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紅茶依存症『淡くする魔術』
酒が並ぶ棚の前で辺りを哨戒する人影があった。酒を買いに来た客が現れると棚を離れ、誰もいなくなると戻り、瓶を見ていた。小柄なその人はマントに体も顔も隠し、誰かの視線に触れられることを怖がっているかのような佇まいだった。居心地の悪さと良心とを天秤にかけて、酒瓶を一本、素早く掴み取る。マントの中に瓶をしまう。
しかし小柄なその人の動きは、何かを欺くには正直が過ぎていた。瓶を隠した姿は、嘘をつくには愛
酒が並ぶ棚の前で辺りを哨戒する人影があった。酒を買いに来た客が現れると棚を離れ、誰もいなくなると戻り、瓶を見ていた。小柄なその人はマントに体も顔も隠し、誰かの視線に触れられることを怖がっているかのような佇まいだった。居心地の悪さと良心とを天秤にかけて、酒瓶を一本、素早く掴み取る。マントの中に瓶をしまう。
しかし小柄なその人の動きは、何かを欺くには正直が過ぎていた。瓶を隠した姿は、嘘をつくには愛