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人材派遣利用マニュアル ~人材派遣利用のルール~ ⑨派遣先均等・均衡方式
人材派遣利用マニュアル ~人材派遣利用のルール~編を解説しています。
人材派遣を利用する際に知っておくと良いルールの紹介です。
今日は、第九弾!「派遣先均等・均衡方式」いってみましょー!
「ひたすら具体的」で「生々しく」人材派遣利用の教科書を作るという狙いなので、僕の独断で、派遣先企業が知っておくべきことについて超実践的に解説していきます。
シリーズのマガジンはコチラ↓
派遣先均等・均衡方式とは
前回のnoteでは派遣先均等・均衡方式と労使協定方式があって、派遣先均等・均衡方式が原則であり、派遣先の従業員と比較して待遇の均等・均衡を図るというところまで、お話をしました。前回のnoteはコチラ↓
今日は、派遣先均等・均衡方式の詳細を見ていきます。
派遣先均等・均衡方式とは何なのでしょうか。
ここから、全て情報の出どころは↓厚労省のガイドラインです。
かなりのボリュームですが、このガイドラインは、一通り読んでいただきたいなとは思います。(複数の人材派遣契約を活用している発注担当の方などは特に)
概要はこのnoteで伝えていきますが、サッとでいいので、読んでいただくと、全体像を掴めます。
また、どこにどんなことが書いてあるかを知っておくとかなり仕事が楽になると思います。
(とはいえ、大変なので最低限の情報をまとめていくのが、このnoteであり、このマガジンです。なるべく、かいつまんでお話しします)
では、早速、解説していきます。
このガイドラインによると、派遣先均等・均衡方式には4つのポイントがあるとのこと。
まとめると、
「派遣先の通常の労働者の基本給、賞与、手当、福利厚生、教育訓練、安全管理などの全ての待遇を対象に、①職務の内容、②職務の内容・配置の変更の範囲が同じなら同じ待遇、違うなら個々の待遇ごとに、性質・目的に照らして適切かどうか判断する。」
ということです。
「派遣先の社員と全く同じ職務で、職務内容や配置の変更の可能性も同じなら、全て同じ待遇にしなさい。そして、違うならちゃんと合理的に説明できる差にしなさい。」ということですね。
それをどう実行するのか
派遣先均等・均衡方式の意味合いは分かっていただけたと思います。
で、問題のそれをどうやるの?と言うことですが、そちらもガイドラインに記載があります。
まず、派遣先均等・均衡方式を選んでいる派遣会社(派遣先均等・均衡方式か労使協定方式か選ぶのは派遣会社です)から派遣スタッフを受け入れるにあたって、派遣先は比較労働者と言うものを決める必要があります。その比較労働者の待遇と比較して派遣労働者の待遇を派遣会社が決めていくのです。ちなみに比較労働者選定の判断基準はこのように記載があります。↓
①から順の優先順位で比較労働者を選定します。
そして、比較対象となる待遇は基本給、賞与、手当、福利厚生等の全ての待遇です。派遣先は、派遣会社が派遣労働者の均等・均衡待遇を確保できるよう、以下の情報を、労働者派遣契約の締結に当たって、あらかじめ、派遣労働者の従事する業務ごとに、提出する必要があります。
職務内容も、職務内容・配置の変更の範囲も同じなら同じ待遇、違うならそれに見合った合理的な差であることを説明できるようにしておかなくてはならないのですが、それをどう判断するかは、ガイドラインのP34以下を読んでみてください。
派遣先としては、派遣会社対応する待遇決定については、おおよその手順をイメージできていれば、十分です。なぜなら、比較労働者の待遇を間違いなく提示できていれば、派遣先の責務は果たしているからです。
派遣先均等・均衡方式を選択している派遣会社は少ない
ここで、もっとも知っておいていただきたいことをお伝えします。それは、
派遣先均等・均衡方式を選択している派遣会社は少ない
ということです。
実は8割を超える派遣会社が労使協定方式を選んでいると言われているくらい労使協定方式が主流なのです。(厚生労働省「労働者派遣法第30条の4第1項第2号イに定める同種の業務に従事する一般労働者の平均的な賃金の額に係る通知について」)
僕が所属している会社も労使協定方式ですし、実際に僕は派遣先均等・均衡方式のみを採用している会社を3社しか知りません。(それも、全ての派遣契約ではなく、一部で派遣先均等・均衡方式を採用している会社も含んで)
そういった意味で、見聞きしたことがあるような派遣会社へ、今から新たに発注しようとする場合、労使協定方式になるであろうことを前提として準備しておくのがスムーズです。
また、すでに派遣会社と取引している場合の多くは労使協定方式を選択しているのではないでしょうか。
次回、労使協定方式について解説しますが、その上で、派遣先均等・均衡方式を採用している派遣会社と取引したい場合、改めて、ガイドラインを見直して、派遣先均等・均衡方式を採用している会社を探すべく問合せをする形を取るのが良いかと思います。
派遣先均等・均衡方式が選ばれにくい理由
では、なぜ派遣先均等・均衡方式はを選択する派遣会社が少ないのでしょうか。
ほとんどの派遣会社が労使協定方式を選択する理由とも言い換えることができますが(派遣先均等・均衡方式が原則なのに!)、その理由は、おおよそ3つです。
①さまざまな派遣先の賃金水準や賃金テーブルにそれぞれ合わせることが煩雑(お客様の数だけルールを持つ必要が!)
