派遣スタッフの教科書~派遣で働くコツ~ 【派遣スタッフの基礎知識】⑦雇用安定措置とは
こんにちは!
派遣スタッフの教科書と銘打って、人材派遣で働く方向けのTipsを紹介していきます。
【派遣スタッフの基礎知識】編の第7弾!
「雇用安定措置とは」
行ってみましょー!
「ひたすら具体的」で「生々しく」派遣スタッフの教科書を作るという狙いなので、僕の独断で、派遣で働く人が知っておくと良いことについて超実践的に解説していきます。
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※僕は事務系の一般派遣の営業経験が長く、ここでは主に登録型の人材派遣についての解説が中心になります。
雇用安定措置とは
すでに派遣スタッフとしての経験のある方は、同じ派遣先の同じ仕事で3年経ったときに
などと言われたことがある方もいるかもしれません。
この時、派遣会社側に起こっていることが、雇用安定措置という義務であり、その内容を知っておいていただけると、3年目に起こるこの現象を理解いただきやすいと思います。そして、中長期的なキャリアについて考える材料にしていただけると幸いです。
前回、派遣労働者個人単位の抵触日についてお話しました。
そこでも出てきました、厚生労働省の「平成27年 労働者派遣法改正法の概要」(2015年の派遣法改正のリーフレット)↓によりますと、
雇用安定措置について、
とあります。
また、対象者については↓の通りの記載があります。
ここでいう、「同一の組織単位に継続して1年以上派遣される見込みがあるなど一定の場合」というのは、下記の定義になります。
まとめた形で、言い換えると、
と言えます。
ちなみに、「①直接雇用の依頼」は、派遣会社が派遣先へ直接雇用の依頼をすることが義務であり、結果として直接雇用に至ったか否かは問題になりません。
重要なのは、派遣先ではなく、「派遣会社の義務」ということです。これを派遣先の義務と思ってしまうと、「何で正社員なれないんだ!?」と思ってしまう原因になりますし、分かりにくくなるので気を付けてください。
さて、ここで、こう思う方がいるかもしれません。
「いやいや、私はこの派遣先の仕事に3年もやって慣れているし、周りの人も良くて満足しているのです。なぜ、このまま継続させてくれないの!?」と。
僕も派遣会社に入った時、一番最初に疑問に思いました。「なぜ、期間を制限する必要があるのか・・・?」と。(ちょっと今とは法律が違いましたが)
ここまでこのマガジンを読んでいる人は、ある程度、イメージできると思うのですが、「雇用安定措置」の意図を説明します。
前提として、1年を超えて、特に3年を超えて同じ派遣先で同じ仕事に従事している方には、キャリア開発の観点から、同じ仕事に縛り付けてキャリアアップの機会を奪いたくないという考えがあります。
どういうことか?
それは、派遣という働き方に不安定な状態のままで縛り付けられることを良しとしていないということです。
つまり、
派遣先での直接雇用(できれば正社員)を希望する人にはその道を・・・①
違う派遣先でキャリア開発していきたい方にはその道を・・・②
どっちも無理なら、派遣元が雇用しなよ・・・③
まぁ、それか紹介予定派遣や雇ったままで給与払いながら就労支援するとか・・・④
という考えです。
②に違和感があるかもしれませんが、正社員の異動のように、「定期的に違う仕事にチャレンジして、キャリア開発をしていくべし。」という考えです。若干、理想論になりますが、経理3年のあと、営業3年、人事3年・・・とやってきた方は色々な仕事ができる人材に慣れるという考え方になります。
そして、雇用安定措置の思想が強く出ていると僕が思っているルールは③の、いっそ、派遣会社が雇え!というものだと思います。
この法律を初めて知ったときに、「派遣会社が全部雇ってたら潰れるわ!」って言ってた人がいますが(中小の派遣会社の社長でした。もう潰れたけど。)、これ、法律ですから。そのように改正されたということは法律を守ったら潰れてしまう会社なんて潰れろってことなんだと思います。
そんな流れで、
3年間、派遣労働者として従事して欲しいなら、とにかく雇用を途切れさせるな!
