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【公益通報について解説】フジテレビとかUSAID問題を見て「自分のとこも改善していったらなぁ」って思ってますよね?

正直思いませんでしたか?
自分の周りもまともになっていってくれ!って。
でも、一人では立ち向かえないよなぁ…って。

そんな時に一助になるのは公益通報ですよね。

ということで今回は公益通報についてまとめていきます。

念の為最初に留意点としてお伝えしますが、
一般論の範囲でまとめているこの記事の内容が、それぞれの事案に対して実際の運用が違うことはあり得るという点だけご承知おきください。

まずはこの記事の概要から。

◆この記事の概要

■公益通報先としてどのようなものがあるのか
■どういう場合に保護してもらえるのか
■どこに通報するのがいいのか
 ・1号通報はリスクだらけ
   通報者の探索と不利益な取り扱いに対する法律の規定,罰則は無い
   ※国会で探索禁止義務化を含む改正法案が2025年初めに審議される
 ・2号通報は結局のところお役所仕事
   通報者に相当な知識能力が求められる
   通報者の個人情報が加害被疑側に知らされる事例が頻発している
 ・3号通報は特殊
   1号通報先、2号通報先、さらには通報者とすら
   全く違う論理や合理性があるメディアと利害が一致するのか

それでは、公益通報先の分類から見ていきましょう。

◆公益通報先の分類

■1号通報=内部通報

 従業員数が300人以上の事業者は、社内,組織内に内部通報窓口を設置する義務があります。
 300人未満の場合はできれば設置してくださいという感じ。
 ※公益通報者保護法に規定されている

■2号通報=所管の行政機関への通報

 それぞれの法律が所管されている行政機関への通報。
・刑法→警察本部
・鉄道営業法→国土交通省
・学校教育法→文部科学省
 みたいな感じですね。

 通報先の検索↓

■3号通報=メディアへの通報

 メディアの他には、
・労働組合
・消費者団体
・事業者団体
などが3号通報先としてあります。

ですが、公益通報を所管する消費者庁の方が
「3号通報はメディアへの通報ですね」と説明する程度に
メディア以外の存在感はかなり薄いと言っていいかもしれません。

では、公益通報者が保護される要件についてみていきましょう。

◆公益通報者保護の要件

言い換えると、どういうパターンだと保護してもらえるんですかということですね。
3つポイントがあるのですが、3つとも満たした場合に保護の対象になるということです。

■「通報する人」(通報の主体)は、労働者等(労働者・退職者・役員)

労働者は、労働基準法第9条で規定される労働者を指します。
 ・正社員
 ・派遣労働者
 ・アルバイト
 ・パートタイマー
 ・退職者(退職から1年以内)
あとは公務員も含まれます。

■「通報する内容」は、一定の法令違反行為

3つある保護要件の中で一番ハードルが高いのはこれですね。
ここについては重要なので公益通報相談窓口の方にも
何度も質問の角度を変えて確認しました。
「最終的には通報内容が司法の判断で違法となったら保護の対象となる」
とのことでした。
言い換えると
公益通報窓口に通報した時点では保護の対象とは確定しない
ということですね。
これも念押しして公益通報相談窓口の方に聞いたところ
「そうです」とのことでした。

また、”一定の法令違反行為”の『一定の』が何を意味しているのかというと
なんでも法令違反があればいい、わけではないということです。
「国民の生命、身体、財産その他の 利益の保護に関わる法律」
に限定されています。

公益通報者保護の対象となる法律 (消費者庁 公益通報ハンドブックより)

■「通報の目的」が不正の目的でないこと

 ・自分が利益を得る
 ・他者に損害を与える
 ・その他の不正が目的

に当てはまると保護対象からは外れるということですね。

ここまでで通報先の分類と保護される要件が分かった上で、例えば企業の不正や不祥事を知ってしまったとき、どこに通報するのがいいのか考えてみましょう。

◆どこに公益通報するのがいいか

メリット・デメリットをまとめつつ補足を入れていきます。

■1号通報=内部通報

⭕️メリット

 ⭕️通報先を見つけやすい
 ⭕️必要な調査や証拠収集を会社、組織側がやってくれる可能性がある
 
これは可能性はもちろんあるのですが、会社,組織側に一定の良心や自浄作用があって初めて真摯に動いてくれるというのも留意しておくべき点ですね。

❌デメリット

 ❌【重要】通報者の探索禁止は推奨されているだけで条文も罰則も無い
通報者探索=違法という認識の人も多いようですが完全に間違いです。
2025年1月27日から始まった国会で審議をされるべく
1号通報における探索禁止義務化を含む改正法案が提出されています。
※当記事の作成時点ではまだ審議は始まっていません。

