370キロ離れた土地に呼び出されたので行ってみた(2泊3日バトゥミ観光)
4月17日。日付が変わってすぐに、Twitterに1通のダイレクトメールが届いた。
「バトゥミに遊びにくる予定とかないですか?笑」
…いきなり何を言っているんだこの人は。
「リョーガさんに会わずにトビリシを立つことになっちゃうねっていう話になったのですが、、じゃあ呼んじゃえという発想です笑」
なるほど。とんでもねえ発想の転換じゃないですか。それで東京〜仙台間呼び出しますかね?でも、めちゃくちゃ嬉しいこと言ってくれるじゃん・・・
「ちなみに、いつまでとかありますか?5月ならいけるんですけど」
「28まで、それ以降スペイン行くんですよね」
予定を見る。月曜〜金曜はトビリシにいる必要はなかった。
「火曜〜木曜で行きます。ホテルも取りました」
この間10時間。行動力の鬼、今日も動きます。
4月25日 初日
5時半起床。自宅の停電5日目。もう暗い部屋で体育座りをして「ひもじい」と呟く貧乏人ごっこを朝からするのも飽きたので、ボーッとしつつ出発の準備。ちなみに、停電したのは工事で何かやらかしたらしく、自分の住む棟全体が5日間真っ暗闇だった。帰宅する頃には復旧していて欲しい。
そろそろ引っ越しの準備もあるし、何より冷水シャワーはまだ季節的に早い。給湯器に電気が供給されないので、結果として水シャワーでの滝行を強いられているのだ。
6時半。滝行で身を清め、洗濯したい服を鞄に詰め込む。パスポートも一応持って行くか。事故った時になんとかなるだろう。と放り込んだ小本が、とても重要だった。
Yandexでタクシーを呼ぶ。前日の大雨でぬかるんだ地面を歩いて大通りに行くのは嫌だったので、珍しく家の目の前に配車。普段は1歩でも多く歩こうという謎の意識高め、健康志向で裏側の大通りで乗降車している。
中央駅までの値段が結構かかる。諦めて最寄りの地下鉄駅に行き先を変える。終わらせる!と息巻いていた仕事が終わらず、4月は収益が大きかったものの、出費もかさんだため総合で見ると+5万円ほど。暑さに耐えきれず夏服を買ったりしたことでほぼ手持ちには残っていなかった。
7時半、発車30分前に到着。初めて中央駅に入った。よく買うアパレル、LC Waikikiの店舗があるなど中央駅の名前に負けない広さだった。東京駅を比較対象でイメージしたら天秤が崩壊するのでやめてほしい。あくまで外国の中央駅の規模、である。
どこかのブログで「飯は買おう」と書いてあったのを思い出し、売店でポテトチップスと水を購入。ホームの目の前にはサンドウィッチ屋があったが、そこまで食欲が湧いていなかったので安く済ませた。
乗車前にWalletに入れていた電子チケットを見せる。すると駅員がいきなり
「Passport?」
え、マジで?出国しないのに?
今これを読んでくれている人は覚えていてほしい。パスポートは必ず持っておこう。いつチェックされるかわからない。
ここで持っていなかったらどうなっていたんだろうと考えつつも、リュックから探し当てる。写真の欄を見せようとしたら、
「OK」
え、表紙だけでいいんですか。
本当にそれくらいあっさりとしたチェックだった。
20分くらいボーッとしていた。乗車した頃はまばらだった乗客も、発車前には満席だった。これからの時期はオンライン予約が必須かもしれない。平日朝で満席だったので。
30分で世界が変わった
暇つぶしとしてNintendo Switchを持参していた。最近発売されたFinal Fantasy Ⅲ のデジタルリマスター版をどうしてもプレイしたかったのだ。
とはいえ、停電中の自宅では充電ができず、残量は70%ほど。中盤に差し掛かる頃のデッシュとの別れのタイミングで中断した。フィールド曲の悠久の風、めちゃくちゃエモくて泣けるので是非。列車から見える景色にピッタリだった。
ふと外に目をやると、普段のビルと車のオンパレードから世界が一変していた。イギリスの5月祭の花であるライラックが咲き、線路にはウシが侵入。たまに通過していく貨物列車はYouTubeでよく見た石炭が積まれた列車。
ああ、日本から出てきたな。と4ヶ月目にしてようやく思った瞬間だった。
列車に5時間揺られた感想としては、
とにかく長い。
大分の耶馬溪《やばけい》の間を通るような山奥をクネクネと進むので、どうしてもスピードは上がらない。そしてジョージアといえばMagti、くらい大手キャリアが3G回線なのである。とにかく遅い。列車のWi-Fiはもっと遅い。仕事するのは早々に諦め、Switchの電池の限界まで浮遊大陸を駆け巡っていた。そしてシートが硬い。故に尻が痛くなる。臀部痛持ちの人は気をつけて。
気づいた頃には寝ていた。
次に目覚めたのはクタイシ空港駅に到着した時の人の動きだった。え、というかクタイシ空港駅なんてあったの?地図を見ると真横に空港があった。想定外の収穫だ。来月パリへ飛ぶ予定があるので、ぜひ利用しよう。わざわざ遠くの市街に降りて観光する必要はまだない。
黒海沿いを行く
以前、青春18きっぷを利用して大分県の別府駅から京都駅まで1泊2日で旅をしたことがあった。その時に通った瀬戸内海に似ている。そりゃ海だもんな。
この海を挟んだところにはウクライナがあって、血で血を洗うような日々が続いている。対岸ではこんなのんびりと移動しているのに。ちょっと複雑だ。
そんなことを考えている間に、バトゥミに着いた。
いい天気。呼び出してきた相手に到着の旨を報告すると、
「いらっしゃい!お疲れさまーー!
