本当に「大河ドラマ級」の漫画(必読)
「村上もとか」さんの作品と言えば、2009年にドラマ化された「JIN―仁」を思い浮かぶ方が多いかもしれませんね。しかし、私は、村上もとかさんの作品の中では、小学館の「週刊少年サンデー」に連載された「六三四の剣」が一番のお気に入りです。また、この作品は、村上もとかさんの代表作と言われているだけに、やはり、当時は大ヒットを記録したそうです。因みにアニメ化やゲーム化もされたそうな人気だったとか。私も友人の勧めで後追い読みをして、一発でドハマりしました。剣道に全く詳しくない私ですら、その壮大な世界観に圧倒されたほどです。大袈裟かもしれませんが、それは、とても漫画とは思えないほどのインパクトを受けました。
「六三四」は主人公であり、彼が赤ん坊から大人になるまでの成長を描いた、まるで大河ドラマを超えるようなストーリーです。その中で、ライバルや親子の関係、闘い、友情、淡い恋愛、そして死など、全ての人間的要素が詰まっています。
少年誌に連載されたものの、明らかに、他の漫画とは一線を画しています。ストーリー全体として、まるで薄っぺらくなく。そのストーリー構成は、それ以降の漫画の主流となってしまった派手な演出や露骨にキャラクターを増やす。そういった要素に頼らずにとも、絞っているからこそ考え得るであろう、逆に複雑に入り組んでいる見事な描写には驚きの連続です。現代漫画のように単純な「頑張ろう!」や「泣けるなぁ」といった表現よりも、ずっと人間らしいリアルな感情が入っており、読者の感情の鋭い線に深くグイグイと引き込んでくれます。
私は、好きな文学を何度も読み返すことがありますが、この漫画も漫画も、珍しく同じように何度も読み返しました。剣道漫画として描かれていますが、剣道に全く興味がない人でも、一気に読んでしまうことができるでしょう。とはいえ、特に、やはり剣道少年には是非読んで欲しい一冊です。私も剣道の経験は体育の授業で数回した程度ですから。
80年代初期から中期にかけて連載されていたようですが、今でも全く古臭さなど感じません。最近、子供にも買ってあげましたが、食らいつく様に読んでくれました。
六三四は基本的に「上段構え」です。通称「火の構え」と言って気合と緊張が漲るものと感じるものが非常に強いです。チープな表現かもしれませんが、この漫画では、その上段構えからの渾身の一振りに掛ける鬼気迫る描写のニュアンスを強く感じるシーンが多い様に思えます。それも読者に対する或るメッセージの様な気がします。そういった訳でも、是非おすすめです。もし挫けそうな時にリアルに「上段構え」を思い出すかもしれませんからね。
少年にとか書きましたが、ぜひ、大人にもお勧めします。