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「アンチヒーロー(第2話)」DNA鑑定捏造の闇と、正義とは何かという問い

ラスト近く、北村匠海は無罪になった岩田剛典が、自ら血のついたジャンバーを廃棄物処理場に投げ捨てるところを見てしまう。このドラマの冒頭にもあったように、岩田は明確に有罪だった。そして、それを検察の示した証拠が不十分ということに持っていき、いや、検察が証拠を捏造したという証拠を示して、印象操作の中で裁判員の気持ちも使って、長谷川博己は裁判で無罪を勝ち取ったということだろう。

もちろん、これから検察は控訴するのだろうが、そこで正義が守られるのか?というドラマの最初の問いかけなのだろう。そして、この事件の話はこれで終わりではないと思う。視聴者だって、悪人をただ野放しにしてやる弁護士のドラマだったら見ないだろう。その辺り、ここからの流れというか、持っていき方がすごく興味深いドラマではある。

今回の話は、「DNA鑑定」の真偽が問題になった事象。昨今、私たちはDNA鑑定というと、検査したところから書類が来て、その真偽を何も考えず信じているところがある。しかし、その検査するところに金を渡せは、こういう不正も簡単だということがあるわけである。実際に、嘘でなくても、無理やりに被疑者から取ったDNAが出る物体を証拠につけてそれを証拠とするということは行われている可能性はある。ここで、検事の馬場徹にそれをやらせるのは、社会への一つの訴えであり、意味がある。

そう、ある意味、長谷川がやっていることは、社会の法の穴みたいなことを、庶民に伝えようとしているのかもしれない。法をどう操るかによって、社会は変わってくるし、罪が罪として判定しないことも多々あるということだ。

その辺りを、今回、大学生になりすまして活躍した堀田真由がどう思っているのかはよくわからないが、ここに来たばかりの北村匠海は大きな反発を起こすわけだ。そりゃそうだ。殺人鬼が野放しにされる事象だ。確かに弁護士の仕事はゲーム的なところがある。検察の仕事がやわなら、それを明確にしてあげるのも仕事だろう。だが、殺人鬼を無罪にするのが「正義」なのか?それを北村が長谷川に真っ向から問いかけることで、このドラマのテーマ性が明確になる様はなかなか面白かった。

正直、今の世の中、政治の世界を見ても、政治資金のために不正をしても一部が捕まって全員捕まるわけではない。彼らは自分が正義だと思っている。そう、「正義」という言葉はそのくらい曖昧で、自分に有利に働かせようとして使う言葉だ。ここでの岩田だって、納得いかない仕事のさせかたをさせた社長など死んだ方がいいと思って、殺したのだ。ある意味、裁判での彼の静かな様は自分が正義だと確信している様にも見えた。そう、裁判というのは、正義VS正義の図式がほとんどであり、法のもとで無罪になれば、そっちが正義だという屁理屈は通るのだ。

ファーストテイクで、殺人鬼を無罪にしたこのドラマ、その作り手の「正義」は何なのか?どこにあるのか?とても興味深い!

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