リョーガくん来るから晴れましたね。流石!!」
褒められる基準が低い&自己の力でどうにもならないけど褒められる優しい世界がバトゥミにはあった。生きやすい土地だ。
以前トビリシに初上陸した際、偽Boltで5倍ぼったくられる経験があったので、ホテルまで6キロだし歩いてみるかとトボトボ歩き出す。トビリシと違って歩道がちゃんと広いので安心して歩けるのがいいポイント。
3キロほど歩いた頃、日差しによる暑さと長袖の影響で疲れがかなり溜まっていた。ポテチを除けば24時間何も食べていないので当然といえば当然なのだが。
そこでふとあるものを見つけた。
電動キックボードとの出会いだった。
普段トビリシでも見かけてはいたが、いかんせん交通量と道の広さが利用を躊躇させていた。
幸いバトゥミには海沿いにサイクリングロードがあるので、気をつけるべきは横からの人の飛び出しくらい。思い切って借りることにした。
え、何これ楽しい
とんでもなく楽しい&楽ちんだった。
今後はトビリシでも使おう、そう思えるくらいに移動が楽。1時間超の移動が20分で済んでしまった。Boltに乗れば全て解決なのだが、せっかく海辺の街に来ているのだからアクティブなことをしたかったんだもん。
ホテルチェックイン
今回の宿はAirbnbで抑えたOrbi Towerというタワーマンションの一室。46階、海辺の景色は最高だった。
シーズン外ということもあり、2泊で合計7000円と特別高くない金額で宿泊できた上に、仕事を受注している方と同じ棟だったので夕飯に行きつつ仕事の話もできた。
トルコ料理・・・あれ?
呼び出した人たちと夕飯へ。3つの候補をあげていてくれていたので、せっかくだしトルコ料理にでもしますかと2個目の選択肢をチョイス。
しかし訪れてみると中国語の羅列。いつの間にか居抜きで中国料理店に代わっていたようだ。内装はGoogle Mapのトルコ料理店と何ら代わっていない。それ以前に、実店舗と地図上の位置がズレていて5分くらい迷った。
まあ、中国料理でもいいでしょう
と妥協で入店。久しぶりにちゃんと痺辛い麻婆豆腐が良きでした。
後押しとなった晩酌
夕食後に飲むか!となり、2時間ほどホテルの一室で5人晩酌。実はほぼ何を話したか覚えていない。
自分が行なっている不思議な結婚の祝い方のせいで資金がぶっ飛んだ話はしたな。色々と話せる心理的安全性の高い空間だったので安心していた。
そして部屋に戻るなり早々に寝た。移動と笑い疲れ、まだまだ体力は戻っていない。
4月26日 2日目
9時ごろに起床。今日も景色が良い。
昼過ぎから街外れにある海鮮市場へ行くという話だったので、午前中に色々と作業。…が、あまり捗らなかった。
フィッシュマーケットへ。名前ダイレクトすぎん?
14時頃出発、目的地には15時頃に到着した。待ち合わせ時間があったので、移動時間はトータル30分ほど。電動キックボードでアクティビティ感覚で行ったのだが、好評で良かった。ただ5人分まとめて払う&30分の待機時間があった結果70₾ぶっ飛んだ。バトゥミ滞在中イチの出費だった。(もちろん各人から徴収させて頂いた)
海鮮市場到着、が中に入る前に気さくな兄さんに話しかけられる。僕は日によって聴力の調子が変化する体質なのだが、その日は聞こえにくい分類の日だった。
気づいたら、市場の門をくぐることなく、バラティエの入口みたいなレストランにいた。あ、これボラれるやつや。
もう仕方ない&一時的にトビリシへ向かう方の列車が17時に迫っていたため、覚悟を決めて色々と注文、海鮮はトビリシより多少安い程度だった。
色々注文した結果200₾。その25%を占めるサーモン、10%を占めるシーフードピザは美味だった。
その他のものも美味だったが、この2つは群を抜いていた。
食事が終わり、帰る前にせっかくだからと海鮮市場へ。
トビリシではなかなか拝めない生の魚が所狭しと並んでいた。そして焼いてくれるスペースも奥にひっそりと。ここで買って焼いてもらって食べる、ってのをしたかったんだけどな。まあ仕方ない。またいつか来よう、という言い訳になる。
夜の一人歩き
前日は疲れていて夜間の街歩きが出来なかったので、せっかくだからと少し歩く。目的地は2ブロック離れた位置のスタジアム。
実は結構なスタジアムオタクな僕、好きなスタジアムは等々力陸上競技場とドイツのアリアンツ・アレーナ、中国の国家体育場やブラジルのアレーナ・ダス・ドゥーダス。気になった方は調べてみて。
あまり天井が高いスタジアムは好きでは無いけど、故・黒川紀章氏が設計したロシア・サンクトペテルブルクのクレストフスキー・スタジアム(ガスプロム・アリーナ)はめちゃくちゃ好き。1回行った。また行きたい。
もう寝る?