②派遣先から情報提供を受けられなければ労働者派遣契約を締結できなくなる
③情報提供の範囲が多すぎて煩雑
また、そもそも、いろいろな派遣先で仕事してもらう性質から、(日本の雇用形態の中では唯一と言っていいくらい)それぞれの職種ごとの、そもそもの概念である同一労働同一賃金(正規、非正規とか関係なく、ただただ、同じ仕事なら同じ賃金)に最も近かったのが派遣と言う働き方と言えます。、すでにある程度の賃金テーブルや市場水準の待遇があるので、労使協定方式のほうが導入のハードルが低いというポイントもあります。
ただし!派遣会社は基本的にサービス提供者です。
そして、派遣先は派遣会社にとって、顧客です。顧客が労使協定方式ではなく、派遣先均等・均衡方式を望む声が大きければ、いかに上記の理由があろうと、派遣先均等・均衡方式を採用することでしょう。
つまり、本質的には、派遣先側に派遣先均等・均衡方式を採用して欲しいと望む声が少ない(労使協定方式を望む声が多い)ことが、派遣先均等・均衡方式の選択をする派遣会社が少ない理由であると言えます。
このマガジンが、「派遣先向けの派遣利用マニュアル」としているのに改めて、派遣先が派遣先均等・均衡方式を敬遠する理由を語るのも何だか恥ずかしいですが、その理由は主に、以下の3つです。
①待遇情報が出しがたい
②間違ってたら自分たちの責任でもある
③労使協定方式のほうが対応するべきことが少ない
「①待遇情報が出しがたい」については、ハローワークに出すような求人票に大体載ってるじゃん!すでに公開してるでしょ!って僕は思っていましたが、実際、比較対象労働者の選定と待遇情報を開示すること、それに携わる煩雑な手続きを敬遠して、労使協定方式を採用している派遣会社との取引を望む派遣先企業は沢山います。
特にガイドラインのP37にあるように、↓待遇情報の提示が必要なのですが、ここまでの情報提供は避けたいという声を耳にすることが多いです。
そして、比較対象労働者の選定方法や情報提供の内容が間違っていると派遣先の責任も問われます。(②間違ってたら自分たちの責任でもある)↓
勧告・公表の対象となってしまうことになります。行政指導までとはいえ、担当者としては、苦しいものがありますよね。
さらに言えば、比較対象労働者の情報提供は非常に煩雑です。
労使協定方式の派遣労働者に限るということで発注すれば、比較対象労働者の情報提供は不要になります。(労使協定方式に限らなければ、発注時点で、待遇を決めるために情報提供が必要となります)そして、労使協定方式については、ここまでの対応は発生しません。(③労使協定方式のほうが対応するべきことが少ない)
この①②③を理由として、労使協定方式を採用している派遣会社との取引を望む派遣先が大多数となっており(特に派遣利用の多い大手企業ほど)、実は、派遣会社が労使協定方式を選択する、最大の理由ともなっています。
最後に
今日のnoteでは、人材派遣における同一労働同一賃金について、2つある選択肢のうちの1つである「派遣先均等・均衡方式」の内容を解説しました。
次回は、もう1つの選択肢である「労使協定方式」について、解説していきます。その後、改めて2つの待遇決定方式について、比較していきます。
そこまでを理解すれば、同一労働同一賃金による2020年4月法改正の概要がおおむね理解できると思います。そして、そこまでにお伝えした「人材派遣利用のルール」の章?シリーズ?と併せれば、人材派遣というサービスの輪郭ははっきり捉えていただけると言ってもいいのではないかと考えています。
人材派遣会社の営業とも、かなりフラットに対話ができるのではないかと思います。(下手したら、派遣会社の営業よりも詳しい可能性も・・・)
では、また!
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