心理学

元心理学徒が本気で心理学の全体像とおすすめ書籍17冊を紹介する。

高校2年生の時、直感で人の心が分かれば人生上手くいくんじゃないかと思い付いてから8年が経った。

その直感を信じて良かったと思えるくらいには、今もなお心理学について学び考えるのが好きだし、心理学は社会や組織の役に立つ可能性を秘めている学問だと思っている。

一方で、心理学について網羅的にまとめられているコンテンツは意外と少なく、本屋やSNSで見かけるのは小手先のマーケティングテクやモテテクが多い。

もっと心理学の面白さを共有したい!

それなので、このnote心理学に興味があるけれど、どこから手を付けたらいいか分からない人の指針になると信じて、心理学とその学習法についてまとめてみることとした。

僕はあまりアカデミック領域に強くないので(ピアジェ、フロイト、ユングなどの話)、より実用的ですぐに使えるけど、本質的な心理学の概念について解説していきます。


1.心理学は主に5領域ある

心理学について、様々な分類の方法があるが、ここでは大学時代の分類方法をそのまま利用する。

各領域を一言で説明すると、以下のようになる。

教育心理学:主にモチベーションについて
社会心理学:主に対人関係について
実験心理学:主にホルモンについて
臨床心理学:主にメンタルヘルスについて
発達心理学:主に人間の発達について

*分類は母校筑波大学心理学類の領域に基づいている

これらはあくまでどの切り口から見たら1番分かりやすいかを示す指針でしかないので、綺麗に分類されるわけでもない。

勿論、実際の生活では5つの領域が相互作用をしあって、様々な感情が生まれることになる。

ただ、心理学を学ぶにおいては、どの分野に関心が高いかを踏まえた上で学ぶと分かりやすいと思うので、1つ1つ解説する。

また、巷で話題のポジティブ心理学やアドラー心理学、恋愛心理学などは、大体これらが派生して生まれたものであったりする。


2.教育心理学

<一言で説明するメリット>
モチベーションの高め方が分かる

教育心理学は主に、認知や動機付けに対する領域である。例えば、

子どもがテストでいい点数を取った際に褒められると、「褒められて嬉しい」認知と「テストでいい点数を取った」事実がリンクし、「テストで点を取ることはいいこと」だと学習し、また「いい点を取りたい」動機が生まれる。

このように、人は日常生活の様々な出来事から認知と学習を繰り返し、何かを行う動機(モチベーション)を高めている。

そしてこの原理を活用して、より人の行動を促進させるためにどんな手法を用いると良いのかを追求するのが教育心理学である。

まずは基本的欲求を理解する

教育心理学の理解のためには、まず人間元来の欲求を理解することが重要である。

例えば、人類が生存するためには共同生活が必要であるため、人間には他人に対して優しくすると幸せな感情が生まれるようにプログラミングされているのだ。

そのため、基本的欲求を理解することで、人がどんな体験をすれば、喜び、行動したくなるのかを理解することができる。

(手早く学びたければ下記のnoteを読んで欲しい)

これら概念が1番分かりやすくまとまっているのが、ダニエルピンクのモチベーション3.0なので、入門書としておすすめしたい。

教育心理学ではこれらの基本的欲求を基に、具体的な行動について実験を行うことで、

・過程を褒めると成績が伸びやすい
・期待をすると成績が伸びやすい
・井の中の蛙の方が成績が伸びやすい

など、現在よく聞かれる理論が立証されている。これらの基礎理論については下記の書籍にまとまっている。

認知心理学をもっと詳しく

行動に関係するモチベーション以外にも、快適・不快など人間は様々な感情を認知する機能を兼ね備えている。これらについて深掘りしたのが認知心理学である。

この領域は専門書だと理解が難しいので、認知心理学に関連する書籍を3冊紹介する。

①任天堂がゲームを面白くプレーしてもらうために利用している人間の認知システムについて。

②人間の意思決定はどのように決まっているのかの科学(やや難しい)

➂巷で言うメンタリズム。ある認知に対して無意識で生まれる行動とは。

心理学部だからと言って心は読めない

因みに、メンタリズムについては、人間に備わっている喜びや恐怖に対して無意識に生まれる反応パターンを学習し、徹底的に観察眼を磨くことで初めて可能になる。

心理学を学んでいると伝えると

「心読まれる!」

のような反応がよくあるが、実際に心を読むためには、この領域の専門知識に加え、観察眼を手に入れるための相当な訓練が必要なので、一般的には人の心は読めない。(勿論、僕も不可能である)

