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悪役を書くなら、これだけは考えておこう。
■小説家・シナリオライター向け豆知識、始まります。
小説やシナリオの書き方を紹介しているサイトは多数ありますが、
私は基礎である「書き方」についてを語りません。
今日から紹介していくのは、
皆さんの「考え方」を補足するような豆知識になります。
それは構成だったり、言葉遣いや語彙だったり、
キャラクターの性格だったり。
どうやって書くのか、ではなく「どう考えればいいのか」を発信します。
しかし執筆を感覚的に行っている人も多いと思います。
芸術という面もありますので、そのような作り方もアリでしょう。
しかし感覚派の人であっても、知識のあるなしで作品の質は変わります。
何事においても知っている人が有利に立ち回れるのが現実というもの。
小説家、シナリオライターとして日々作品を書いている人。
それらを目指し、研鑽をしている人。
趣味としてネットの片隅でペンを持つ人。
これは物語を描く、あらゆる人へ向けた、思考の豆知識です。
今日のお題は「悪役の描き方」。
■善と悪の判断基準は無数にある。
物事には、「善悪」が存在します。
その善悪について一度知識を深めてみましょう。
やっていいこと、悪いこと。
その中でも分かりやすいのは「法律」です。
国によって定められた善悪は、国民全員に共通するものでしょう。
しかし人によって違う場合もありますよね。
人格、思想、人間関係、時と場所……
そういった人間を構成する様々な要素によって、
物事が善であるか悪であるかの考えは変わっていきます。
つまり善悪の多くは人によって受け取り方が違う。
誰かにとっての善は、誰かにとっての悪なのです。
そして、この善悪は人にも存在します。
「善人」「悪人」という言葉もありますが、
どちらか一方という訳でもないと私は思います。
つまみ食いのようなほんの小さなものから、
法律を破ったり、他人を傷つけるという大きなものまで。
人は善いことをする時もあれば、悪いことをする時だってある。
しかし人には小さなものより大きなものの方が見えやすく、記憶に残る。
そうして見えてしまったものから、その人が善人か悪人かを判断します。
つまり善人、悪人というものは「誰かから見た人の一面」なのです。
さて、善悪について少し考えが深まりました。
前提として頭の片隅に置いておき、ここから本題へ向かいます。
「悪役」の描き方を考えていきましょう。
悪人は、善人よりも書きにくい。
悪役……つまりは物語において「悪人」となるキャラクター。
作品によっては必要不可欠な役だと思います。
特に「ドラゴンクエスト」のように主人公(勇者)が悪役(魔王)を倒すこと、つまりは勧善懲悪が物語の軸になっていると尚更でしょう。
基本的に悪役と思われるパターンは2つ。
・主人公側から見て「悪」と考える行動を起こすキャラクター
(「ガンダム」の敵勢力たち、「SHIROBAKO」で問題を起こす相手)
・常識的に見て「悪」と考える行動を起こすキャラクター
(「DEATH NOTE」の夜神月、「OVER LORD」のアインズ、など)
この通り、悪役は主人公であってもあり得る。
主人公が悪役の場合は特に「ハードボイルド」や「ピカレスク」といった物語のジャンルに多くあります。
そんな悪役たちを描く機会があるかと思いますが……
善人と比べて非常に書くこと難しい役になります。
何故なら悪役を出す場合、「悪事」を見せる必要があるからです。
悪事そのものが難しいのではありません。
それを描いた際に生まれる「影響」に問題があるのです。
考えてみてください。
悪事……つまり「悪いこと」を見たり聞いたりした際に、
あなたの気分はどう変化するでしょうか?
例えばニュースで犯罪について知ったり、目の前で犯罪を目撃したら。
おそらく、
ほとんどの人が「嫌な気持ち」や「不安」になるとは思いませんか?
自身が悪いと思っていることなので当たり前と言えばそうですが。
ユーザーや読者に対しても、悪事はネガティブな感情を与えます。
ネガティブな感情に変化するということは、
すなわち「ストレスが溜まる」ということでもある。
ここが最大の問題点になります。
悪役を出すには、そのキャラクターによる悪事を描かなければならない。
しかし悪事を見せると、ユーザーはストレスを受けてしまう。
この「悪役を出す=ストレスを受ける」という問題を解決しなければ、
物語において悪役そのものが足枷となる可能性があるのです。
■悪役を出すには「ストレスを軽減する」こと。
しかし悪役を出さない、という訳にはいきません。
ならばどうすればいいのか。
その方法は曖昧に言うと一つです。
「ユーザーのストレスを軽減させること」
具体的な方法は無数にありますが、
よくあるのは「悪事を行う理由を描き、共感させること」です。
いわば同情を誘うようなイメージですね。
何故その悪事が行われたのかを見せることで、
「なら仕方ない」とまでは行かずとも、
「駄目だとは思うが、その気持ちは分かる」という風に思わせる。
例えば「コードギアス」の主人公であるルルーシュは、
やってること超悪いです。レジスタンス(権力などに抵抗する勢力)です。
でも滅茶苦茶人気高いですよね。
それはルルーシュが悪事を行う理由をしっかりと描いているから、
だと私は考えています。
最後とか超感動しますからね。(当社比)
他にも「悪役にポジティブ要素を追加する」という方法もあります。
一番多いのは「格好良さ」でゴリ押しですね。
「デュラララ!!」の折原臨也とか昔めっちゃ人気ありましたよね。
悪役でも人気のあるキャラはイケメンが結構多いです。
……いやまあ善人でもそうか。
他にもギャップになるポジティブ要素を入れたりします。
悪役だが、仲間を見捨てることは絶対にしない。
悪役だが、正々堂々とした行動しかしてこない。
悪役だが、女性には紳士で優しい。
などなど。
それにほら、不良が捨て猫とか犬とか拾うやつ。
あれも言ってしまえばポジティブ要素と言えますよね。
「理由付けの追加による共感」
「ネガティブ要素を補う、ポジティブ要素の追加」
といった方法で悪役がもたらすストレスの軽減をすることが出来ます。
これ以外でもストレスの軽減にはいくつもの方法があるので、
自分なりの手段を考えてみるのもいいかもしれません。
■しかし問題がある。
ここで重大な問題も提示しておかなければなりません。
それは……
「ストレスは0ではいけない」
ということです。
物語に限らず、あらゆるものにおいてストレスは重要な要素になります。
ユーザー・読者を「次に進ませること」も出来れば、
「そこで辞めさせること」も出来てしまう。
何故そう言えるのか、その理由は――
次回、お話ししましょう。
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