とメッセージが届いたのは22:30。Slackの通知が夜間届かなくなる設定をしていたため、気づいたのは23時過ぎ、寝ようと最終確認をした時だった。
仕事の監視役として同じ空間で一緒に仕事しないかという誘いだった。大変だなぁ。
その方はパートナーが居るので、変な暴走をして社会的に死なないように必死だった。今ここで宣言をしておくが、やましいことは一切していない。とういうかあえて「俺はなんで彼氏がいる人とホテルの一室で仕事の相互監視を…」と笑い話風にボヤく事で和やかにしていた。
とにかく黙々と仕事をする。たまに休憩して談笑したりもしたが、気づけば午前3時。
とりあえず相手の仕事は終わり、僕もトビリシでやるつもりだったブログの更新が4月末までは予約完了した。
コワーキングスペースで仕事をする時もそうだが、誰かがいる環境で仕事をするとめちゃくちゃ捗る。会社ってそういうもんなのかな、と社会人未経験が浅ーく考えた。
4月27日 3日目
9時起床。今日も景色がいい。雨予報だったのが嘘のような晴天。
チェックアウトの11時までに荷物を整え、11時からは今後も泊まる人の部屋に入れてもらい、仕事をしていた。
13:30、Instagramでバトゥミにいるとストーリーズで報告した際に友人からオススメされた「BERN」という店にやってきた。
内装撮ってなかったのが残念すぎるのだが、とても綺麗だった。
せっかくなので屋上テラス席で。
上の2枚、それとオジャフリはこの店に行ったら是非注文して欲しい。
マッシュルームのポタージュは濃厚で、飽きがこない味、アジャルリハチャプリはアジャリア自治共和国、バトゥミがオリジナルの地域。かなり美味しかった。
オジャフリは芋がトロホク、パプリカが加わることで味に複雑性が増していて、普段の「スパイス・芋・肉」ではない新しい感覚だった。
別れで泣く日はまた来るだろうか
2時間ほどの食事を楽しみ、3人と別れ駅へと向かう。
そういえば、あれだけ良くしてもらってたのに別れの際は泣かなかったなと思った。
のぞみバーでの勤務終わり、自宅から急遽目的地を変えて集まった5人で寝落ち耐久戦とかいう青春真っ盛りな事をしても、別れの時には泣かなかった。
昔から卒業式などではよく泣く人間だったし、昔参加したトマト投げ祭りで出会った日本人との別れはたった3日間行動を共にしただけだったのにワンワン泣いた。
年をとったから泣かなくなったのかとも思ったが、去年アルバイト中にしんどくて泣いているし、今でも泣ける映画を見たらドバドバ泣く。年は関係ない。
人との別れで泣かなくなったのか?と考える。
それだけ聞くと失礼な奴とか薄情者とか言われるかもしれないが、なんとなく、ノマドとして生きていればまたいつか会える、そんなマインドになったんじゃないかと思っている。これもある種成長か。
僕は場所に飽きる事はあまりなく、どちらかと言うと人に飽きる人間だと思っている。だから彼女出来ないとかいう話は辞めて欲しい。好きな人から愛を受ければその分その人を愛するのは当たり前だし、そこに飽きはない。
だからこそ、これからジョージアで1ヶ月ごとに新しい人が来る環境でお手伝いをさせてもらうし、それを楽しみにできている。今後、その人達との別れの時に、彼/彼女らに向かって涙を流す事はあるのだろうか。
トビリシへ
トビリシへ戻る列車も満席だった。やはり事前予約を推奨する。
行きよりも子供の数が多かった。座席の隙間からSwitchをじっと見られていたので、ドット絵のFFよりも動きの激しいSplatoonの方がいいだろうと、イカを操作して時が過ぎていった。
やはり尻は痛くなる。1度くらいはトイレへ行って色々リフレッシュすることをお勧めする。
バトゥミいいとこ3度はおいで
2泊3日の弾丸旅だったバトゥミ。ロープウェイに乗れなかったり、旧市街エリアの散策が十分に出来ていなかったりと時間が足りなかった。ただ食事には困らない上、とにかく黒海が綺麗。雪山を見つつ海も見られるいい土地だった。
1度ならず、3度訪れるにはいい土地だと思う。
そして、自宅の停電はいまだ復旧していなかった。