おあげさんが無くて、味付け迷子になる夏
「最近、スーパーのお惣菜コーナーで、切干し大根とかひじきの炊いたのをみると、夏樹さんの顔が思い浮かぶんですよね」
以前、職場の同僚の方にそう言われたことがあります。
わたしがつくるお弁当のおかずには、決まって煮物が入っていたから。
切干し大根やひじき、あらめや菜っぱとお野菜を炊き合わせたものが好きで、お休みの日に多めにつくって、お弁当用に小分けして冷凍保存しておきます。(余った分は夜ごはんのおかずにします)
20代前半のころに、煮物をよくつくるという話を同世代の方にしたところ、「煮物って、難しくないですか?」と聞かれました。
たしかに、料理に慣れていないと、なんとなく難しそうな印象を持ちますよね。
でも、大丈夫なんです。
ざっくりとしたつくり方でも、おあげさん(うすあげ)という心強い味方がいれば、いつでもおいしく仕上げられる。
切干し大根の場合、ぬるま湯でもどすときに、昆布といりこもいっしょに漬けておきます。
おあげさんと、にんじん、たまねぎ、きのこ類、もどした切干し大根を焦げめがつくまでしっかり炒めて(ごま油とこめ油を使うと香ばしい仕上がりに)、昆布といりこごともどし汁を投入。
お塩とたっぷりめのお酒をくわえて、ふたをしてしばらく炊くと、おあげさんがふわぁっとふくらんできます。
このときのおあげさんのふくらんでいる様子を見るのが好きで、しばし眺めてから、お砂糖、みりん、お醤油で味付けをします。
具材がくたくたになるまで炊くのが好きなのですが、そうすると具材の全てにおあげさんの甘さとこくが染み渡って、食べるとほっとする味になります。
味が薄くなったり、濃くなったりしても、おあげさんが全体をまろやかに包んでくれるのですよね。
ところが、夏になると、わが家の冷蔵庫からおあげさんが姿を消してしまいます。
夏場はどうしても、重たくて食べにくいという声が家族から出てしまうからで、同じ理由で夏にはお目にかかれなくなる食材がいくつかあります。
わたしは、好きな食べものは季節を問わず食べたいほうですが、やっぱり家族にもおいしく食事を楽しんでほしいなぁ、という気持ちがあり、自分の好みだけを通すのは控えている、という次第。
そんなわけで、今朝、ことしはじめておあげさん無しで切干し大根を炊きました。
出汁がわりの具材が減ることになるので、そのぶん、きのこはたっぷりと、エリンギ・まいたけ・ひらたけの三種類をぜいたくにつかいます。
いつもの手順でつくり、最後にお醤油を入れた後に味見
をするのですが、なんだか寂しい感じ。
"こくというか…、奥行きが足りひんなぁ。かといって、お醤油足したら角がたちすぎるし、お塩入れても塩辛くなるだけやしなぁ"と思い、迷いながらも、それ以上手を加えるのは控えました。
今年こそは、おあげさん無しでも煮物の味付けに迷わないようになりたいなぁ、と思います。
そう思いつつ、やっぱり味方の存在は恋しくて、夏がはじまったばかりだというのに、はやくも秋の訪れが待ち遠しくなるのでした。