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「海のはじまり(第9話)」二人の別れの物語を1時間で見せる濃厚さは、ある意味、このドラマの大事なテーマなのだろう

前回までで、ネット内では弥生がなぜに夏と別れないかという論議が結構されていた。それも、女子からの意見が多く、それはそうだなとも男の私は思っていたが、今回は、その話だったわけだ。つまり、生方さんは、確実に弥生側の思いというものがちゃんと描かれるようにここまで書いてきたということ。血のつながりということもあるし、ただ男を好きだということだけで、自分より好きな娘には勝てないという話。そして、弥生をそう動かしたのは、水季の手紙だったというのは、すごく正しく思える流れ。

この状況、昭和の時代のドラマだったら、こういう流れにはならなかったかもしれない。そう、水季の手紙にあるように、今は、自分がどうやったら幸せになれるのかと考えて生きていく時代なのだ。嫉妬や軋轢みたいなものがあるなら、そこからは去ったほうが良い。自分が一番大切な人と暮らせる幸せを求める時代ということだろう。とはいえ、世の中はマッチングアプリみたいなもので動かされていたりして、自分の意思ってそんなに強くない時代でもあるようには感じるが・・。

今回の最初に、夏と弥生の出会いの物語が描かれる。仕事はそれなりにできるが、もう一つ感情の操作がうまくない男子を、女たちは勝手な言葉で値踏みする。こういうのは、昔からよくあるシーンだが、ここで、弥生の性格みたいなものを明確にしてるのはなかなか鋭いシナリオだ。そして、そんな弥生だったら、今回の結末は仕方ないということがわかってくる。このドラマでの有村架純、すごくいいですよね。彼女だから、最後の経堂の駅で最終電車を待ちながら語り合うシーンは成功したように思う。そう、昨日を忘れ、違う未来に向かう涙というものを、やはり明確にしたかったシーンということだろう。

その前に、ショッピングモールで海に服を買ってあげるシーンがあったりするのもあり、ここに到達するまでの心の葛藤が1時間にしっかりおさまっているのは生方脚本の凄みですよね。

つまり、ここでドラマが大きく転換する。夏は海と二人で生きていくと覚悟する。覚悟することにすると言ったほうがいいだろう。とはいえ、まだ彼は若いし、まだ恋愛を諦めているわけではないだろう。色々考えさせられる現代の男女の話なんですよね。

でも、書き手は、絶対に海を不幸せにしてはならないという感じはあるのだと思う。そのためには、周囲に嫉妬みたいなものがこびりついてるのはよくない。次回は、転校の問題も出てくるようだが、これは、夏が近くに引っ越せばいいのではないか?と思ってしまうがどうなのだろうか?私も経験があるが、転校は子供にとって頗るパワーを使うものだ。今は、皆が幸せを求めていいという時代なら、親の理由だけで子供にストレスを与えることもあまりあってはならないことなのかもしれない。この辺り、どう描くのか?

とにかくも、ここからラストに向けて二人の幸せをどう追いかけるのか?という話になるのだろう。書き手の思うラストがどこにあるのか、とても興味深いことには変わりはない。

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