教育心理学まとめ
①人の行動は認知と学習で動機付けられる
②認知は基本的欲求に基づくことが多い
➂理解すると自分は人の動機付けに使える


3.社会心理学

<一言で説明するメリット>
対人関係を上手く構築できる

社会心理学は主に人と人との関係や、集団の中で起こる心理についての領域である。例えば、

【返報性】
受けた恩は返したくなる法則。お願い事を聞いてほしい時は、先に何らかの形で恩を売っておくと、それより数倍の見返りだとしても容易く返ってくるようになることが多い。

に代表されるような、人と人との関係で働く心理である。基本的な社会心理学の概念については、名著「影響力の武器」に集約されているので、少し分厚いが読んで損はない。

行動経済学

また、心理学に限りなく近い領域で、行動経済学が存在する。以下の質問について考えてみて欲しい。

A. 無条件で100万円もらえる
B. 1/2の確率で200万円もらえる
C. 必ず100万失う
D. 1/2の確率で200万失う

両社とも経済的に考えたら、変化はないから50%に収束するはずだが、実際にはAとDを選んだ人が非常に多かった。(損失回避の法則によるもの)

このように、社会的な事象に対して、経済学と心理学を絡めた領域が行動経済学である。ダンアリエリーの予想どおりに不合理が入門書として良い。

その他の社会心理学

また、俗に言う恋愛心理学やカルトなどもこの領域である。大学では、モテなかった原体験から恋愛心理学を研究している教授がいて、1番の人気講義だったのが懐かしい。

心理学の本筋とは少し逸れるが、社会という意味では、宗教にハマる心理について描写してある「完全教祖マニュアル」もおすすめだ。

蛇足ではあるが、大学では社会心理学の授業で最近はやりのマインドフルネス瞑想についての授業があったのでこちらも紹介しておくこととする。

(なぜ社会心理学の授業で習ったのかはよく分かっていない)

マインドフルネスも決して怪しい領域ではなく、社会ではなく自分の内側の心理に目を向けることで、脳に一定の好影響があると実証されているである。

社会心理学まとめ
①社会事象と心理学の掛け合わせ
②勉強すると対人関係が円滑になる
➂恋愛やカルトについての研究も存在する


4.実験心理学

<実験心理学のメリット>
より科学に基づいて感情を変えられる

実験心理学は広義の意味を指すので、定義が難しいが、ここでは神経科学や脳科学の領域に近いと理解していただけると良いと思う。

教育心理学や社会心理学の研究は、被験者の行動やアンケートの回答に基づいて行うことが多いのに対して、実験心理学の分野ではホルモンや心拍数の変化など、より生理反応に基づいて立証する領域である。

そのため、人間ではなくマウスなどを実験に使うことも多いのが実験心理学の領域だ。

この領域で1番知るべきなのが、感情をつかさどる4つの脳内ホルモンについてである。これら4つのホルモンを操ることで、より確実に幸福に近づくことができるようになる。

ドーパミン:成長で生じる興奮物質
アドレナリン:刺激で生じる興奮
物質
オキシトシン:対人関係で生じる幸福
物質
セロトニン:運動や日光で生じる幸福
物質

下記の記事が分かりやすく解説しているので、ショートカットしたい方はおすすめだ。

この領域は1番心身の健康と結びつくため、これらを活かして幸せに生きるための方法が多く紹介されている。

「最高の体調」は睡眠、運動、ストレスに着目して、心身の健康を科学的に実現させるための本であり、この本の内容を実践すれば確実に人生が充実するので必読である。

そして、この4つのホルモンの中で特に幸福感に直結するのが、オキシトシンと、セロトニンである。

オキシトシンについては、下記の書籍で詳しすぎるほどに解説してあるが、一言で言うと、題目の通り競争よりも愛と共感を大切に生きた方が幸せになれるよって内容である。

セロトニンについては、下記の本が性差を踏まえて丁寧に議論を進めていて非常に面白い。この分野は性別によって、ホルモンの分泌量が異なるので、性差について学ぶこともできる。

性差については、以下のような緩めの本でも知っておくと非常に役立つので、活字が苦手な方はこちらを読むと良いと思う。

他の脳内物質としては、筋トレによって分泌されるモテや自信に直結すると言われいるテストステロンなども有名である。

とにもかくにもこの領域は即効性がある。

朝起きて太陽の光を浴び、セロトニンを分泌し、友人と仲良くすることで、オキシトシンを分泌し、ジムでテストステロンを分泌するだけで、瞬く間にQOLが爆上がりするのだ。

