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電気自動車の現状と今後

 慶應義塾体育会ソフトテニス部の部員日記をご覧いただき、ありがとうございます。今回の部員日記は、商学部2年岡田諒悟が担当させていただきます。
 さて、今回のテーマは「電気自動車」です。EUを中心に電気自動車の普及が目指され、近年日本の自動車メーカーも続々と「EVシフト」を進めています。そこで、今回は電気自動車とは何なのか、そして今後電気自動車に予想される展望について、書き進めていこうと思います。

⒈ 電気自動車とは

 電気自動車(Electric Vehicle) は、日本では「EV」と総称されています。しかし、EVにも多様な種類があります。
 電気自動車とは、単純に「動力を電気とする自動車」のことです。水素と酸素の化学反応を利用して発電するもの、ソーラーパネルを用いて太陽光から発電するもの、コンセントから給電するものなどがこれにあたります。ここで、書き進めながら気がついたことがあります。それは、「電気自動車(EV)の定義の二重性」です。
 まず、1つ目の定義は、「電気のみを動力に利用する自動車」というものです。(便宜上、この定義を「狭義EV」と呼ぶことにします) この定義では、ガソリンを動力として用いる車をEVから省いて定義されています。
 一方、2つ目の定義は「電気を動力に利用する自動車」です。(便宜上、この定義を「広義EV」とします) こちらの定義には、電気と同時にガソリンを動力に併用するハイブリッド車(Hybrid Vehicle)など、電気を動力の一部とする自動車が該当します。
 それでは、後者の広義EVに含まれる自動車を整理してみたいと思います。(以下、三井ダイレクト損保HPを参考にします。)

⒈⒈ BEV(狭義EV)

 まずはじめにあげるのは、電気のみを動力とする自動車です。車載されたバッテリーの電源を動力とします。街中のサービスエリアやガソリンスタンド、自宅のスタンドなどで給電し、その電力を利用して走行します。2022年1月〜12月の販売台数は8510台(2.66%)となっています。

日産 リーフ(画像は日産自動車HPより引用)

⒈⒉ ハイブリッド車(Hybrid Vehicle - HV, Hybrid Electric Veicle - HEV)

 次に、日本で最もよく目にされるであろう広義EVのハイブリッド車(HV,HEV)を取り上げます。ハイブリッド車は、ガソリンによる動力と電気による動力を併用することにより、低燃費を実現したものです。ハイブリッド車の2022年1月〜12月の販売台数は144,498台(45.17%)となっており、全体のシェアの約半数を占めています。

スバル フォレスター X-BREAK

⒈⒊ プラグインハイブリッド車(Plug-in Hybrid Vehicle - PHV, Plug-in Hybrid Electric Vehicle - PHEV)

  3つ目に、「PHV/PHEV」の名で最近耳にすることが多くなった、プラグインハイブリッド車について取り上げます。PHEVは、HEVと同様、動力源をガソリンと電気に持つ自動車ですが、バッテリーに直接充電できる給電コンセントを持ち、さらにバッテリー容量もハイブリッドに対し大きめに設定されています。2022年1月〜12月の販売台数は3,272台(1.02%)となっています。

トヨタ プリウスPHEV(画像はトヨタ HPより引用)

⒈⒋ 燃料電池車(Fuel Cell Vehicle -  FCV, Fuel Cell Electric Vehicle - FCEV)

 最後に、燃料電池車(FCV/FCEV)について取り上げます。燃料電池車は、水素を燃料として酸素と反応させることでエネルギーを生み出し、それを動力とする自動車です。可燃性の高く不可視の気体である水素を利用しますが、近年タンクの改良が重ねられ、安全性の向上がメーカーで進められています。ただ、水素ステーションの普及など、インフラ面の問題や、価格の問題から、2022年1月〜12月の国内販売台数は29台(0.01%)にとどまっています。

トヨタ ミライ(トヨタHPより引用)


 ここまで、日本で「EV」とひとくくりにされる電気自動車の種類と特性について述べてきました。次章では、その特性を踏まえたそれぞれの課題について述べていこうと思います。

⒉ 電気自動車の課題

 ここからは、電気自動車のもつ課題について考えていこうと思います。

⒉⒈ バッテリーのサステナビリティ(BEV)

