしなければいけないということやマナーに気をつけて「●●さんトイレ行っていただけますか?」と言ったりします。
ただし、このやりとりを、他の人たちも聞いています。
私の娘に言われたこと
私の娘が小学生だったころのことです。出かける前に「トイレ行った?」と聞いたら、「お父さん、いちいちうるさい、それにはずかしいでしょう」と、怒られてしまいました。親は、外で急に「トイレ」と言われると困ります。だから、先に行っておいて欲しいと思います。しかし、子どもからすれば、同じことを何度も言わないで欲しいし、ましてトイレのことなんて恥ずかしいということです。
恥ずかしさを忘れない
私たち支援者は、それを公衆の面前で口にしています。
人前で、トイレの確認をするということは、「私は一人ではトイレに行かれません」ということや「私は、言われないとトイレに行かれません」ということを伝えているようなものです。とても恥ずかしい、失礼な対応をしていました。
いちいち言わない
以前、ある利用者に「●●さん、トイレ行こう」と声をかけたら「イヤです」と言われました。何回、声をかけても答えは一緒でした。あきらめて、「じゃ、買物行こうか」と立ち上がると、その利用者は、そのままトイレに入って用を済ませました。
その利用者は、トイレに行くのを拒否していたわけではなく、私からいちいち言われることを嫌がっていたのではないかということに気がつきました。
私たち支援者のかかわりは、利用者のためという大義名分のもと、支援者の都合で流れを作っていることがあります。人にはひとそれぞれ、段取りがある、それを尊重しなければいけないと思えるようになりました。