教育心理学や社会心理学と異なり、ある程度個人で解決するので、すぐに行動を起こして日常を変えたい場合は、この辺の領域を学習するのが1番おすすめである。

実験心理学まとめ
①4つのホルモンは必ず押さえよ
②特にオキシトシンとセロトニンは重要
➂明日からでも生活を豊かにできる


5.臨床心理学

<臨床心理学のメリット>
効果的に悩み相談を聞くことができる

臨床心理学とは、主にカウンセリングやメンタルヘルスについての領域である。臨床心理学の中で有名なのが、認知行動療法で、例えば、

思い込みで落ち込んでいる人が、カウンセラーとの対話で想いを言葉にすることで自分の感情を正しく認知し、課題を解消するために行動を考え、行動後の変化によって悪い認知を解消する。

ように、カウンセリングだけでなく行動も一緒に行うことで、病みの原因となる課題を解決する方法である。

この領域においては、臨床心理士という資格が存在するほど専門性の高い領域なのであり、僕は学部で卒業したため資格を持っていないので、言及は避ける。

新概念ポジティブ心理学

一方で、新しい概念として、ポジティブ心理学というものが生まれてきた。

特定の課題を解決しなくても、ポジティブな認知で課題を忘れるほどに強くなっちゃえば何とかなるんじゃないの。

のような方法である。こちらは臨床心理学に比べて介入のハードルが低く、よく書籍なども出版されている。

幸せについて科学するのであれば、以下の2冊はおすすめである。

ポジティブ心理学の基本的な考え方は、

成功したら幸せになる。

のではなく、

幸せであったら成功する。

という考えであり、「幸福優位7つの法則」では、ある一定期間の幸福度とその後の年収を追跡調査を行うことで、幸福であることの優位性が証明されている。

幸せになるための条件は?

そしてポジティブ心理学では、幸福感と相関性の高い項目を調査によって、明らかにしている。

<相関の高い項目抜粋>
・感謝すること
・楽観性
・自尊心
<相関の低い項目抜粋>
・社会階層
・収入
・知能
↓データ↓

これらの事実を知っておくと、幸福になるための遠回りをせず、人生を上手くいくために一直線で活動できるようになる。

あまり多くの人には明らかになっていない事実ではあるが、非常に重要な事実だと思っている。

無意識や潜在意識について

また、ポジティブ心理学と近い領域の話だと、無意識や潜在意識も最近活発である

メンタルヘルスや幸福感の領域は、脳内ホルモンと比べると主観的であり実証しにくいので、より哲学的な話になってくるが、意外と科学的根拠も存在していて、奥が深い分野である。

以下の本は、

呼吸を意識すると苦しくなるし、寝れないと思うと寝れなくなるし、熱いと思うと熱くなるし、考えれば考えるほど上手くいかなくなる。無意識が1番最強だ!

のように、抽象度が高く理解の難しい領域を、ストーリー調で納得感高く説明している本なので、潜在意識に興味があれば読むといい本だ。

臨床心理学まとめ
①基本は認知行動療法がメインである
②専門性の高い分野であり習得が難しい
➂最近はポジティブ心理学が流行


6.発達心理学

<発達心理学のメリット>
人の成長とは何かを言語化できる

発達心理学は人の成長を定義し、科学したものである。そのため、幼児心理学、青年心理学、老年心理学など、発達段階に合わせた学問が存在している。

成長の定義だとイマイチピンとこないと思うので例を挙げると、

最初は自分の母親を「ママ」という具体的な固有名詞として理解するが、成長すると「母親」という親子関係としての抽象的な概念として理解できる。

のように、人間が物事を見る視点の成長について構造化したのが発達心理学だ。

この領域に関心がある方は大分コアな方だと思うが、実際に社会で使えるのは大人になってからの話が主だと思うので、それらを中心に解説する。

成長とは抽象度が上がること

さっきの「ママ」と「母親」の例のように、一言で説明すると、成長とは抽象度が上がることと言える。

これを大人の世界に結びつけると、

①歴史から教訓を学ぶことができる
②他者の立場を想像することができる

など、より深い思考が可能になります。これらの話に興味があるならば、下記の本がおすすめです。

発達心理学まとめ
①人の心の成長過程を定義した心理学
②幼児から老年まで存在する
➂抽象度が上がることが成長である


7.大学の心理学類(学部)について

最後に心理学部への入学を検討している人や、心理学部の友人との話題作りのために、大学で学ぶ心理学について少し話すこととする。

(あくまで筑波大学人間学群心理学類の実体験に基づきます)