という、ルールが派遣会社に定められているのです。
それが「雇用安定措置」です。
無期雇用派遣は例外
前段で、派遣先は派遣労働者個人が3年を迎える時に
と聞かれることがあるという話をしました。
この中に雇用安定措置の説明で出てこなかった概念があります。
それは
・「無期雇用派遣に変更し、このまま働きたくないですか?」と聞かれる
ということの「無期雇用派遣」というものです。
たまに、無期雇用派遣に変更することを雇用安定措置の③派遣元事業主による無期雇用だと思っている方もいるのですが、これは違います。
③派遣元事業主による無期雇用は、あくまで、派遣会社の雇用になることで、いわゆる内勤社員になることを指します。言い換えると、派遣スタッフが希望すれば、派遣会社の営業などになれるということです。
決して、無期雇用派遣で雇い入れることではないのです。
では、なぜ、「無期雇用派遣に変更し、このまま働きたくないですか?」と聞かれるのか。
それは、
です。
対象外の理由は、無期雇用ならすでに雇用が安定しているからです。(そりゃそうだ!)
言い換えれば、
という、雇用安定措置とは似て非なる(雇用安定措置の手前の)提案なのです。
派遣会社の営業でも、いつの間にか勘違いして、「派遣先に雇ってもらうか⇒無期雇用派遣に切り替えるか⇒他の派遣先に行ってもらうか」と言う順番で考えがち(無期化にある程度、積極的な派遣会社であれば)ですが、本質的には、無期雇用派遣に切り替えるというのは
「雇用安定措置という4つの義務を果たすのではなく、その対象外になる無期雇用派遣に切り替えませんか?」
という提案なのです。
ちなみに雇用安定措置は、派遣スタッフ自身の意思が最も大切にされるところで、2021年に派遣法が改正され、派遣元は、雇用安定措置に関して派遣社員の希望を聞き、それを「派遣元管理台帳」に記録することが義務となりました。
当然、無期雇用派遣にしていく際にも、派遣スタッフの希望と法律への十分な理解が大切であることは言うまでもありません。(このあたりが適当な派遣会社は・・・気を付けてください!)
ここでは、無期雇用派遣は雇用安定措置の対象外ということを知っておいていただけると嬉しいです。
雇用安定措置のタイミング
また、雇用安定措置のタイミングについても、触れておきます。
こちらはそのタイミングについて、愛知労働局のリーフレットから引用したものです。↓
雇用安定措置を行うのは、このAのタイミングです。3年間の継続が見込まれた時点ですね。
上記の例なんかで、ずっと6カ月更新していたのに、急に3カ月更新に変更したり、2年と11カ月で終了するのはダメということになります。
当然、ギリギリに雇用安定措置の話をしてくる派遣会社があれば、それは論外です。
そのうえで、派遣スタッフの方もルールを理解して、3年目になるころの希望を考えながら仕事してもらえるととても嬉しいです。
3年目までに考えておくこと
3年目までに考えておくと良いことをまとめます。
冒頭で触れた、
という、派遣営業からの質問がすべてではあるのですが、直接雇用を希望するのか、他の派遣先での就業を希望するのか、派遣会社に雇われたいのか、(その取り組みがある派遣会社なら)無期雇用派遣への切り替えを希望するのかをイメージしておくと良いです。
どれもこれも、派遣先と派遣会社の都合も関係してくるので、これだ!と決めておく必要はないですが、このような選択肢があるということを念頭に置いて準備しておくと3年目で急に慌てたり、先々を不安に思いながら仕事する必要がなくなります。
また、ここでいう直接雇用は必ずしも正社員を指すものではなく、契約社員やアルバイトも含まれることと、無期雇用派遣も給料や待遇が良くなることを指すわけではなく、現状のままということも多いということも知っておくと良いと思います。
最後に
今日は、「雇用安定措置」について、説明しました。
非常に分かりにくく、派遣会社に丸投げしたくなる話ですが、派遣会社の営業がしっかりと理解しているか、親身に情報提供や支援をしてくれるかの保証はありません。残念ながら。しっかりしてほしいですけど・・・
派遣会社も頼りにしつつ、自分でも理解して準備していく。そして、上手に派遣という働き方を利用してほしいと思います。
※分かりにくいと思うので、質問や相談はオープンチャットでもメールでもTwitterDMでも、いつでもどうぞ!
次回は、「派遣労働者の特定行為の禁止」についてお話します。
こちら、超重要!です。具体的な攻略法みたいな話は別でやりますが、まずは概念を知っておいてもらえればという意味で解説します。この領域、今までは有料記事でしか書いたことがありません。(なんか、色々怒られそうで・・・w)
何とか、無料記事で書きあげます!
では、また!
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