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「Silent(第4話)」優しい人々たちが様々な壁を作っている世界をシンプルに描くということ

4回目、ドラマは徐々に動いているが、描かれていくのは、紬、想、湊斗の心の微妙な変化だけだ。今回は、紬の仕事場も出てこなかった。そう、余計なお膳立てみたいなシーンがほとんどない。その分、視聴者は三人の心の中にシンクロしていくだけだ。そう、観ている方もシンプルにその微妙な心象風景の中に自分を重ねていくだけのドラマ。シンプルだといえば簡単だが、今までにあまり出会ったことのない構造のドラマに感じる。脚本家がシナリオを複雑にする術をまだ持ち得ていないからかもしれない。いや、書き込んだものを消去していってここに至ったなら、この脚本家はある意味、もはや一人前のクリエイターなのかもしれない。作り手のいろんなことを私に考えさせるのは興味深い。

今回も話の主眼は湊斗にある。彼が想と二人でしっかり向かい直すところから。二人が高校時代に戻る感じを想が音が聴こえない中でなかなか巧みに近づける感じが刹那いが、ここで想が「湊斗」と声を出す。それを聴いて、湊斗は「何も変わってない」と感じて、フットサルに彼を誘うまでになるわけだ。だが、それは、湊斗も高校時代に戻すものであったということ・・・。そして、フットサルの場で、紬が、湊斗が聴いていない想のことを細かく話すのを聴いて、やはり想には紬が必要?と思うのか、「別れよう」という言葉を吐く。ある意味、こういう三人の語る順番でドラマが作り上げられてくのは、悲しいが、世の中ではよくあることでもある。この別れの言葉が観ている方に違和感を感じさせたらドラマは壊れる。そういう意味で、すごくうまいとは思う。

とは言っても、紬は寝言で「湊斗」と名前を呼ぶ。そう、紬の心はまだ表では動き出していない。でも、徐々に高校に戻る自分がいるのは感じていただろう。湊斗のこの別れの言葉に対しての反応をどうするのかは、次週へのお楽しみということなのだろうが、興味深い。

今回、特に三人とは絡まなかった手話の先生の風間俊介は、学校で障害者である先生との会話が描かれる。健常者の風間が、障害者に壁を作るという話。そして、夏帆も、聾学校の同窓会の話を友人としていて想のことを「少し前まで聴こえていた」ということで、少し違うという話も出る。この辺りが今後、結構なドラマの中で問題になるのだろう。「聴こえない」ということが、人をどう拗らせるのか?それを、脚本としてどう描くのかは注目したいところ。

今回のメインはフットサルでの仲間たちとの再会だ。みな、スポーツの中では何も変わりがないという設定。でも、普通に考えて健常者とフットサルをやるのはかなり難しいだろう。人は音で行動を判断しているところが実に多い。イヤホンをつけて音楽を聴きながら歩いてると、人にぶつかりそうになることは私もよくあることで、そういう意味で距離感を持ってフットサルを健常者とこなすことはかなり難しいはず。その辺りに言及しないの少し甘い気はした。

とはいえ、そういう道具はそれほど問題ではないのかもしれない。あくまでも三人の心の微妙な変化みたいなものを描いていくことで、「恋愛」とか「人間」とか「暮らし」みたいなあり方について言及したいドラマであることには間違いないし、このシンプルさで、ここまで視聴者を引っ張るのはやはりすごい。そして、次週が早く観たくなる感じは名作になりつつあるということだ。


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