大体、心理学を学んでいることを話すと、

「あれでしょ、心読めるんでしょ!」
「カウンセラー目指してるの?」
「えー、心理学って面白そう!」

のような質問が飛んでくる。

しかし、心なんて読めるわけがないし、カウンセラーも目指していなかったし、大学で学ぶ心理学は面白いとイメージしていた心理学とは少し異なっていた。

なので、心理学類で学んだことについて、3つの観点で話すことにする。

①日常で使える心理学はほんの一部

このnoteで紹介した本や、テレビでよく見る心理学の内容をイメージしているのであれば、大学の授業はそれとは異なることが多い。

巷でよく聞く心理学は数ある概念のうち、日常生活で使える面白そうなものを抜粋したものにすぎないということだ。

視覚や聴覚などの高校生物みたいな内容だったり、ユングやフロイトなど小難しい話だったり、一見人間と関係なさそうな動物の生態についてだったり、哲学的によく分からない認知の理論だったりが7割を占めている。

裏を返せば、この本で紹介したような内容を学びたいならば、心理学部に入る必要はないし、そういう期待をして入るならば、ガッカリ体験が待っているかもしれない。

②実験や研究への比重が高い

また、高学年になると、実験や研究への重きが高くなる。つまり、既存の心理学の概念を学ぶのではなく、それらを応用し新しい概念を立証できる力を要請することが学習の目的となる。

そのために、英語の論文を読んだり、研究方法ついて学んだり、統計について学んだり、ラットを扱ってみたり、アンケートの作り方について学んだりが多くを占める。

例えば、ノスタルジックな物語を読むと、社会との結びつきを感じやすくなるのかとか、恋愛経験があると人に対して優しくなれるのかとか、そんなニッチな研究が溢れかえっている。

➂ごりごり統計と分析をする

上記の通り、実験や研究に重きを置いているため、それらの結果を証明するために心理統計学を学ぶことになる。

(センター数学が必修な国立だったからで、私文だったらここまでごりごりやるかは分かりませんが)

重回帰分析や検定などの手法から、誤差や信頼区間、サンプリングなどの概念からガッツリ教わることになり、ソフトを使って実際に分析も行うので、ある程度の統計学は扱えるようになる。

これは心理学類で良かったと思うことの1つであり、マーケティングで分析を行う際や、アンケートを取る際に非常に役に立っている。

相関と因果の違いだったり、誤差と検定の理解だったり、サンプリングの偏りや外れ値だったりを理解しているだけで、数字を見る視座が2段階くらい上がるように思う。

番外編:変わり者が多い

心理学部に入っている人は、大体変わり者だ。俗にいうクラスの中心的人物で話が面白くて、とかそういうタイプの変わり者ではない。

大学でわざわざ心理学を学ぼうだなんて思う時点で、大体は何らかの闇を抱えている人であるか、相当なもの好きだ。

実際、半分くらいがカウンセラー志望であることから、相当な原体験があって、心理学専攻という意思決定を行っているのだと思う。

大学の心理学まとめ
①日常で聞くのとは全然違う
②実験と研究ばかり
➂統計ガッツリ使う


あとがき

心理学への想い

僕は高校時代に心理学に出会うまで、怠惰で、自分に自信がなく、幸福感を感じることもあまりなかった人間であった。

それが心理学との出会いで、人が変わったかのようにポジティブになったし、無理なく行動できるようになったし、幸福感をちゃんと味わえるようになった。

科学の力は偉大というのは本当で、心理学に基づいて実践してみるだけで、想像もしなかったような感情を抱き、行動が可能になる。

そんな心理学の力を知っているからこそ、もっと多くの人に知って欲しいと思うし、心理学の力で世の中をよりよくしていけたらと思っている。

ビジネスと心理学

そして、ビジネスと心理学は非常に親和性が高い。営業にもマーケティングにも、マネジメントにも全てにおいて人の心は左右するので、理解しておくだけで優位に物事を進めることができる。

特に自分も含めてモチベーションをコントロールできるようになると、成果が飛躍的に向上するし、ここをハックしているビジネスマンは中々存在しないので大きな飛び道具になる。

まだ、SNSバズる方法を学ぶくらいなら、根本の心理を理解してしまった方が応用がきく。

ビジネスであっても、なくても、是非心理学を学んでほしいと思う。

久方ぶりに気合入れてnote書いたので、スキやSNSでのシェア、コメントいただけると嬉しいです!ガンガンお願いします!

最後まで読んでいただきありがとうございました!


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りょん
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