内部通報窓口の設置義務があるような大企業は
大抵法務部があって、ある程度は違法性の有無の判断ができるでしょうから

 通報内容の違法性は立証出来なそうかを予想/確認
   ↓
 通報者を特定
   ↓
 処分する

これをやってしまっても法的な問題は全く無いということです。

 ❌証拠の隠滅, 偽造, 改ざんなど問題を揉み消される可能性
日々の業務の中で末端の社員、管理職、役員によって
自然な自浄作用が働かないような企業風土がある中で
内部通報を受けてどれだけ真摯に向き合ってくれるのかは大いに疑問ですね。

 ❌会社,組織側のジレンマ
 長期的な視点で見るとよりクリーンな状態で持続的に運営していくことの方が利益が最大化され得るが、その反面短期的に見ると内部調査や是正で大きな不利益が発生する事になります。
会社の長期的な発展に心底寄与したいと思っている会社員ってどれだけいるんでしょうね。
また、一般的に長期的に同じポジションで同じ責任を負う人どれだけいるのかというのもポイントになると考えられます。数年耐えれば人事異動だからそこまで隠し通そうというムーブは大いにあり得ると考えられます。

[1号通報まとめ]
このように法律の建て付けと会社,組織の構造や合理性の観点から
通報者にとって内部通報をするのは往々にしてリスクが大きいと考えられます。

どちらかというと会社,組織側にとって内々で事を納められるという
大きなメリット
がありますね。

通報者が1号通報を選ぶべきシチュエーションとなると、
・会社全体が内部通報窓口の存在意義を正確に把握していて法令を大きく上回る厳正なルールがある
・自分自身と通報対象者の社内の政治力や立場において優位性がある

などなど、あらゆる条件が整っている前提の上で初めて
内部通報が最良の選択肢になり得ると考えられます。

■2号通報=所管の行政機関への通報

⭕️メリット

 ⭕️違法性を事前に精査してくれる→公益通報者保護の対象になる確率が高くなる
所管の行政機関としても違法性がある事に相当程度の確信が持てないなかで安易に調査・処分など行うことはできないですから、ある程度通報内容の違法性が高いかどうかを精査してから着手されることになります。
前述の通り通報内容の違法性が保護要件の1つですから、事前に通報内容を精査されると保護の対象になる可能性も上がりますよね。

 ⭕️公的機関の介入で正しく改善される可能性が上がる
行政機関からの公式な調査処分が行われた場合に大抵の場合蔑ろには出来ないし、場合によっては公表された時の社会的圧力も併せて会社,組織のあり方を改善してくれる可能性があります。

❌デメリット

 ❌調査から結果の通知までに数ヶ月から半年程度要する
僕がリサーチしてみた複数の行政機関において、
名言してくれたりしてくれなかったりですが、どこも数ヶ月から半年はかかるようです。

 ❌違法性が客観的に明白じゃないと動いてくれないことが多い
メリットのパートにある
「違法性を事前に精査してくれて保護の対象になる確率が上がる」
ことの裏返しですが、あくまで2号通報先は行政機関であり司法の権限は無いので
おいそれと調査に着手、処分を下すということは出来ないということです。
断定的に判断や措置を下してしまうと行政が司法の範疇に踏み込むことになるので、三権分立が揺らいでしまいますよね。

 ❌尊大で傲慢な対応をされることが多い
この記事の作成にあたっていくつかの行政機関の相談窓口でお話を聞いてみました。その時の対応なのですが、
警察官が偉そうに喋ってくるあの感じ、わかりますかね。
あれのビジネスマナーはもうちょっとしっかりしてるバージョン
みたいな対応が多かったです。
 適当な説明でうやむやにしようとしたり
 必要な説明を怠ったり
 
ミスがあっても謝らなかったり
みたいな感じですね。
公益通報に真摯に対応しない職員や組織の職務怠慢を正当化しているんだろうなという印象を受けることは正直いくつかの行政機関に対して強く思いました。
そして、屁理屈の正当化自己保身みたいなことにも、なまじ賢いぶん防御力が高いように思えました。主観です。

ですが、そいう態度をとる、さらにはそれが許される組織風土が存在してしまう程度の良心や倫理観や責任感の方々が公益通報を受けてどれだけ真摯に対応するのかなというのは大いに疑問を持ったので、判断材料として記載しておく意義があると考えました。

 ❌申告の時点である程度の法的知識がいる
・告発内容がどの法律に違反しているか
・その法律を所管しているのがどの行政機関か
・通報時にどのような証拠を提出するか
・証拠の収集や保全はどのようにするか

こういったことはおおかた自分で出来なきゃいけません。

この負担は想像以上に大きいと考えます。
自分がこれは法律違反だ!と思えばいいわけではなく、客観的にそう思えるような証拠を自分で揃えて立証しないといけない、しかも多くの場合隠密にやらないといけないので、かなりの負担と難易度があります。
一応それぞれの行政機関で相談窓口を設置してあるので
ある程度の助言は受けられます。

❌【重要】個人情報が漏れる恐れ
リサーチ中にかなり驚いたことなのですが、
行政調査をするときに通報者の個人情報を加害被疑側に明かす行政機関があります。

消費者庁の方が
「年間に1,2度というレベルでは無く相当頻発しているので
申告時には加害側に個人情報は明かさないでくださいと念押ししてくださいね」
というアドバイスをいただきました。…びっくりじゃないですか?