 一般的に、EVはガソリン車と比較してサステナビリティの高い車と言われます。化石燃料であるガソリンを消費して走るガソリン車はサステナビリティが低いのに対し、電気だけを動力にするBEVはサステナビリティが高いとされます。
 しかし、現状の技術力ではバッテリー性能は経年劣化による限界があります。バッテリーの経年劣化のイメージしやすい例は、スマートフォンがそのひとつです。メーカーでは「8年または16万km」とされています。仮に国内の車両が全てBEVに置き換わった場合、8年の交換基準を適用して、1年あたり約1000万台のバッテリーが交換、もしくは車の買い替えとなります。リチウムに限った言及をすれば、埋蔵量は200年以上と言われており、十分エネルギーとして、我々が生きている間は利用できると思われますが、サステナビリティの観点では疑問が出ます。
 また、リチウムに関しては、南アフリカを中心に採掘される鉄鉱資源の一種であり、 EVシフトや発展途上国の需要増加から、供給が不安定で、価格も現状不安定となっています。こうした面でも、BEVやHEV, PHEVのバッテリーには課題があるといえます。

⒉⒉ 使用する電気のサステナビリティ(BEV, PHEV)

2点目に挙げるのは、使用する電気のサステナビリティです。現状、日本は発電量の71.7%を火力発電に依存しています。(ISEP NPO法人環境エネルギー政策研究所 HP 参照) これはすなわち、少なくとも国内では、動力として使用する電気自体は一見サステナビリティがあるように思えても、発電方法のサステナビリティが低い、ということです。

⒉⒊ バッテリーの性能・走行性能

 続いて、バッテリーの性能について考察します。現状、テスラ車に搭載されているバッテリーで、航続距離は約260km、充電時間は約30分とされています。横浜〜名古屋の直線距離が約250kmですので、それと同等と言えます。新品時で250kmしか走れない点や、フル充電に30分かかる点は、ガソリン車は約400km走り、ガソリンを満タンに充填するまで2分ほどしかかからない点から、大きな弱点と言えます。
 さらに、こうした問題は緊急時に大きく影響します。今冬大きな問題となったのは、雪道の立ち往生です。BEVはエアコンや車内のシガーソケットなど、動力以外のあらゆる電力も、補助電池から捻出します。つまり、ガソリン車であればエンジンをかけ、暖房をつけ、ガス欠となった際にはガソリンの物理的配布を行うことで緊急対応が可能です。しかし、BEVの場合、動力源を失えば充電が困難なことから、エンジンをかけて暖房をつけ停止することは困難です。こうした点も、BEVの大きな弱点と言えます。


⒉⒋ インフラ整備(BEV, FCEV)

 最後に、インフラ整備の問題です。ここでいうインフラとは、BEVやFCEVを購入・使用するにあたり、必要な公共設備のことを指します。例えば、BEVであれば充電スポット、FCEVでは水素ステーションを指します。現状、高速道路上ではPAやSAなど、またレジャー施設などには、充電スポットが設置されつつあります。しかし、圧倒的に数が不足していることと、先に挙げたように、充電に相当時間を要することから、まださらに多くの数を必要としています。一方、国内の水素ステーション数は、159ヶ所と、実際にFCEVに乗ることを考えれば、ガソリンスタンド数24,315店に比して、あまりにも不便であることが言えます。しかし、これ以上増やしていくにも、国内にはFCEVは5,000台前後しか走っておらず、費用対効果が見込めない状況に陥っている、と言えるのではないでしょうか。

⒊ まとめ・今後の展望

 最後になりますが、EVの今後の展望について少しだけ触れます。2035年度、EUや米国主要州、日本などは、HVを含む、CO2を排出するガソリン車・ディーゼル車の新車販売を、法制によって禁止する方針を展開しています。確かに、EVは車両自体の排ガスにおける環境性能は優れています。しかし、上記に挙げたように、現状では持続性に疑問があること、性能に課題があることから、12年後にこれらを全て解決することは現実的ではないと言えます。個人的には、法制による強制的EV化には大反対ですが、今後こうした現状を各国政府がどのように対処していくか、注目すべきでしょう。

※この日記は、YouTuber「あかでみっくモーターカレッジ-Academic Motor College-」さんの動画を参考に、情報を整理してまとめたものです※

 長くなりましたが、これで今回の部員日記は終わりとさせていただきます。多くの曖昧な箇所、至らぬ点があったと存じますが、最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
 次回、木曜日の加納くんの部員日記にもぜひご期待ください!

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