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随想 「夢」が記憶を失った話

最近の私の「夢」(夜見る夢)はなぜかまるで記憶喪失になったかのように「最近のこと」を忘れている。

いつからこのようになったのだろうと思い返すと、拒食症になった頃にまで遡る。

2020年の夏頃ー私はひどい拒食症になって半年ほど寝込んだ。

それまでは半ば「もう一人でいい。」と頑なに意地を張っている側面があったが、いざ拒食症になって「もう死ぬのか。」と思うと強烈な寂しさが込み上げてきた。

寂しくて、ひどく人恋しくなって、以前関わった人、大学の先輩や小学校の頃の友達のことを考えるようになった。

夢の中で、私は以前関わってきた人に必死に連絡をとろうとした。
現実でも、今まで放置していたLINEの既読を次々につけたりした。

それでも、もう全て過去のできごとだった。

―と思われた。
しかし。

小学校の頃とても仲の良い友だちが何人かいた。
何年か前ぐらいに「元気にしてる?」というLINEが来ていた。

私はこのLINEに返信をしなかった。
それは本当にどうしようもない意地とちっぽけなプライドのためだった。

単純に、病気になって、美大にも落ちて、大学も中退して何者にもなれていない自分をみんなに見せるのが恥ずかしかった。惨めでたまらなかった。
そんな姿見せられない、見せてたまるか、とずっと思っていた。

でもその時はもうそんなことどうでもよかった。
そんなことかなぐり捨てて、とにかくみんなに会いたかった。

ダメ元でLINEに返事をしたら返信が来て、なんと自分と会ってくれることになった。
カフェで会う時、とてもドキドキした。
以前とは変わってしまった私を見てもう以前のようには戻れないかと思ったけど、「○○ちゃん変わってないな。」と言われて妙にほっとした。
久しぶりにくだらないことで爆笑した。

それから夢の話に戻るけど、その頃からずっと夢は現在のことを忘れたかのように、繰り返しもう過去であることを夢に見るようになった。
苦しくて、寂しくて、まだ一人だったの頃の夢。

起きて、(あれ、そっか今はもう昔じゃないんだ……。)と思うとびっくりする。
なんだかタイムスリップしたみたいで不思議だ。
もう今は以前とは違うんだと思うと安心する。

私も歳をとった。

しかし逆に、ずっと以前が懐かしくてたまらない夢も見る。

まだ姉が家にいて、家族4人で幸せに暮らしていた時のこと。

起きたら(ああ、姉はもう家にいないんだ…。)と気づいて現実に引き戻される。
何もかも幸せだった子どもの頃に還りたい。

私は今どうやら前に向かって歩み出している気がする。
それでも、病気じゃなかった頃に還りたいという気持ちは今でも消えない。
たぶん一生消えない。

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りゃん
創作頑張ります。

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