こういった、一番知られたくない加害側に個人情報を明かされてしまった時に、公益通報者保護法によってその公務員が罰せられることは無いそうです。

公務員法の守秘義務違反によっても罰するのは難しいようです。

[2号通報まとめ]
お役所ならではのフットワークの重さや態度の悪さは否めません。
通報者の実務的な負担もかなり多くなってしまうので通報者にある程度の知識能力が求められます。
「行政機関だから大丈夫でしょ、国民のために動いてくれるでしょ」
という抽象的な安心感や信頼感で通報すると痛い目に遭う可能性も大いにあるし、
そもそも動いてくれないパターンは今回の調査の中では多いんじゃないかと感じました。

知識・能力がかなりあり、行政機関を過信せず自己防衛もしっかり考えた上で力を借りようという場合は2号通報が最適になると考えられます。

■3号通報=メディア等への通報

3号通報先については、圧倒的に数も種類も多い上に、公益通報を受けた際の運用指針も消費者庁によって明示されていません。

◇メディア→報道によって世間一般の世論形成
◇各種団体→業界内での世論形成と対象企業に対する直接的な発言力
といったアプローチによって外的圧力で改善を目指す通報先だと概ね考えられるので、改善につなげるためには通報先の一定の影響力が必要になります。

といった中で、消費者庁の公益通報窓口で「3号通報はメディアへの通報ですね」
と説明される程度に、実際機能するのはメディアが多いと仮定して、
メディアへ3号通報するメリットデメリットをまとめていきます。

⭕️メリット

 ⭕️違法性の証明が必ずしも必要ではない
 今まさに話題を掻っ攫っている”中居正広問題””フジテレビ問題”がいい例だと思います。沢山の弁護士がYouTube動画にて解説を行なっていましたが、
刑事裁判で性加害系トラブルでたたかう時に証拠を揃えることが困難で、
もしくはもっと前提のプライバシーの観点で泣き寝入りするしかないパターンも多いようです。
 でも週刊文春が報道しているフジテレビ問題については刑事裁判で公判維持できる程度の証拠が揃っているかというよりも、報道内容に対して名誉毀損で訴訟を起こされても耐えられるかどうかで報道するかどうかが決められているように見えます。

 ⭕️必要な作業を代わりにやってくれる可能性
  証拠収集に類すること→取材
  告発→報道
  通報者の保護→個人情報保護・情報提供者の秘匿

 ⭕️状況が是正される可能性
 メディアによる世論形成が達成された時に、会社経営・組織運営の合理性から考えても対処しないわけにはいかない状況に追い込まれるわけですから、世論という大きな力を得て問題が是正される可能性があります。

❌デメリット
 ❌必要以上に広く知れ渡ってしまう
 
加害側の人にとってみれば通報者は敵になるので、
 通報者に対して大量のアンチが群がって攻撃をしてくるという二次被害が考えられます。
 
 ❌通報者が特定されてしまう可能性がある
 通報を受けたメディア側は、今後もスクープを報道して販売や購読に繋げていきたいという企業としての論理がある中で通報者を秘匿しようとはするでしょうけど、メディア側がいくら秘匿しようがどこかでバレる時はバレるものです。
 例えばですが、被害者≠公益通報者なので少し例としてズレる部分はありますが
フジテレビ問題でいうと被害者女性が即特定され、多数の誹謗中傷を受けているといった実態がある以上、デメリット一つ目の過剰な周知と連動して結果的に通報者が特定、さらには攻撃されてしまう事も起こりえます。

 ❌話題性が必要
加害側に企業や個人としてかなりの知名度や関心がない限り、
一企業であるメディアにとって報道することの経済合理性が低いので
相当な出費をしてまで取材・リーガルチェック・報道などを行なっていく判断は難しくなってくると考えられます。

[3号通報まとめ]
実務的な負担はメディア側が負ってくれるかもしれないが、
メディア側の論理に適わないと取り扱ってくれなかったり
報道をしてくれても圧倒的な精神的負担はあると考えられます。

話題性が大いにあって、加害側と刺し違えてでも状況を改善したいという覚悟がある場合は最適な通報先になると考えられます。
もしくは話題性がある内容で通報者が特定できないような状況を自分で確保できるのであればこちらも最適な通報先になると考えられます。


まとめ


今回は公益通報者保護法について
法律の条文・行政によって公式に公開されている文書・相談窓口と、追加で複数の行政機関の運用を調査しました。

それぞれの通報先の優位性と大きなリスクがあることがおわかりいただけて、どこにどう通報すれば身の回りの不正などが正されていくのかのご参考になれば幸いです。

本文内容のご指摘や、ご意見ある方はぜひコメントしていってください!

【主な出典】

消費者庁 公益通報ハンドブック

https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_partnerships/whisleblower_protection_system/overview/assets/overview_220705_0001.pdf

公益通報者保護法 条文


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